第４１３回「可愛くない子供だった」

　子供の性格の違いというのは、生まれつきで違いがあるのでしょうか。
　自分が子供だったとき、大人から見たら、結構、可愛くない子供だったなと思い出しました。
　私が５歳ぐらいの時、２つ下の３歳の妹がすごくかわいらしく見えて、親に向かって、かわいいのは３歳までだよって、５歳の私が言った覚えがあります。
　私はサンタクロースもいないって早い段階から知ってたし、周りの子が無邪気にサンタクロースにプレゼントを頼めるのを、すごい冷めた目で見てた部分がありました。やっぱり生まれつき持った性格の違いなのかなと思いました。
　私は可愛くない子だったと思いますが、お父さんはどう思いますか。

【お父さんの答え】

　やっぱりかわいい性格の子と、あんまり可愛くない性格の子の違いというのは、あるんじゃないかなと思います。
　僕は、中学くらいから家庭環境などもあって、たくさん小さい子たちの生育過程を見る機会に恵まれていました。その頃に、この子は性根が悪いなとたった１、２歳の幼い子供に感じたことがありました。利他心がないというか、動物的な要素が強いという感じで、優しい子はその頃から優しいので、その違いというのを目の当たりにしました。
　たぶん、その違いはずっと内側に残り続けて、表面的には見えないとしても大人になってもあんまり直せない部分だろうと思います。
　ただ、質問者を見ていると、性格が悪い人ではないと思います。おそらく、子供のときに僕が会ったとしても、性格が悪い子とは感じなかっただろうと思います。

　それよりも、もっと大きな要素として考えられるのは、周りの大人たち、端的に言うと母親と父親が子供たちとどんなふうに接していたかという違いです。それで子供は自分自身の感じ方がかなり違ってしまうのではないか、ということです。
　まあわかりやすく言えば、母親が意地悪な人だったとして、その子供に１人は意地悪な子、もう１人は優しい子がいたとしたら、意地悪な子供のほうが自分に近いから可愛く感じてしまうだろうし、優しい子に対しては大人びていて可愛げがない子だと思って遠ざけてしまうだろうということです。
　母親は優しい子のほうに向かって、あんたは正直じゃないから、ちょっと可愛くないよという態度で接してしまう可能性が非常に高いですよね。そうなると、自分は可愛くない子なんだと子供は思ってしまいます。
　あと、意地悪か、意地悪じゃないかというほかにも別な要素があります。

　僕はラジオが好きで、車での移動時間はいつもラジオを聞いています。ある定期番組で演歌歌手のキャスターが担当している番組があって、その時はとても残念な気がしてしまいます。その人が悪いのではなくて、演歌の世界っていうのは、すごい義理人情の世界なのだろうと思います。例えば、失恋したからお酒を飲んで疲れた心を慰める、みたいな世界観だよね。こう言っては申し訳ないけど、全部が全部ではないけど、とかく一般的な切り口だったり、ありきたりな慰め方、よくありがちなコメントに終始してしまう。
　何かの事件に対するコメントでも、それは大変ですねとかすぐ言うんだけど、全部浅くて、つまらない。新しい発見とか新しい切り口がないので、僕にとってはつまらない番組になってしまう。

　それを子供にあてはめると、世間的には何のマイナス評価もなくて、周りの評価も高い親と子供がいたとして、それは親子の相性がいいと思います。ところが、子供のほうがそれでは飽きたらず、何かありきたりじゃない新発見とか、新規な切り口を知りたい、そうじゃないとつまらないし、生きている理由をみつけられないくらいに思ってしまう子供だったとすると、親はその子の気持ちを汲むことができません。
　そういう新規な切り口を求めている子供が、言ってみれば演歌の大好きな親と子に挟まれて育つことになると、この子供は何だか知らないけど外れてて可愛くない、と思われてしまいますよね。

　そのラジオの定期番組で、別のキャスターが担当している時は、とても面白く感じることが多いです。何を聞いても面白いし、いつ聞いても、話しの端っこだけ聞いても面白い。だけど、演歌的な義理人情のコメントを聞いているともう想定内の問答と、想定内の話しかないから、波乱も破綻もないけど、面白さもないと感じてしまう。

　念のため言っておきますが、僕は演歌も好きで、聞くのも歌うのも好きだけど、それが日常的な切り口に持ち込まれてしまうのはどうかということだけです。

　話しが戻りますが、質問者の親御さんは、どちらかというと道徳的な要素を最も大事にしたい人で、新しい世界を見たい、という気持ちは強くないような気がします。
　それに対して質問者は新しい世界を見てみたいという気持ちが強くて、他の姉妹が母親に近い感性を持っていたとしたら、家庭という小さい世界の中では、質問者だけが異分子になってしまい、自分が悪いのかなと思ってしまいがちな環境だったと言えないかな。
　質問者の性格が悪いというより、そういう要素が大きかったと僕は思います。おそらく質問者は生まれつきの性格も良かったと思いますよ。

（2024年1月31日　掲載）