イベントや作業のリーダーなど、やることは同じでも私でない人がやると、みんなを苦しくさせないのに、私がやるとみんなを苦しくさせてしまうのはどうしてなのでしょうか?
私は、リーダーをすると、他の人がリーダーをするときと比べて楽しさが半減しているように思います。どこか、遊び心がなくなって、暗くなってしまうような気がしています。
これはどうしてなのでしょうか?
この質問者が感じたことは、僕もみんなくらいの年のときに、ものすごく感じたことと同じことですね。
僕が20代に仕事をするようになってから、同じ世代なのにものすごい人格者がいるんですよ。ゆったり構えて、俺に任しとけみたいにして、慕われてて、すごい人がいるんですよね。あんなふうになりたいな、だけど無理だな。人格者じゃない、自分は尖っていてギスギスしていて。なんと言ったらいいんだろうね。差別的で、強いんだけど、なんかこう、やたら刃物をふりまわすような危険な強さで、周りの人を傷つけかねない強さで、ゆったりどっしりしている人とはぜんぜん違う。自分は人格者じゃないなと思って、人格者になりたいなと思っていました。
例えばこういう男性が近くにいると、若いきれいな女性は、「あら素敵」ってそっちのほうになびいていきます。お母さんも、「もし20代でお父さんに会ってたら、絶対に付き合わない」って断言してますからね。それは何を意味するか。
20代のときだったらもっとハンサムで人格者で、温和な男性のほうに行くんですよ。
僕みたいな尖った、ちょっと変なおたく崩れのような、ユニークと言えばユニークだけど、なんかすごく安定感のない人は、とてもじゃないけどこんな人と一緒になっても苦労するばかりで幸せになれない、と思ってしまう。
で、そっち行っちゃうんです、みんなね。
そのことに対してね、すごく虚しく、なんで自分はこんな性格に生まれついてしまったのかなと嘆いていましたよ、夜な夜な。嘆きながらやけ酒をね、同じようなたちの人間とね、慰め合いながらやけ酒を夜な夜な飲んでいましたよ。
それでそういう人格者に会うと、「小野瀬君そんなこと無いよ」って慰められて、「お前に慰められたくねえよ」って……。畜生こいつ人を慰めるくらいの余裕があるなんて、って。どうしたらいいんだろうか。そういう思いでね。
ところがですよ、それから40年も経ったいま振り返ってみるとどうか、ということですね。
本当に、振り返ってその後を考えるとどうか、なんですよ。
別な問題で、例えば大学の何かサークルがあったとする。
部長をやってる人格者タイプの人と、なんか一人外れてるおたくタイプの人と、どっちと結婚したら幸せになれると思いますかっていう問題がありますよね。(別に、ないかも)
どっから考えても部長タイプの人格者と結婚したほうが幸せになる、って答えが見えてるような設問なんですね。
ところが、実際に結婚生活を始めてみるとどうか、って言うね。まあ大学卒業して会社で働いて、結婚生活をする。するとこの部長タイプの人は、外面がいいんですね。みんなにまんべんなく笑顔で付き合うわけですから、同僚に誘われると色んな飲み会とか顔を出して、なかなか家に帰ってこない。帰ってきたと思ったら同僚を連れてきていて、三次会だ、つまみ作ってくれと言って午前2時、3時まで騒いでいる。朝になればまた仕事に行って、翌日もなかなか帰ってこない。
もっと年がいって子供が生まれても、付き合いでゴルフがあるからとか、中学校のときの同窓会があるからとか、小学校野球チームの同窓会があるからとか言って、なかなか家にいない。
周りの人からの、夫の評判は、最高に良いですよ。
だけど家にいない。子供の運動会の日、いや仕事の付き合いがあるからって家にいない。
おたくはどうか。「俺、人間嫌いだから家にいてお前の顔見ながら酒飲んでるのが一番いい」って言って、仕事を終ると、絶対ピューッと帰ってくる。子供をお風呂に入れてくれる。
それ極端……。
いや極端に言ってるんです、分かり易く。家でささやかな趣味をやって、料理をやって、料理が好きだから。掃除、俺好きだから、風呂、俺いま掃除してやる。
卒業生のそらちゃんの旦那さん、そうですからね。そらちゃんの旦那さん、そらちゃんより旦那が料理つくるほうが多いみたいですよ。
自分もやん。
(笑)
そういうことになるんですよ。あれれれれっていうね。人格者はみんなにバランス取ると身内が割りを食うんです、ということはよくあるんですよ、本当に。
そういうことがあるんでね。
それと、この問題ちょっと似てるんですよ。
似てるんですよね。
僕はその自分の、まるでゼネラリストでない、よく言えば個性的だけど、まあ普通に言えばすごく偏った性格で、それで幅がなくてギスギスしていて人を責めるような言い方して、人を追い立て自分を追い立て、と必死になっていつも走り続けてる、こういう性格ってどうなのかと思っちゃうんですけど、今になって、はっきり言って、こういう性格でよかったなと思っていますよ。そんなたくさんの人に好かれなくて結構、っていう感じね。自分のことを好きな人に好かれたらそれでもう結構ですと。20代だったら絶対好きにならないと言っているお母さんが、いま、僕のことを大好きと言ってくれていますよね。若いときではなく、自分の人生のピークで、いまちょっとだけ人格者になったらいいんですよ。長い人生です、後半にいくほど人に好かれたほうがいい。
人格者になるのやめましょう。幅が狭くてギスギスしていて、仕事大好きで、きつい性格になりましょう。60代になったら少しマイルドになるから大丈夫です、ということですよ。
だからね、20歳そこそこで、なんか遊び心があって楽しげにリーダーができるなんてそれはね、40年早いですよ。40年後にそういうリーダーができたらいい。それくらいに思って、無理をして自分の良さを見失わずに、自分の良さを尖らせていったほうがいいと思うという、そういうことですね。
いまのままで、超オッケーですよ、ということです。
(2018年4月6日掲載)
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