この夏、たくさんのイベントにダンスのメンバーとして出させてもらう中で、お父さんからもう移動の車の中から気持ちを作るようにすると聞いています。
私も気持ちを作ろうと思って移動していますが、その場に着くと周りの空気が怖いと感じてしまいます。みんな本番に向けてテキパキと動いて、本番に向けて気持ちを作っているのはすごくわかるけれど、いつもと違うみんなが怖く感じてしまいます。
本番で観客の前で踊っているときはすごく楽しいと感じるんですけど、舞台裏とか、準備している朝のうちは、いつもと違う感じがどうしても怖いと感じてしまいます。
私も怖さを感じないで、本番に向けての気持ちを作るにはどうしたらいいでしょうか。
【お父さんの答え】
質問者はなのはなファミリーに来るまで摂食障害で苦しんできたと思いますが、質問者の場合には何に苦しんできたのかっていうと、端的に言うと、エリート意識を持って、厳しく子供に自分の価値観を植え付けようとする母親の姿勢に苦しんできたと思います。
競走馬の尻をムチで叩くように、厳しく目標に向かって走らされてきた。それで一生懸命に勉強したり、習い事をしたりしたけど、もうその苦しさに耐えられなくなって、ダウンしてここに来たわけです。
ここに来たら、みんな優しいし、おどけたりふざけたりしてもみんなが受け入れてくれて、ようやく落ち着いた。ところが、そのみんながステージに出る前になると、真剣に自分の気持ちを作り、ステージに立つモードに入ります。ところがその真剣さが、ちょうど自分の母親が厳しく自分を責め立てた厳しさを思い起こさせるところがあるので、怖くなってしまうのだと思います。質問者の中では、真面目にやるとか、真剣にやるということが、過去の自分の苦しさに直結してしまうようで、大きく抵抗を感じるのだと思います。だから、真剣にやるということが難しくなっていて、いつもおどけて、むしろ周りが真剣な空気になりそうになるとその空気を壊していますよね。
移動の車の中で大きな声ではしゃいだり、ふざけたりして、度々、注意をされてきたと思いますが、その理由も無意識かもしれませんが、真剣な空気は自分を苦しくさせるという思い込みから、自分が真剣になるのも嫌だし、そういう空気が周りにあるのも巻き込まれそうで怖さを感じます。
人から強制されたノルマとか、強制された頑張りというのは、当然、人を苦しくさせます。でも、真剣にやることは全部、人を苦しくさせるかというとそうではないです。
真剣に、真面目に、きちっとやったほうがステージでは映えるし、見応えのあるものになります。そして出演する側も、きちっと高いパフォーマンスが実現できたほうが、やりがいもあるし楽しいです。そのための真剣さで、そこは避けて通れないです。
ところが質問者はたぶん自覚があると思いますが、何でも真剣に取り組むというのは怖いと思っていて、何をやるにしても真剣にしていないと思います。とにかく、苦しかったときの怖さがあるので、二度と同じ苦しさを味わいたくない、イコール真剣にやらない、という図式が自分の中でできてしまっているのではないでしょうか。
やっぱり、練習も真剣でなければ上達しないし、ステージの上でも笑顔で楽にやっているように見せるけれども、用意周到に準備をしていないといいものにはならないです。ふざけながらやって、楽しいダンスパフォーマンスや演奏ができるはずがないです。
いま言ってることは当たり前のことのようだけど、今の中学生、高校生とかは、真面目じゃない人が圧倒的に多いと思います。大学生になっても不真面目な人が多い。それどころか、真面目にやってる学生が、茶化されたり、冷やかされたりするほどです。
このごろは、間違った厳しさと、あるべき真剣さの境界線が見えにくくなっていて、とにかく真面目にやるのは格好わるいというふうに、勘違いする空気があります。
そこはちゃんと見境をつけて、真面目に生きるべきです。質問者に必要なのは、真面目さだと思います。真面目になったら自分を追い立ててきた厳しさに近づいていくようで怖いと思ってしまうのでしょうが、それとこれとは違う、とはっきり自覚したほうがいい。
もう少し言うと、質問者が恐れている厳しさっていうのは、利己心から生じる厳しさなんです。自分の子供さえ人の上に立つポジションを手に入れられたら幸せになれるから、絶対に他の子に負けるようなことにさせてはならない、という発想からの厳しさです。
それは怖いですよ。
ところが、ステージで良いパフォーマンスを見せて、会場のお客様を楽しませようという厳しさは、利他的なものです。人を喜ばせるために厳しく練習する。感動してもらうために真面目に取り組む。そういう厳しさは、どんどん突き詰めていっても、決して自分を苦しさに追い込むことはありません。人との競争ではないからです。
そういう利己的な気持ちを持っていると、何をやるにも競争になってしまうか、あるいはおふざけになってしまうかなので、利己心は修正しないといけませんね。
普段から真面目なところは真面目にやるとか、リーダー的な真面目さで気持ちを作って、普段の作業から真面目に向かうっていうことをやってたら、みんなの真面目さも自然に入ってくるし、それにそういう真面目さと、競争心から出た自分が利益を得るための頑張りとの違いというのが自然にわかってくるはずです。
利他的な意味で、ほかの人を喜ばせるための真面目さ、真剣さが身についたら、何をするのも楽しくできる、ということが習得できるはずです。そうなれば、当然、真面目な空気が怖い、という気持ちもなくなります。
(2023年8月23日 掲載)
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