第50回「自分の出し方」


〈質問者〉

質問

 チームで何かをする、というときは、自分をどのくらい出していれば良いのですか?
 私は、自分が思ったことなどを言うのは出過ぎているのではないかと思ってしまいます。だから、他の人が言ったことに反応することしかできなくなってしまいます。
 そんなだから、どんどんチームから外れた存在になってしまいます。自分自身、悲しくなってしまいます。
 何か言うときも、(出過ぎているのでは?)という不安があるから、自信も無くて素っ気ない態度で話してしまうことばかりです。
 どうしたら、自分を上手く出せるようになりますか? 教えて頂けると嬉しいです。

 

〈お父さん〉

答え

 そうですね、これでね、どんどん自分を出して構わないんですよって言うと、すっごく出過ぎちゃう人がいるんですよね。
 だから出過ぎるタイプの人と、中くらいの人と、控えめな人がいる。出過ぎる人はちょっと気を付けないといけない。引っ込んでていても我が強い人っていうのは、やっぱり気を付けないといけない。控えめに言いながら自分の我を通すということがあるので。
 
 およそ自分が我が強いか、出過ぎるのか、それとも引っ込む方なのか、自分で分かっていると思うんですよ。
 基本的には、チームで何か動くときには、思ったことは言う、ということです。自分の意見を言わないって言うのもおかしなものです。自分の意見を言う、これが基本だと思います。

 ただね、ちょっとね、こういう風に考えてもらいたいんですよ。
 いいですか。自分の素で、そのままで思ったことを恐る恐る出したりすると、これは危なくってしょうがないですよ。
 なんでか。もしも、素のままの自分を出して、「駄目」って言われたら、ガチョーンって気持ちが落ちてしまいます。無視されてもガチョーンと落ちたりする。あぁ、駄目だった……、と。
 
 特に外国ではそうなんですけど、どのぐらい、きちんと自分を出せるかどうかというのが、その人の人格と見なされます。エリートは、ちゃんと自分のことを言えなくちゃいけない。
 しかも、もったいぶって、さもさもほんとらしく言える人ほど立派な人。それがエリートなんですね。だから、ポーズを付けて、さもさも言うわけです、格好付けて偉そうに。
 ポーズを付けて、しっかりと話す、それに対して何か言われても、ビクッとして、アチャーと反応するのじゃなくて、立派な態度で受け流す。そういうことが求められるんですよね。
 
 そうやって自分でポーズを取ると、割と楽なんです。役作りしてるわけだから。自分がチームの一員として、何かの役としてやるわけですよ。
 だから僕なんかもね、なんていうのかな。自分っていう人間を、いくつかの人格に使い分けてますよね。
 今は、なのはなファミリーのお父さんの小野瀬健人をやってます。あの、みんなもやれば良いんですよ。なのはなファミリーの子供を演じれば良いんです。

 有名な経済評論家を取材したときビックリしましたよ。喫茶店みたいなところで1対1で取材をしていました。有名な人ですから、テレビに出たり講演をしたりしている人で、だいたいは大勢のお客さんの前で話していることが多いのです。その人が、ちょっと長い話になった。すると、
「こうこうだから、こうなんですよね。みなさん」
 っていうんですよね。その語尾のみなさんというのに「は?」って思って、思わず顔を見てしまいました。その人もアッと思ったらしいけどね。
 
 経済評論家として、常日頃は大勢の前で話しているから「みなさん」って言い慣れてる。たまたま同じフレーズで言ったら、「みなさん」ってセットで出てきた。
 あ、この人は個人として、僕の知人友人として会ってるわけじゃないので出てきちゃったんだなあと思う。この人は素の自分ではなく、経済評論家として話しているわけです。

 素の自分じゃなくて、かっこつけろって言ってるんじゃないですよ。
 子供っぽいでしょ。子供ってすごい素直で面白いって大人が言うのは、元気なときは元気な顔して、つまらなくなるとつまらない顔したり、すねるときはすねる顔したり。それが子供だよね。大人っていうのは腹減ってるからってガツガツしてなくて、怒ってても愛想笑いができる。場合によってはね。
 
 あるいは悲しくても悲しいふりを人に見せない。つらくても、つらいつらいって言わない。そういうことできるんだよね。相手によって、自分のほんとの今の状況を隠して、それは何か相手にとってこういう自分を演じようと、やってる。
 自分の感情を包み隠さず出すことだけが、誠実な在り方じゃないわけです。
 赤ん坊じゃないんだから。自分の感情をバーンと出すのでもない。自分の意見も、自分の大事な宝物を友達に見せるような積もりで出すというものでもない。
 
 まあ、これどうでしょうかね、大したことはないけれども、っていう余裕が必要ですよね。
「どっちでも良いですよ。例えばこういう考え方どうですか。こんなアイデアどうですか」
 ガチャンって否定されても、余裕をもって、「えー、こんな良いアイデアなのに? なんで分かってくんないの」って言う場合もあるでしょうし、「やっぱり? なんか駄目だと思ってたー」って言ってもいいし。
 ガンッて言われて、(自分の人格を否定された!)と落ち込むのは、素直っていうか、子供っぽい。あくまでグループの一員としての意見を出せばいいのであって、いちいち自分の人格と結びつけないことです。
 
 だから、僕だって厳密に言うと、ここはみんなの前にいる自分を演じている。みんなの前のなのはなのお父さんだし、1対1の時はその1対1のなのはなのお父さんだし、車に乗ってれば3人対僕のお父さんだし、その時々で話も中身も違ってくるかもしれない。当然でしょ。それは、3人に向けた、車を運転してるときのお父さんを演じているのだし、目の前に子ども達がいっぱいいるときは、いっぱいいるときのお父さんを演じている。
 
 どれがほんとの自分なのって、それは分かりませんけどね。自分はケースバイケースでプレゼンターとしての、態度っていうのがあるんじゃないでしょうか、っていうことですよ。

 あんまりね、やり過ぎてもおかしいですけど。僕の取材記者やってた頃の昔の仲間でも、すっごくうまいのがいるんだよね。編集者とライターと、大きな取材だと記者が5.6人で動く。時々、3日おきとか4日おきに、取材の経過を報告し合って、どんな風に進めるか編集会議をするわけですよね。
 それぞれ、分かれて取材してる。それぞれ自分はこんな取材をしたって持ち寄る。そんときの記者がね、上手いなって言うのが。
「(パンと手を叩いて)面白い話あるんです。これが面白いんですよ!」
 なになに、なんだ? 中身はたいしたことないんだけど、最初、「ちょっとね、これね、あのね」ってちっちゃい声で言うと、価値が2倍くらいね増えて聞こえるんだよね。
 
 僕は下手だから、「いや、たいしたことないんですけどね」と前降りをしてつまんなそうに言ったら、「小野瀬君それ面白いじゃーん」。あ、そうですか? ……。
 それが、「おっもしろい話聞いたんですよー!」って言うのを聞くと、うまいなあと思って。真似すんの恥ずかしくてね。
 そういういろんなやり方あると思うんですよ。
「私こう思うんですけど……」っておずおず言うんじゃなくてね。試してみたら? いろいろ。恥ずかしいから、あんまり大袈裟に言えないけど、少なくとも考えて思いついたこと言おう、ってチームでなったときは、プレゼンターとしての自分、プレゼンターとしてどうかっていう発言をする。

 で、何もアイデアが浮かばないときがある。何も。どう考えて良いのか分からん。で、そういうときはどうしたらいいか。
 するとね、最初の「アイデアをどこまで言ったらいいんでしょうか」っていう人は、自分の考えがないときは、「外れた方がいいんじゃないでしょうか」と。それはあまりにもストレートすぎる。
 
 何もないときには、ほかの人が言った意見に「面白いですね-!」っていう役をやってみてはどうでしょうか。いちいち反応して、「うーん、いいねえ」とか、「今ひとつかなあ」とか、反応する係になってみたらどうでしょうかね。それも立派な、グループの一員だと思う。ムードメーカーとして。あまり他人の意見を評価しちゃいけないけどね。盛り立てていく。そういうのでも、立派な役割なのかなと思いますよ。

 ちょっとそういうことをふまえて、グループの中でやってみてください。
 間違っても良いです。ここはみんなでトライアンドエラーをする場所ということで、間違ってもお互いに許す。ミスリードしても許す。出過ぎても引っ込みすぎても許す。出過ぎたときは、ごめんなさいねと言って、お互いにいい関係のとりかたを見つけていきましょう。









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第4回「本を読んでも内容を忘れてしまうことについて」
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第7回「摂食障害の人が片付けが苦手だったり、約束の時間に遅れてしまうのは何故ですか?」
第8回「自分のことを『僕』『おいら』と言うのをやめられなかったのは、なぜか」
第9回「おいしいカレーと、おいしくないカレーの違い」
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