お父さんはアスペルガーの子がなのはなファミリーに来たとき、すぐに、その子のお母さんでさえわからないのに、その子が考えていることをわかって気持ちを通じ合わせてしまいます。時間をかけて、ずっと一緒にいたりすれば、自分も相手の行動とか考えがわかるかもしれないですけど、お父さんはすぐに相手の本質がわかるというのはすごいなと思います。どうしたら、そんなふうにすぐに相手の本質を見ることができるのですか。
【お父さんの答え】
どうして、アスペルガーの子が考えていることがわかるのかっていうと、その子の身になってみるということです。簡単に言うとね、相手に乗り移ってしまうような感じで、外から見て考えるのではなくて、内側に入ってその人になりきってしまう感じ。
言ってみれば、役者が演じるときに登場人物になりきるように、目の前の人になりきってみると。ああこういうことかってその子の考えていることがわかる。
その子の目の動き、手の動き、身体の仕草で、止まったり動いたりするのを見ていると、その子が何を考えているのか、だいたい分かるんじゃないのかなと思います。
その目の色の変化とか、目の動きで、周りのことを理解してるか理解してないのかもわかる。自分がその人だったらどうなのか、と思ったらすぐわかる。
それがわからないというのは、その人から返ってくる反応を待ちすぎています。正面から向かいあって、自分に答えて欲しい、と思いすぎているからだと思います。
その人が何も言葉を発していないとしても、考えていることはわかるはずだ、と内側に入ってしまって相手になりきっていると、相手のことがだいたい分かります。
もう少し踏み込んでいうと、発達障害を持っているような子とか、傷ついた人というのは、いつも不安で、いつもガードをしているし、同時に助けを求めています。
不安というのは、自分の周りの世界をよく理解できないことからくる不安です。そのために、自尊心を攻撃されないようガードして、目の前のことには自分は何の興味もなく、無関係ですというような顔をして無表情になるか、わざと周囲を乱すようなこともします。そして、それとなく自分の不安をわかってくれる人を求めています。
これは、障害を持った人だけでなく、普通の人でも慣れない場所に行ったり、初対面の人に会ったら、無意識にしていることです。
そこで、僕はその子の良い所見つけをして、瞬間的といってもいいくらいに、その子を好きになり、好きだよという空気を出します。安心させるためです。初めて見た子のどこを好きになるかというと、目の前の見知らぬ人に怯えているのにそれを隠そうとして耐えている姿を見ると、庇ってやりたいという気持ちになり、それが好きという気持ちに通じるのです。
人の心は映し鏡なので、こちらが相手に対して好きという感情を持つと、相手の心にもこちらに対して好きという感情が生まれます。
初対面でも、会って10分もしないうちに、そういう気持ちが通じることもよくあります。そうなると、もう昔から友人だったような親しさが生まれ、それをベースに話すことができます。
なのはなファミリーに来る摂食障害の女性でも、それは同様で、ほとんどの場合にその子が何年も耐えてきた痛みを感じることができる、自分ではそう信じています。その子が頑張って耐えてきた時間の長さを思ったら、思わずそれが言葉になって出てしまいます。そしてその頑張りに敬意を感じて、好きだよ、と言うこともあります。すると、その子も僕のことを好きになってくれます。
もちろんそれはお互いに人として好きな気持ちであって、男女の恋愛とは全く別のものですが、その好きは子供が好きというのと同じものです。誤解のないように。
なのはなにいる子たちとは、そんなふうにお互いに好意を持っている関係だと思います。そして、わかりあえていると思います。中にはそれがとても難しい子もいるので、当然のことではありますが、とても奥が深いです。
(2023年9月26日 掲載)
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