第51回「身体の調子と気持ち」


〈質問者〉

質問

 フルメニューでの走り始めは、いつも足が冷え固まっていて動かない、と感じます。
私は昔、肝臓と腎臓が悪かった時に、足が固まって動かなくなったことがありました。最近同じような感覚がするのは、肝臓や腎臓が悪くなっているからですか? それともただの冷え性ですか?
 また、気力が出なかったり、疲れやすさを感じたり、立ちくらみあるのですが、これは甘えですか? 教えていただけると嬉しいです。

 

〈お父さん〉

答え

 肝臓や腎臓が、今、急に悪くなってるというふうには、思いません。
 ただね、悪くなってると言うよりも、調子が、悪い。うまく機能してない、ということはあるかもしれませんね。気力が出なかったり、疲れやすさを感じたり、とかもそうでしょうね。

 肝臓や腎臓が悪いから気力が出ないのか疲れやすいのか、それとも気力が落ちてるから肝臓、腎臓がうまく働いてないのか。どっちか分かりませんよね。
 どちらかというと、気持ちから、肝臓腎臓を落としていると思いますね。
 
 肝臓は、ストレスを受け止める臓器と言われてますね。肝臓はストレスに弱い。腎臓もそうですね。極度の自己否定的なストレスを感じると、内臓が極端に活力を失います。
 例えば、CTなどの内臓を見る機械で、胃袋を見てると、その人が怒ったりすると、胃袋はものすごく大きく歪みますよね。怒ってるだけで、思うだけで、ねじくれるように歪みます。
 
 そういうふうに、肝臓はねじくれたりしませんけれども、気持ちと内臓は一体となっていて、自分の気持ちを落としすぎると内臓が酷くいたむ。疲れやすくなるし気力も出なくなる。そういう、悪い循環に入っているかもしれませんね。
 ものすごいストレスを自分が感じる。あるいは生み出す。肝臓腎臓が悪くなる。悪くなると気力が出なくなる、疲れやすくなる。ますます内臓が悪くなる。ますます疲れやすくなる……どんどん身体が悪くなるという悪循環に陥るとひどくなります。

 僕の知ってる人でね、女の人でね、健康な身体の人がいたんですけどね。子供が3人いたんですね。それで、1番上の子が、小学校行き始めてから、勉強ができないんですよね。どうも学校の中で落ち着きがないって言われた。それで、色々診てもらったら、自閉症だって言われたんですね。
 
 それで、2番目と3番目は小さかったんですけど、やがて2番目と3番目もちょっと似たところがあるので調べてもらったら、3人とも自閉症ということが分かって、そのお母さんはものすごく悲しんでね、嘆いて、それで膵臓を悪くしてね。糖尿病になって、毎日インシュリンを打たないといけない身体になって、もう元に戻らない状況になってしまった。
 
 精神的に落ち込むだけで、そこまで身体を悪くすることができるんですよ。その人は、ハイソでお金持ちで、よもや自分の子供が障害者だなんて思いたくもないと思ったので自分で自分の身体を壊してしまった。――自閉症イコール障害者じゃないと、僕は思ってますよ。でもその人からすると、自分の子供が障害者だなんてあってはならないことだったんですね。知的な障害あるかもしれない。強度の悲しさと強度の自己否定に襲われて……いや、襲われてじゃない。その人にとっては悲しいことに、無理矢理しちゃったんですね。
 それ言ったら、自閉症の親はみんな悲しまなきゃいけないってなってしまいます。そんなことないですから。思い方、考え方だけなんです。
 
 それこそなのはなのお母さんだって、インシュリン打つようになろうと思えばなれた。自分の子供が、産んだばかりで、脳性麻痺で一生歩けませんって言われたんだから。お母さんはならないです。受け止め方なんですよね。
 
 フルメニューの走り始めに足が冷え固まっているということですが、朝ですから、まだ身体が温まっていないということはあるでしょう。気持ちもちょっと冷えてる状態かな。
 もう少し気持ちが前向きになったら違ってくるし、そして陽気ももう少ししたら暖かくなってきます。そうなったら、また少し違うと思います。気持ちを少し上向きにしたらいいのかな、そんな風に思いますね。

 誰にとっても、前向きになる要素と後ろ向きになる要素って、同じくらいあるんじゃないかなという気がするんですね。
 ただしですよ、運の良い日と悪い日があります。
 今日1日、どっからどう見ても悪いことばかりで、プラスの要素はない。そういう日はあります。スパンを1週間くらい見てくださいといいたいです。7日間を平均して見たら、7日間の中で良いことと悪いこと拾っていったら、同じくらいあります。
 
 マイナスとプラスと、どっちに焦点を当てて、自分の気持ちを作っていくか、ということなんですよね。マイナスのことは見ない、忘れて良いです。プラスのことをたくさん考えて、プラスのほうで自分を褒める。プラスのことを考えていると、マイナスを考える余地がなくなります。
 逆にだめなのは、「プラスはいらない。マイナスのほうを見て、自分は辛いからマイナスの方が自分にとっては心地良い」みたいな気持ちですよね。

 今、急に思い出したけどね。そういえば障害者の、重度の脳性麻痺の子が産まれたお母さんがいた。僕は、そういうお母さんに何百人も取材してるんですけどね、正反対の人を思い出しました。
 その人は地方の国立大学を出てる人で、まあ、いいところの学校の先生の娘さんかな。女の子姉妹2人姉妹の1人でした。やっぱり自分は、アニメーションの声優になりたいっていうことでね。自分がつらかったときに勇気づけてくれたのが、なんとかっていうアニメーションで、そういうつらい人を勇気づけるような仕事をしたいと若いときに思った。
 声優になる専門学校が、東京か横浜の方にあって、そこに入って、そこで出会った男性と結婚した。子供ができて、子供が、重度の麻痺の残る障害があった。
 
 でね、まあ例によって、僕は聞いたんです。
「そのお子さんに障害があると分かったとき」生まれてすぐなんですよ。「どんなふうに考えましたか?」
 その人は、
「今までの人生のなかで、1番自分にしっくりくる状況だと思いました」って。
 なんか、ほっとした。自分は今まで、辛い人生を歩いてきた。みんなに、
「あなたの家は良い家柄で、お父さんお母さんもすばらしい人で、あなたも勉強ができてすばらしい。大学も入って。何に不満があるの? 何悲しむことがあるの? すばらしい環境に恵まれて、すばらしい資質に恵まれて、あなた、不満、人生に何もないでしょ」
 って言われ続けてきたのに、なぜか満たされなくて、ずっと悲しかった。でも、ずっと悲しむ理由が見つからなかった。重い障害の子供を抱いたとき。私はこの日をずっと前から予感してた。今、この子を抱いてて、安心すると感じました、というのです。
 
 そう言ったお母さんがいましたね。自分の悲しい気持ちにぴったりの子供です。だから私は、喜んでこの子を育てますとーー。
 悲しい理由ができちゃった。不幸な理由が目の前にどーんと出てきて、ああよかったって思ったそうです。その後、そのお母さんはね、その子供のね、麻痺をなくすために、ドーマン法を受けることにして、アメリカまで行って、それでボランティアを組織して、毎日毎日、寝る間を惜しんで訓練してましたよ。
 それで、たくさんのボランティアさんの手を借りて、頭を下げて、大変ねっていわれながら、私が手伝ってあげるって言ってもらって、その大変さを、目一杯味わって、自分に鞭打つようにというか、自分を罰するように、子供の訓練に明け暮れてました。

 お母さんも、菜都の訓練、小さいころから必死になってやってましたけど、似て非なるものですね。僕は、そういう、人生の感じ方を、よしとしませんね。
 あの、間違ってんじゃないかなと思いますね。一見、子供の重い障害麻痺を前向きに受け入れているようだけど、究極の所そうじゃない、と僕は思いますよ。もっともっと違う捉え方、違う生き方、しなければいけないと思いますね。

 自分を、悲劇の……自分は悲劇の主人公、悲劇のヒロインになりたいと思っていたのに悲劇じゃなくてね、周りに何も悲劇がない。子供が重度の麻痺の子供ができた途端に、誰からどう見ても悲劇の主人公になれた。ボランティアという観客を集めて、観客の中で悲劇の主人公を堂々と演じることができる。しかも、前向きに明るく生きていく、たくましい、すばらしい、心打たれるお母さんになれる……。誤解があったら困りますが、そういう感じ方が現実にあるのではないかと思うのです。

 そういう、悲劇の主人公になりたい。本物のヒロインになれないなら、悲劇でも良いからヒロインになりたいと思ってしまう。何でも良いから注目されたい、立派と言われたい、中心にいたい、そういう気持ちが誰にでも働くのです。言ってみたら、自分の才能とか運とか財力だとか、そういうものに溺れるのもダメだと思うけど、自分の悲劇に溺れるのもダメだと思います。

 プラスとマイナスの、まったく正反対に見えるけど、同じような精神状態。なんでもいいから中心になりたい。そんな注目のされ方をするんじゃなくて、もっと真摯に真面目に、等身大の自分を生きていくでいいんじゃないかな。
 世の中の人、沢山の人に解ってもらうとか、解ってもらわないじゃなくて、ほんとに自分の信じる人だけに、等身大の自分をちゃんと評価してもらったらそれでいい、そういうふうに思うべきなんでしょうね。

 そこはね、才能があって自惚れるのは間違いだって誰にでも分かる。自分は才能が無くて、ブスで性格悪くて、自分なんか死んでしまったほうがいいんだっていうのも、才能があって自惚れるのと同じくらいの罪と思ったほうが良いですよ。
 自分は凡人と思っていたほうが良い。変な落ち込み方も嫌らしいですよ。自惚れない。落とさない。つくづく思いますね。
 だったらむしろ、自分は天才だくらい思ってるほうがいい。可愛いですよ。自分は美人で才能があって、よかったと、思ってたらいい。そう思います。

 何か今日、怒ってます? 僕。そんなつもりないんだけど……怒ってないんですけどね。今日はあまり理解してくれないお客さんが来て、お母さんからも、なんでそんな一生懸命喋ってるのって言われたけど。対立してたわけじゃないけど、理解されてないと思ったら、つい熱を入れすぎました。

 また話が脱線しましたね。知らず知らず、落ち込んで、自分を落としていると、内蔵も脚も調子が悪くなりますよ。調子良くしようと思ったら、自分を励まして、自分を褒めることです。









第1回~第100回(クリックすると一覧を表示します) 第1回「縦軸と横軸について」
第2回「神様は何をしようとしているのか」
第3回「本で涙を流すことについて」
第4回「本を読んでも内容を忘れてしまうことについて」
第5回「時間をうまく使えるようになるには」
第6回「太宰治について」
第7回「摂食障害の人が片付けが苦手だったり、約束の時間に遅れてしまうのは何故ですか?」
第8回「自分のことを『僕』『おいら』と言うのをやめられなかったのは、なぜか」
第9回「おいしいカレーと、おいしくないカレーの違い」
第10回「楽しんで走る」
第11回「死ぬことへの考え」
第12回「『聞く』と『教えてもらう』」
第13回「頑張るフルマラソン」
第14回「他人の成功」
第15回「『今』という時間」
第16回「不安の先取り」
第17回「良い協力関係」
第18回「急に悲しくなる」
第19回「夢の持ち方について」
第20回「心の許容範囲」
第21回「疲れるのが怖い」
第22回「スポーツの勝ち負け」
第23回「人といること」
第24回「“好き”という気持ち」
第25回「何でも知っている」
第26回「舞台鑑賞が怖かったこと」
第27回「生まれ変わるとしたら」
第28回「一番感動した景色、美しい国はどこですか?」
第29回「好きな時代はいつですか」
第30回「体型について」
第31回「行きたいところ」
第32回「悲しくなったら、動く」
第33回「意志を持てないこと」
第34回「心を動かす」
第35回「恋愛できますか」
第36回「日記の重要性」
第37回「心配されたい」
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第40回「涙腺が弱い」
第41回「子供が苦手」
第42回「正しいことを通そうとして」
第43回「流されて生きる」
第44回「才能について」
第45回「身長は伸びますか」
第46回「否定感が強い」
第47回「ぐっすり眠れない」
第48回「見え方、感じ方」
第49回「強さについて」
第50回「自分の出し方」
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第52回「何のために変わるか」
第53回「痛みを知る」/a>
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第59回「イライラしない」
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