第56回「相手を許す」


〈質問者〉

質問

相手のことを許せるようになるために、まず、自分を許すことが必要だとしたら、どのようなことをどの程度許したら良いですか?
基本的に、自分の事が許せないのは、甘えや、こだわりだと分かっていても、なくすとしないからであって、実際に許してはいけないことだから、許さなくて良いと思うのですが、だからといって相手を許さないのは、間違いだと思います。
こういう意地悪な気持ちを持つ自分も、絶対に許さないでいれば、いつか、相手を許すことができますか?

 

〈お父さん〉

答え

なるほどね。全然、勘違いしてるね。
許す、許さないって言うのは上から見てるよね。

自分自分って言うけど。自分ていうのは、実は2人いるってことですよね。
2人っていうのは、魂の部分の自分と、ちょっと出来の悪い脳みそと出来の悪い身体を持った自分。
魂を持った自分は、身体や能力とは関係なくどんだけプライド高く持ってても、どんだけ清く正しく美しくあってもいいわけですよね。
そういう魂の部分から自分を見たときにね、なんだこれと思っても、少しこう、なんていうのか、かわいがってやろうか、っていう気持ちを持たないといけないんじゃないでしょうかね。大事に使ってやろうかって。

この魂の部分はうんと高くて良いですよ。プライド高く持って、どれだけ気高くてもいいわけです。最高でいいわけですよ。
しかし、肉体とか脳みそには、おのずと限界がある。だから、借り物競走やってると思ってよ。たまたま、今ある顔と脳みそと身体に大当たりーってなっちゃったわけだよね。魂は、そういうのは離れてるものだからね。
途中で返すわけにいかないんだ。借りちゃったけど、それが不出来だと嘆いていてもしょうがないので、せいぜいお手入れをしてですね。あるいは褒めてですね。少し動くように、持っていくしかないんでしょうかということだね。

他の人も借り物競走やってるわけですね。お互いに借り物競走してて、お互いに、ちょっとひどいの借りちゃったね、とか思ってもいいです。
ひどいの借りちゃったね、って思ってる魂は。私は最高なんだけどねと思ってればいい。そういう考え方ですよね。
許すも許さないも、許せないから返すと言っても返せないからね。しょうがないんです。せめて、高めていって使いやすい身体と頭に、していきましょうと。
そんな感じじゃないでしょうかね。

あの、現実はね。なんつったらいいのかな。現実はなかなかうまくいかないです。うまくいかない部分がある。それから、思ったよりかうまくいってしまう部分もある。いろいろです。
それはちょうどね、ウサギとカメの競争をね、やってるようなもので。
この、魂もね、懸命に高く持ってても、ときどき、がちょんと来ちゃうことがある。
気持ちが落ちてるとき、ふと気がつくと、この借り物の頭と身体が何かこそこそやってて、こういうこともできるのか、凄いな自分。っていうこともあるんです。そういうとき、褒めてやればいいんだよね。
かといって自分の気持ちがバッと先走ると、この身体をもつ自分が、すっごくもたもたしてる愚図なものに見える。
相対的なもので。

お互いに、ウサギになったりカメになったりしながらね、人生が進んでいく。
前も言ったけど、未完成な自分でいい。今は未完成だけど、いつか、素晴らしい最高の完成形を見るんだという志をしっかり持っていけばいいのです。
ここが未完成だから駄目じゃないかとか、いつも肉体の自分ばかりに囚われていちゃいけない。魂だけは、いつも最高と思ってればいいんじゃないでしょうかね。
上から自分を褒めたり励ましたりしながら、引っ張り上げてやる。くさしたり、馬鹿野郎って自分に言ったって嫌になっちゃうでしょ、言われたら。褒めた方がいいでしょ。
他に迷惑かけることないし、いくら自分で自分を褒めたって、自惚れ屋って周りに言われないよね。自分の魂と肉体のやりとりなので。

他の人を許すかどうかってね。あの、どうなんでしょうね。
ちょっと語弊がありますけどね。
語弊がありますけど、僕はね、若い頃、あまりにも辛かったせいか、ほとんど、他の人、自分と同世代の人を見下して生きようとしましたね。
だから、なんて言うんだろうな。許すも許さないも、下の人間と取り合う気がないというかね。なんていうのかそれはね、いつか……僕はずっと、物心ついたときからなんか孤独感を抱えてきて、みんなと自分は違う世界の人とずっと思ってきて、他愛のないことで喜んだり楽しめるほかの人は自分と別の種類の人間だろうと思ううちに、自分は違う惑星からやってきたウルトラマンみたいなものと思って、だから地球人を下に見てた。
あまり正確じゃないけど、言ってみればそういう意識がある。

ただ、小説読んだりして深く共感したりするときは、ほんとにそこには、ああ、これは自分と同種の人間だな、と感じた。中学1年生で「野菊の墓」を読んだときからね。
でも、そういう純真さで同級生を見ると、全然やってられない。ほとんどの同級生はがさつで、競争したり人の足引っ張ったり、人をくさしたり。ろくでもないことでガチャガチャして、とても一緒にはいられない。

やがて大人になって、僕は小学校に行き始めた長男に、こう言ったよね。
帰ったとき妹たちをいじめたんだよね。それまで僕、僕って言ってたのに「俺」に変わって。
僕はそれで、「何やってるんだ。妹をいじめるんじゃない。俺なんていうのはやめろ。どうしたんだ、そんながさつになって。普通の優しい人間に戻れ」って言った。

そしたら泣きながらね、
「だってお父さん、学校にいて優しい気持ちでいると、やられちゃうんだよ。そしたらこうすればいいわけ? 学校に行くとき強い気持ちに入れ替えて、家に入ってくる前にまた優しい気持ちに戻して、家に入ってくればいいわけ?」
って言われたとき、ショックでしたね。
ああ、ごめんよって言いましたね。

自分で同じように苦しんできたのに、こう言っちゃなんだけど、自分がね、子供のために、世の中を変えきれてないなって。自分1人の力でできることでもなかったんだけど、自分が嫌だなっていう世の中に、何で自分の子を産み落としたのか。嫌だなって思う世の中なら、それを変えてから、子供をつくったらよかったんじゃないか。

悪いけど、これはお父さんにも責任あるけど、悪いけど、おまえの感じる通り、世の中、ずるい……足引っ張ったりね。優しい付き合いができない。子供の社会でもそうだよね。お前の言う通りだ。優しい気持ちで学校に行ったら、いいようにこけにされたり、いじめられたりするようになる。だけど、それはほんとは違うよね。
残念だけど現状は、みんながみんな優しくない人ばかりじゃないから、外と家では気持ちを取り替えようよって、言ったね。
しかし、そういうふうに言ったのは、子供がまだ小学1年生だったからなんだ。まだ強さを持てない年齢だ。
15歳以上だったら、言う事が違う。優しいまま、強くなれ、と言うよ。

ただ、どうだろうか。そんなふうに誰にも教えてもらわずに、周りの強い人にやられたと感じてきちゃった人はね、いつも警戒してしまう。
たぶん学校のとき、子供のときからずっと、そういう、嫌な人とか攻撃されたりする人の中でいてね、攻撃を守る方法を一生懸命覚えたり、攻撃される前に攻撃してやったり、そういう人を許さなかったり。そういう心の訓練をしてきちゃった人は、ここに来てからも、まず人を見て警戒して、こいつ、って対抗する癖がついちゃった。たぶんね。

だけど、ここ「なのはなファミリー」では少なくともそういうことをやらないという関係を作るということできてもらってます。
だから、許さないとかじゃなくて、優しく付き合う。優しい気持ちを持ち寄るという前提でやろうということなんだね。
だから、僕がさっきね、全ての同世代の人を見下げてきた、といったけど、それはある種、僕の予防対策だったかもしれませんね。
だけどここでは、何も見下げてないです。何もかも取り払っちゃってます。
立派だなと思う子もたくさんいます。みんなと僕は年代も違うけど、僕より凄いなっていうこともたくさんあります。
今はどうかって言うと、大人でもね、全部が全部ガードして付き合ってるわけじゃないです。
まあ、年の功っていうこともあって、ガードしないで付き合う人もたくさんいます。

あの、なんていうのか、ここでね、もうガードしないで心をさらけ出し合って作る関係っていうのをお互いに作って、やってみて、それを体験して、あ、こういう安心しあえる関係があるんだ、っていうのをやっていくためには、自分も許し人も許し、ガードしないでいく。
そういうことをお互いにやってもらいたい。そういう気持ちでいてほしいなと、僕は思いますね。









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