質問
私は中学に入る頃まで、舞台を見に行くと怖くてロビーに出てしまったりしていました。
母親がお芝居やミュージカルなど舞台鑑賞が好きなので、一緒に連れられて行っていたのですが、舞台が開演されると怖くて逃げ出したくなっていました。
父親の好きな美術館へ行くのは平気だったので、母親に反発する気持ちがあったからでしょうか。
教えていただけると嬉しいです。
答え
これには、いくつか理由があります。
母に反発する気持ちというふうには、ちょっと考えにくいですね。
お芝居やミュージカルでは、内容も全部異なりますから、それが全部駄目っていうのもちょっと変ですね。なかには見たいものもあったはずだと思います。
そうなってくると、逃げ出したくなる理由の1つは、閉所恐怖症的な感覚かもしれません。
閉ざされた空間の中にいると、息が詰まる。そこから出られなくなる怖さがあって、ある種の安全を求める気持ちが強く働けばロビーにでたくなるでしょうね。
もう1つの理由は、大人のごっこ遊びであるお芝居が異様なものに映ったということです。僕らからすると、お芝居はお芝居として見る事ができます。
しかし、何の予備知識もない子供が、いきなり芝居を見せられたら、何だ、この人たちは何をしているんだ?! と、芝居を演じている人が狂気の人に見えるでしょうね。
それをまた喜んでみている母親も、狂気に映る。そんな狂気が演じられている空間を異様に感じてしまい、その狂気に耐えられないということはあるでしょう。
僕は小学生のとき、映画館に行ったことがありますが、最後まで見ていられないんです。胸が苦しくなってしまう。
映画の途中でロビーに出て休む、また入って見る。やがてまた苦しくなって、ロビーに出るとほっとする。
そういうことを繰り返していると、飛び飛びにしか見られないので、また最初から見直す。そんなことをやっていると、朝から映画館に入って、いつの間にか夜になっている。
「藤柄町の小野瀬さん、お父さんが受付まで迎えに来ております」
館内放送を聞いてハッと我に返って、初めて夜になっていることに気付くわけです。そして、親に叱られながら帰る、ということがありました。
もし、安全が保障されていたなら、閉ざされた空間でも、何でも大丈夫なのです。しかし母親はこの人にとって頼りになる存在ではなかったのでしょうね。だから、母親と一緒に行っても、安全が保障されていなかった。自分で身の安全を図るよりほかなかった。
だから、お母さんに反発する気持ちがあったというよりは、お母さんを全く信用していなかった、というべきでしょうね。
どんなにお母さんが感動してお芝居を見ていても、とてもついていけない、という感じです。
いざという時に、お母さんは守ってくれないだろうと思うと、そうやって我を忘れて感動していて大丈夫だろうかと、ますますシラケてくる。いざとなったら、この母親までも自分が守らなければならない、と感じてしまいます。
そんな、閉じられた空間に危機を感じたのでしょうね。
その点、父親と行った美術館というのは、閉ざされた空間ではありません。
また、絵は実物ではなく、絵の具が乗っている架空のものではありますが、目の前で狂気が演じられているわけではないので安心できます。
美術館では平気だったようですが、そういう違いがあると思います。
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