第132回「予定が変わると、気持ちがもやもやする」


【質問】
その日の予定や、自分がこうしよう、と思って計画を立てたりしていたことが突然変わったりなくなったとき、それに向けて作っていた気持ちだけが消化できずにもやもやとしてしまいます。例にあげると、アセスメント演奏があるつもりでいたのが、やっぱりなくなりました、と言われたときみたいな感じです。

どんな状況だとしても、ぱっと切り替えて次のことに気持ちを向けるにはどうしたら良いですか。

自分の答え
これ、という答えがうかびませんでした。
・心を柔軟にして、融通のきく人を演じる。

 

 

【答え】
お父さん:
そうだよね、予定が違ってしまうと一番困るのは食事ですよね。友達に誘われて、美味しいラーメン屋あるから一緒に行こうと言われて待ち合わせ、さて、どこの店だ? と言ったら、「ラーメン屋は今日は休みだったから寿司屋にしよう」と言われたって、もう寿司を食べる気にはならないよね。
ラーメンを食べるつもりで腹を作っていったのに――。
その気持ちが消化できず、もやもやしているというわけですね。そりゃ、モヤモヤとして良いんじゃないの? モヤモヤとしていいと思いますよ。

だけどみんなは、割と切り替えが苦手ですよね。
なのはなファミリーが始まった頃は、ほんとうに予定を誰にも知らせることができませんでした。予定を聞いて、嫌だなと思っていると、なんていうか計画的に当日の朝、体調不良を起こして参加できないとなってしまう人が多かったからです。
それで、予定を事前には知らせないことにして、当日の朝、発表していたんです。
すると、山小屋便りの書き出しがみんなこうなりました。

「お父さんが、朝、突然、今日はピクニックに行くと言い出したので、ピクニックに行くことになりました」
「お父さんが朝、突然、今日は音楽練習だと言い出したので、音楽練習をしました」

 

お母さん:
そう、全部「突然」がつくんだよね。

 

お父さん:
突然にしないと、何も進まないということがずっと続いたんです。
例えばどこか出かける予定の日になると、朝から裏山に誰かが逃げ込んで出てきません、とかなってしまうんですよ。
ピクニックみたいな楽しいことでもそうなんだよ。「私はピクニックだけは行きたくなかったんです」と――。後で聞くとね。
だから予定が発表できないんですよ。お腹が痛くなったり……。
それはみんなの親御さんの中の半分以上が、うちでは子供が摂食障害になってから、家族旅行ができませんでした、必ず朝に喧嘩になるんです、と言うことでもわかると思うんです。
何というか、みんなは予定に弱いんですよね。気持ちを作りすぎたり、作り足りなかったり、予定が変わったりしたら受け入れられなかったり。それは症状の一部ですよね。なんていうんだろうな、それも「思い込み」なんですよね。

例えばこの質問の人が、アセスメント演奏があるつもりでいたのになくなってしまった、というのを例に挙げていますよね。
すると、アセスメントのために衣装をこれを着て、こう着て、と手順を考えて、すっかりその気になってるわけですね。それが急にキャンセルになった。これは自分の苦労が無駄になった、と腹が立つわけです。なんだと? アセスメント演奏が無くなったって? そんな殺生な……。これだけ自分で心づもりをしたのに、ないの? みたいなね。急にキャンセルになるなんて、もう嫌だ――、ってなってしまう。一生懸命に準備してきたから、ね。

で、質問は、これに対してどう対策をしたらいいか、ですね。
一つは、いくつか自分の楽しみを常に作っておくことが大事だよ、と思うんです。
僕は、今すごく心楽しい状態なんですよ。
なんでかというと、頭の中で、ジーブスが動いてるんですよ。“ジーブス”ってみんな知らないでしょうけど、今度のコンサートでも配役の一人にジーブスって名前をつけようかなと考えています。
美智子様が、皇后陛下がですね、誕生日のときにジーブスが2、3冊控えています、と話されたんですよ。その探偵小説というか、ユーモア小説を読んでみたんです。
なんで読むかというと、いくつか理由があるんですけど、今の風潮を取り入れる必要があるわけですよ、いつも。うちのウィンターコンサートは、常にアップトゥデートをしていきたいわけです。それで読んでみて、ジーブスを登場させることにしました。これが面白いんです、時代は1900年代の初めですから相当に古いです。で、かなりお馬鹿なお金持ちの貴族と、その人に仕える優秀な執事の話なんです。執事がジーブスなんですね。知性に満ち満ちたジーブス。

面白いんですよ。こういうふうに、読んでる途中の本もあれば、読んだ本もあります。
何て言うんだろうな、小説を読んだりする楽しみと言うか、利点はそういうところにあってね。現実の世界とその小説の世界が、――小説の世界が頭にまだ残っていてですね、常に現実世界と小説世界とが、自分の頭の中で、同時並行で進んでいるんです。
今度のウィンターコンサートの脚本もそうなんですよ。みんなのウィンターコンサートを作るとき、毎回、そうなんですけど、ステージの上では話が二重で進んでます。ときには三重もの話しが同時並行で進んでいます。
主人公が出てきて主人公がなんとかするだけ、という話しはドラマでも小説でも舞台でも、ほんとにつまらないんです。単調になってしまうからです。

それが2つのストーリーが同時並行で進んでいると、ストーリーに奥行きが出るんですよね。
つまり、何が言いたいかというと、あなたたちが自分の人生に奥行きを出したかったら、常に2つか3つのストーリーを生きてください、ということが言いたいんですよ。
僕だったら、今はジーブス小説を、暇さえあればどんどん読みたいなと思ってます。お母さんの目が厳しくなければ、みんなで行くときのために、釣りのノウハウのユーチューブを見まくりたいな、と思ってますね。今も、つい堤防が浮かんじゃう。で、脚本を書かなきゃいけないでしょ。他にもいくつも、やらなきゃいけないことがあるわけです。同時並行でね。

こっちが駄目になったらこっちをやろう。こっちの道がふさがったらこっちをやろう。そんなふうに、時間さえあったらやりたいことがいっぱいあるわけですよ。同時並行でいるから、これが駄目になってもラッキーってなものです。別のことができるからね。
そういうふうに、自分のやらなきゃならないこと、やりたいことを頭の中で常に2つ以上走らせておくと、こういう質問者のような困り方はしなくなるんじゃないかな、という感じがしますね。で、ほんとうに自分の楽しみや、自分のやりたいことを、いくつも同時に進めていたら、奥行きのある人生を送ることができるんじゃないかな、というふうに思いますよね。

なのはなファミリーのみんなも、晴れたら畑に行って担当の野菜の手入れをしたい、雨が降ったらアンサンブルの楽器練習をしたい、ダンスの練習もしなくちゃならない、といくつもやりたいことがあるはずです。
場合によっては、「私は他に何もやってることがことがないので」と言う人がもしいたならば、小説を2冊、同時並行で読むんです。あるいは3冊を同時並行で読むんですよ。
なんで2冊も3冊も同時並行で読むかと言うと、長編小説で外国のカタカナの名前の主人公が出てくるやつは、読みにくいでしょ。例えば、トルストイの『罪と罰』みたいなの、読みにくいでしょ。
こういう長編小説を読むには、入り込むのにも時間がかかるし、小説世界から出るのにも時間がかかるんですね。長い名前を思い出さなきゃいけないし。かなり時間に余裕がありそうだったら、そんな長編も読めます。
だけど、時間があまりないときには、もっと短い短編小説集のほうが読みやすい。それで時間があるときと、ないときで、手に取る本を変えるわけです。そんなふうに同時並行でいくつも小説を読んだり、自分がやりたいことも、時間があるときにはコレ、時間がないときにはコレ、と事前に決めてやっていく。それがいいんじゃないかなと思いますね。

中学生、高校生の勉強でも同じことが言えます。
どっぷりとその教科に浸かって、たっぷりやろうなんて思ってるとなかなかできません。それで、もう、いろんな教科を短くトントントントン回していくんですね。これができたらこっち、と次々に15分で、勉強する教科を替えていく。もしも飽きなかったら30分くらいやってもいいけど、1つにのめり込むと切り替えが難しくなるから次々に、どんどん浮気しながら同時並行でいろんな教科をやっていくのが最も効率がいい方法だと思います。

数学なんか、難しい問題をじっくりやろうなんて思ってたら、考えてるつもりが寝てたとか、せいぜいそういうことになるんです。
急いでやろう、急いでやろう、と思うと無駄な時間がなくて次々に捗る。わからなかったら、考えない。答えを見て、答えを覚えればいいんです。今は勉強ではよく考えましょうとか、子供に考えさせましょうなんていう人が多いけど、考えるより先に覚えたらいい。覚えていないのに、考えても無駄です、と言うと反論する人がたくさん出て来そうだけど、僕としてはまずは全体をスピーディに覚えてしまいましょう、という考え方ですね。それだけだって、時間は常に足りないくらいです。もし考えるとしたら、趣味の範囲でやればいいことです。

話しが横道にそれました。いくつか、自分がやるべきことを用意しておいて、常に同時並行でやっていくということを、自分の人生を生きていくノウハウとして身につけると良いんじゃないでしょうか。

 

 

(2018年11月9日掲載)









第1回~第100回(クリックすると一覧を表示します) 第1回「縦軸と横軸について」
第2回「神様は何をしようとしているのか」
第3回「本で涙を流すことについて」
第4回「本を読んでも内容を忘れてしまうことについて」
第5回「時間をうまく使えるようになるには」
第6回「太宰治について」
第7回「摂食障害の人が片付けが苦手だったり、約束の時間に遅れてしまうのは何故ですか?」
第8回「自分のことを『僕』『おいら』と言うのをやめられなかったのは、なぜか」
第9回「おいしいカレーと、おいしくないカレーの違い」
第10回「楽しんで走る」
第11回「死ぬことへの考え」
第12回「『聞く』と『教えてもらう』」
第13回「頑張るフルマラソン」
第14回「他人の成功」
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第16回「不安の先取り」
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第18回「急に悲しくなる」
第19回「夢の持ち方について」
第20回「心の許容範囲」
第21回「疲れるのが怖い」
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第23回「人といること」
第24回「“好き”という気持ち」
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第26回「舞台鑑賞が怖かったこと」
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第49回「強さについて」
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第52回「何のために変わるか」
第53回「痛みを知る」/a>
第54回「投げやりな気持ち」
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第70回「リーダーをすると苦しくさせる」
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