昨日は質問に答えて下さってありがとうございました。
昨日の質問を踏まえて、また質問があります。
依存には色々あると思うのですが、昨日の話にあったような、分かりやすい依存(食への依存、タバコなど)ではなく、自分ではあまり気づく事の出来ない、親への依存について質問です。
その親への依存を切り離せるまでの期間や、切り離し方などは、親以外の依存を切り離すときと同じですか?
■自分の答え
同じではない、けれど分からない。
そうですね、それは親の依存を切り離すのも、親以外の依存を切り離すのも「同じ」だと思ってください。
また、アルコール依存を引き合いに出して考えましょう。
アルコール依存の強い人はどうなるかというと、本人から望んで、もしくは強制的に、精神病院に入ったほうがいいよ、と閉鎖病棟などへ入ります。
精神病院で依存の強い人はどうするかというと、簡単に言うと絶対に出られない檻の中に入れて、暴れようと何をしようとそこから出さずに、酒を強制的に断つ、という強硬手段を取るわけです。……摂食障害の人と似ている? なのはなでは保護室に入れることはしませんけどね。
そういうことをしないと収拾がつかないわけです。理性が働かなくなっていますから。
じゃあ、そうして半年くらいかけてアルコールを完全に切った人が、病院から退院してきました。この人は二度とアルコール依存にならないでしょうか、という話なんです。
そのままにしておいたら、ほぼ全員、またアルコール依存になって、戻ってきます。
それでアルコール依存症は、治らない病気、とも言われています。
もっと言うと、摂食障害だって「治らない病気だ」と言う人もいます。
医者から言われた人も多いですよね。
「摂食障害は治すことのできない病気なんだよ、上手に付き合っていく病気です。ある程度コントロールできたら、それはもう治ったと言っていいんだよ」
治らない。依存は切れない。一般的に言って、それがこの病気の本質なんですよ。
だけど、なのはなファミリーの考え方は違います。
摂食障害の症状を完全に消す、再発のない完治、ということを目標にして、やっています。
実際、卒業生を見ると、卒業生のほとんどは、完全に依存が切れて再発はありません。
親への依存を切るというのも、同じなんです。
やっぱり親の依存を切るのはすごく難しいです。
で、1か月くらいしたら、親が恋しいなとか、会いたくて堪らない、ここを飛び出しても会いたい、というような強い依存の症状はかなり落ち着きます。
だけど、半年間、親との連絡を絶てば依存が消えるかというと、消えませんということなんです。それは、食の依存、アルコール依存と、全く一緒なんです。
じゃあ、それでは依存を完全に切るために、なのはなファミリーでは何をしているのか。
依存を切るミーティングをすることで、依存が完全に切れるようにしています。
今、やっている――新しい人はちょっと入っていないですけど――ミーティングがまさにそれです。自分の心の傷を完全に癒やす。完全に分解掃除をして整理をつけて、心の傷を、傷ではなくする。そうすると、依存が完全に切れます。
依存が完全に断ち切れた状態になれば、外に出て自立したあと、いろんな問題が起きたり、状況が変わったりしても、その依存がまたもう1回芽を吹くということが、なくなるんです。
そういうふうに心の傷を完全に消さないと、一時的に依存を中断させただけでは依存症から回復することはできません。
だから、
「ここにきて、アルコールも断つことができました、食事も普通にできるようになりました」
「偉いね、4か月で体も元気になり、よい生活習慣もついた、良かった、さようなら」
って出したら、まあ時間の問題で、また同じ症状を出すでしょうね。
この中にも、何回も入院しては退院し、入院しては退院し、を繰り返して、さっぱり治らないという人がたくさんいます。身体(体重)を普通に戻して、普通の食習慣に戻して、昼夜逆転も直して、これで行けるかなと思って外に出てきても、またすぐに時間の問題で、あっという間に摂食障害の渦の中に巻かれていく。
だから、それは何が原因で、それをどう正したら治るのか、ということを明らかにするわけです。なのはなファミリーでは、それをやっていくわけですけど、いってみたら、それを1人ずつ明らかにするためのミーティングです。
それが不思議に思うかもしれませんが、心の病気の大きな原因は割と共通点があって、鬱病や統合失調症なども、ほとんどが摂食障害の心の問題と共通点があります。
それで、親への依存を切り離すには、ただ親と連絡を断つだけじゃなくて、心の中を整理して、心の中の傷にきちっとけりを付けないと、また依存は戻ってきてしまいます。
ところで「心の傷」というのは2種類あります。
よく勘違いされてしまうんですけど、例えば今、誰かとやり取りをしていて、ひどい言葉を言われるとします。「お前なんか死んじまえ」みたいな。それを聞いて、「あなたの言葉で傷ついた」というときも心の傷です。
ところが、大人になってから、「あんたにひどいこと言われて傷ついた」という傷というのは、割と浅いんです。
悪いことを言われて頭にきた。悲しくなったりした。それは言ってみると“嫌な思い出”です。
言われたときは一番腹が立つだろうし、翌日も3日経っても、頭きたという状態ですよね。
それが10日して、1か月して半年となったら、もう、「そんな事言われたっけな。あいつにはひどいこと言われたな」って遠い思い出になっていき、だんだん薄れていきます。まあ、10年か20年したら、ちょっともう記憶の彼方になって、どうでもいいことになりますよね。
それは、要するに悪い思い出になる傷ですよね。
ところが摂食障害で僕たちが言う「心の傷」というのは、それと種類が違うんです。
僕たちが問題にするのは、4歳から6歳の間に受けた心の傷だけです。
家族がばらばらになるんじゃないかとか、自分がこのまま生存できないかもしれないというような傷というのは、これは思い出にならないんです。
なぜか。
人間というのは、人間として生きていくためのプログラムが、生まれたあとで行なわれていくんですね。
6歳までの間に、人として生きるプログラムがなされ、脳がどんどん進化していきます。
その生きるためのプログラム中に傷つくと、これは思い出にならない。人が生きて行く上での本能のプログラムに、つまり脳の中に組み込まれてしまうんです。組み込まれてしまって、言ってみると冷凍保存されているようなものですから、ずっと色褪せないで残る。
それはプログラムであって、思い出ではないので、少しずつ薄れることがないのです。
このプログラムが、機能し始めるのが、みんなが思春期になる頃です。身体が変わり始めて、女性もしくは男性となる頃に、女性ホルモン、男性ホルモンが増える。増えると、この間違ったプログラムが解凍されてしまいます。この心の傷が解凍されたときに、正しく親離れができない、ということになってしまうのです。
親離れができないために、親に対して、好きな感情、嫌いな感情、色んな感情が出てきて、うまく親離れができない。その葛藤が、生命脳にダメージを与えることで、いろんな症状――食欲中枢を壊したり、性欲中枢を壊したり、自律神経を壊したり――が始まり、その中心的なものは依存症ですが、ときには鬱病になったり統合失調症になったりすることもでてきます。
そういう発症のメカニズムなので、本当にこの依存を切り離すためには、“プログラムミスを修復する”ということしかないのです。そのことで、きちんと親離れできるようになるし、依存症にも収拾がつきます。
この親離れ中枢がもとで、アルコール依存とか摂食中枢の故障を起こしていますから、このプログラムがきちんと修正されたら、それらが根本的に解決できるのです。
人間関係もきちんと取れるようになる。
自己否定もしなくて済む。
正しく自分の未来を明るい方向へ描いて、自立することができるようになる。
すべてが変わる。それがこの親離れ中枢なんです。
完全にそれを治すためには、今やってるミーティングで、自分がどういうプログラムミスをしたのか、自分のプログラムミスがどこにあるのかを明らかにする。それがわかる構成のミーティングになっています。
そして、自分の中で意識的にプログラムをし直す、ということが、必須です。
それは絶対に必要です。その修正ができたならば、再発しないのです。
直さないで、その周辺の身体だけ治す、お酒を飲まない習慣をつける、そんな事をやっても、元々プログラムが壊れているから、必ずまた症状が出てしまいます。そこまで治して本物じゃないでしょうかということ。
多くの病院では、現実的な取り組みとして、入院した患者さんに対して極端に痩せた身体のケアをして、普通の体重の許容範囲内に戻して、退院させます。
いまの段階では、脳のプログラムミスを修正するような治療法やカウンセリングは、病院では行なっていません。
脳のプログラムミスを直すことで、摂食障害のケアを本質的なものにしていくという発想は、残念ながら、まだ一般化されていないからです。
しかし、ここまでしないと親への依存も完全には切れませんし、いろいろな依存症も完全に切れるというところまでいかない、と私たちは思っています。
なのはなファミリーの卒業生の多くが、自立して働いているばかりでなく、結婚して、子供も作って、依存からまったく離れた健全な生活を営んでいるという事実が、そのプログラムミスを修正すれば依存症は再発しないということを証明してくれていると思います。
(2018年7月27日掲載)
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