なのはなのセロリはどうしてこんなに美味しいのですか。
私はなのはなに来る前、セロリの筋っぽさと青臭さが嫌いでした。
でも、なのはなに来て、セロリが好きになりました。
筋っぽくなくて、遠くでハーブティーの味がすることに感動しました。
どういうところが良かったと思いますか。
自分の答え
落ち葉堆肥を追肥したこと。
ハウスの開け閉めの時間をワンパターンにせずに、当番をまわして、担当になった人がその日の天気によって考えて、ハウスの開け閉めをしていること。
【答え】
このセロリの美味しさっていうのには、2つの意味があると思うんですね。
1つは、ここに、「なのはなに来る前は筋っぽさと青臭さが嫌いでした」ってありますよね。だからその、筋っぽさと青臭さが好きになってるということなんですよ。それは何かというと、筋っぽさも受け入れる心持ちになってる。青臭さも受け入れる心持ちになっている、っていう心の変化というのがあるんですね。
人によっては「この味しか駄目」とか、「水を飲んでも岩の味がする」とか言ったりします。水に味が付いてる、と感じることがあります。どの水を飲んでもミネラルウォーター飲んでもね、味が変わっちゃう。症状が最悪だと、味のないものにまで味を感じることがあるのです。
まして青臭いものなんかはとても受け入れられない。筋っぽいものなんかは受け入れられない。そういう心境になるんですね、苦しさが続くとね。
苦しさがとれると、それこそ青臭さも楽しく感じる。筋っぽさも楽しく感じる。苦さも面白く感じる。そういうふうに、変化を、楽しめるようになるっていうことが、まず、大きくあるんじゃないかと思うんですね。
で、もう1つは、ここに書いてあるように、落ち葉堆肥を追肥したり、そういう生育環境が良かったという理由ですね。ハウスの開け閉めをしたりね。
セロリは、生か、生に近い形で食べる野菜ですよね。だから、地面の下、土の中から、養分なり水分を吸い上げて、そのままそれが味になってる、っていうことがありますよね。
よく、ワインの試飲会とかテイスティングで言うんですけど、ワインの元になるブドウを育てている土、その斜面が北側なのか、南向きなのか、西側向いてるのか東側向いてるのか、どういう質の土なのか、どういう肥料を使ってるのかが、そのままブドウの味になり、ブドウ酒の味になる、って言われているんです。だからブドウ酒をじっくり味わってみると、その土がイメージできるんですよね。本当に、土がイメージできちゃうんですよ。
――あ、僕は、ブドウ酒の、ワインスクールにね、半年通いました。半年、試飲をして、講師から教えを受けたんです。それも仕事で、その体験記を記事にしたので自分のお金で行ったわけじゃないんですよ。
そのとき思ったのが、本当にどういう味を美味しいと思うかっていうことです。
一般的に子供だったら、甘いものとか、口当たりの良いものとか、そういうのが良いって感じるわけですけど。ワインというのは、そうじゃない。ワインはいつも、どちらかと言うと脇役なんですよね。メインの料理を食べたときに、ワインをちょっと口に含むと、その料理をさらに引き立てるような脇役。その料理がもっと美味しく感じて、ワインも美味しく感じる。
ワイン単品ではそんなに美味しいと思わなくて良いんです。むしろザラザラしていたり、渋みがあったり、ちょっと尖っていたり。なにか肉料理なら肉料理を口に入れるとき、その肉の味にカドがないときに、尖ったワインを飲んで、その肉の美味しさが倍増する。そういうことも本当にあるんですね。
だから、ワインスクールでテイスティングするときには、若干、料理も食べるんです。というのは、この料理に合うかどうかというのがあるのでね。何に合うのか。相性みたいなのがあるので、そのとき普通だったら渋いとか苦いとか美味しくないようなイメージのもの、それが意外と良かったりするんです。料理を引き立てるために、ね。
で、考えてみたら土なんかを食べてみたって、甘いわけがないですよね。腐葉土を食べてみたって美味しいわけがないんです。だけど不思議に、ワインを飲むと、牛肥の味がするときがある。「牛小屋の横の泥の香りがする」って、僕、本当にそう言っちゃったことがあります。牛舎の後ろの、糞尿が流れて、それが溜まったものを堆肥にして、そこで育ったブドウの味。それがね、悪くないんですよ。うん、悪くないんです。これが不思議ですね。
まあ人生に似てますよ。真綿にくるまれて、真っ白いシーツ、真っ白い服に包まれて、ふわふわと柔らかい人生を歩んで、そのまま、お嬢ちゃんお嬢ちゃんして大きくなった女の子がここにいたら、お母さんと比べてご覧なさいよ。お母さんのほうがよっぽど味わい深いです。
マシュマロみたいなフニっとした子、これは、人生を逞しく深く生きていこうというときには、ちょっと足りないんじゃないですか。「可愛い子には旅をさせろ」って言う。お母さんなんか、旅をしすぎる寸前まで旅をして、コクと深みを身に着けてきた。そういうふうに思うでしょ。
味もそうなんですよ。味も。
自分に、どんな災難でもやってこい、どんな艱難辛苦、難しい災難だろうがハードルだろうが、なんでもかかってこいという心構えで、私はそれでも前を向いて生きていくぞというとき、ちょっと尖った、青臭さの味。「良いな。うーん。成功」って思えるんですよ。
そういう心が、やっぱり一番、食べ物の幅を広げていく元。食べ物を深く味わうことができるベースにあるんじゃないか。そんな感じがしますよ。
ということです。
わかったよ。これから、(お母さんは)ワインになったらいいんやな。
そうですよ。お母さん。
あのね……赤ワインだね、お母さんはね。
白ワインの方が好きだけど。
お母さんは、赤ワインだからね。
(2019年1月25日掲載)
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