第42回「正しいことを通そうとして」


〈質問者〉

質問

私は人の上に立っているのですか?
だから人と衝突したり、上手くいかないのですか?
人を嫌な気にさせるのですか?
個人的なのですがある人と衝突しました。
また、ある人を、私は困らせているのかもしれないです。
お父さん、お母さんに私の間違いを教えてもらえたら嬉しいです。

 

〈お父さん〉

答え

これ、上に立ってるとか下に立ってる以前にね、正義とか、正しいことを通そうとしているんですよね。間違いは間違いだろう、間違いは直せよっていう、間違いを許さない空気を出しているのでしょうね。

この人は、いつも正しい事っていうのが見えていて、それが正しいとなると、それ以外がすべて間違いになって、その間違いを正されないと嫌な気持ちになる。そういう意味では、それは悪い心がけではないんですけれども、それが強すぎると、過ぎたるは及ばざるが如し、という感じになってしまうんですよね。
正義感が強いっていうのは良いことなんですよ。
良いんだけれども、それが強すぎると、時として色んな失敗をします。

あまりいい例が思い浮かびませんけれどね、みんな暴走族が夜中に来て、夏の暑いときに網戸にしてたりすると、その爆音が耳障りになりますよね。
これは何年も前の神奈川の話ですけど、大手全国紙のコラムを連載して、世の中の批評なんかをしてる人の家のそばに、毎晩のように暴走族がわんわん来た。うるさくてたまらない。
そのコラムを書いてるおじさんは50代だったと思います。僕と同じか、僕よりちょっと下くらいの年齢です。

その人が、暴走族に腹を立てて、バットを持って出たんですね、通りにね。
まあ男気もあるんでしょう。「こら、うるさいぞてめえら」って怒鳴ったんでしょうね。暴走族を諌めにいった。
どうなったか。
暴走族に取り囲まれて、自分の持っていたバットを取り上げられて、それで滅多打ちにされて、死にました。暴走族は逃げて、その後、捕まったか分かりませんけれども、その男性は、たちまちその夜のうちに死んでしまいました。

こら、うるさいからやめろてめえら、っていうのは、いいんだと思います。
だけど相手も徒党を組んでて、数を頼んで、戦う気持ち満々でいる男たちです。10人いたとして、1人1回殴ったとしても、10回も金属バットで頭を殴ったら、それは死ぬまでありますよね。実際にはもっと全身を叩かれたと思います。

これは、例としてはあまりよくなかったかもしれないけど、正義だから通るかというと、決してそうではない、正義の通し方にも、考えようはあるんじゃないかなと思います。
その人は新聞で正義を書いていたわけで、私生活でもオレは正義を貫くんだ、っていう気持ちだったのでしょうが、自分が暴走族に返り討ちにあっては、元も子もないです。

また、逆に曖昧で正義をきちんともっていない軟弱な人を、正義のある人がこてんこてんにやっつけてしまったら、曖昧な人の立つ瀬がないっていうこともあるかもしれない。
今正しいことと、後で正しいことは、違ってくるかもしれません。お母さんも、時が違えば、場所が違えば答えが違う、とよく言いますよね。
正義も、場合によっては違ってくると言うことがあるんですよね。

だから、正義だからといっていつも強く押し通そうとするより、それが本当に正義かどうか自分で自分を疑う気持ちをいつも持っているくらいでちょうどいいと思います。

畑のことでも、そういうことがあります。
全然、畑のことを知らない人が、間違ったことやっていたとします。
畑のことがある程度出来る人はこう言います。
「それはやり方が違うよ、こんなふうにやるんだよ」
と教えます。やり直しをさせる。

でも、もっともっと畑の出来る人はなんて言うか。
「そういうやり方もあるよ。それでもいいよ」
素人が素人流にやっていても、無理矢理は直そうとしない。だから僕らが畑に行ってて、その辺のおじさんがやってきて、「ああ、これじゃ駄目だ、こうやるんだ」ってどんどんアドバイスをしてくる人は、まあ2流ですね。

1流の人は、「ああ、そんなやりかたあるんだ。へえー」って見てて、そのやり方はやめろなんて、めったなことじゃ言いません。
そんなもんなんです。よーく知ってると、ちょっとくらい遠回りしても、(いいとこ行くかもしれない)、あるいは、(なるほど、そうやってみたらどうなるのかな)なんて思って、余裕で見ている。
だから、許容度が大きくなるんですね。本当に知ってると、いろんな可能性を見るから、それでもいいかもしれないなってなるのです。
だけど幅が狭いと、それじゃだめ、これじゃだめ、ってなるんですよね。

僕はね、……この話はやっぱりしないほうがいいかな。
あのね、僕は自分で、どっちかっていうとこの質問してきた人に近い人間だったと思うんですよね。
小学校1,2年生は特に学級委員は置かない。だけど3年生になって初めて置く。
3年生の最初に選挙をやって、投票して学級委員を決める。それで僕は、3年生の1学期に、学級委員に選ばれたんですね。男1人、女1人。もう1人が、おぎはらけいこさんでした。どうしてるかな。それで学級委員やったんですけどね。

それまで学級委員を見たことない。初めてやって、それで責任感と正義感に溢れてましたから、いろんな失敗をしたんです。
先生が何かの都合でいないとき、自習になります。「学級委員がちゃんと見ててくださいね」といって先生がいなくなった。そういう時に、おしゃべりしたり、席立ったり。そういう子が多いんですよね。

しかし、僕は先生から、「教室でみんながちゃんとするように見てて下さいね」って言われたんで、困っちゃってね。「静かにして下さい」とか言っても、みんな席を離れるんですよね。好き放題。何にもいうことを聞いてくれない。
僕は苦肉の策で、「席を離れる人はげんこをします」って言って、実際にげんこをして歩いた。そうしたら静まったけど、「小野瀬に学級委員はぜったいやらせるな」って評判が悪くなった。本当に僕は正義を通したんだけど、あいつは酷いってみんながなった。

3、4年生はクラス替えがありません。4年生になると、僕を誰も学級委員にしようとはしなかったです。ああいう学級委員はこりごりだ、というわけです。
5年生になって、クラス替えをしたにも関わらず、僕はずっと学級委員に選ばれなかったし、6年生でもならなかったですね。

その後、学級委員をやってる人を見ると、ああ、割とルーズでいいんだなあと思いました。誰も、僕がやったようにやってる人いない。仮にクラスががちゃがちゃしてたとしても、そこへ先生が見に来たり通りかかったりしても、なんだこのクラスの学級委員長は何をしてるんだ、って吊るし上げられることもなかった。
僕は幸い、小学校の時にそれを痛い経験として学んだので、それ以来、人に厳しくするのはいかんな、とずっと思ってましたね。

その後、僕がPTA会長に選ばれた時はびっくりしましたね。僕でいいんですか? みんな、僕が3年生の時に何したか、知らないんですか?! って感じで驚きました。
そういう意味で、人と衝突するっていうのは、正義感が強すぎる、正義を通そうとしすぎる、自分の気持ちを通そうとしすぎるという面があるのだと思います。

無理に自分を通さない。かと言って、でたらめにやったらいいのかというとそうじゃない。人を立てる。自分が頑張らなきゃいけない時っていうのは、そんなにあるもんじゃない。自分が出なきゃならないというのは、たまーにしかないのでね、ほとんどは人を立てるでいいんです。
そういうふうに思っていると、人を嫌な気にさせないで済むかな。

 

〈質問者〉

質問2

「自分の気持ちなら言っていい」とお父さんお母さんは教えてくれます。
どれくらい言っていいのですか?
相手に言う前に、スタッフさんや、お父さんお母さんに、相手に言っていいか確認してからでないと言ってはいけないですか?

 

〈お父さん〉

答え

これも同じ人からの質問なんですけど、相手に言っていいっていうのはね、自分の気持ちは指示じゃなくて、「そんな風にされるのは私は嫌だ」とか、「私は悲しい」とか、「つらい」とか、そういう気持ちを言っていいということであって、それは了解を得なくてもいいです。

自分の気持ちでも、相手を攻撃したくなったから攻撃するとか、あんたは間違ってると思いますとか、あんたは大馬鹿者だと思います、とかそんな強い言葉は、僕ぐらいの歳になってから言ったらいいんじゃないでしょうかね。相手をこき下ろすようなことは言ってはいけません。あくまで、自分自身の気持ちだけですが、それならはっきり言っていいんです。
自分は嫌です、とかね、自分の気持ちはその場で言ってくれてかまいません。









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第275回「理解されたいという欲求が強かったこと」