質問
人と協力して何かをしようというとき、どう動くのが正しいですか?
答え
人は、2人以上いると必ず、力の関係の強弱ができます。
そこで、そういうことを分かって、協力関係を作ると良いと思う。
2人が横並びで、2人が同じくらいしゃべって、聞いて、2人が同じくらいに何かやろうと思うと、うまくいかないんですね、だいたい。
どっちかが上で、どっちかが下ってことにすればいいのです。
片方の人が方針を決めて、片方の人がメインでやるのを、もう一方の人が手伝う。
そして、あるときは逆にすればいい。
わざと、2人の関係を上下関係みたいに作ってしまう。
私は人の上になるのが嫌だ、とか、下になるのが嫌だ、と思わないこと。
そのときだけなんだから。
僕とお母さんの関係でも、あるときはお母さんが上、あるときは僕が上、というように、時々選手交代をしています。
お母さんが得意な分野の時には、お母さんが決める。僕が得意分野の時は僕が決める。
得意分野じゃなくても、たまには僕がリードしてお母さんがついてくる。
全然場違いであっても、お母さんがリードして僕がついていく、ということもある。
2人がうまくいっているときには、スムーズに私はあなたの下になりますとか、私はあなたを引っ張ります、という関係ができるんですね。
時々、喧嘩になるのは、私がリードする! と2人が言い合うときです。
こっちいくとなったら、片方がわかりましたと言えばいい。
そんな感じで、2人がいたら必ず上下関係を作ると思えばいいのです。誰かと何かをやると言うとき、どっちが上かな、とそれとなく決めるわけです。
1番簡単なのは、最初から自分がリードしていくと角が立つので、自分がそれとなく相手についていく側にまわる。
初対面なんかでも、そうするといいです。
サークルや、クラブに入ったときも同じです。私、これが得意ですから、みたいにして元気に入っていくのはだめなんですよね。
面白い例というか、忘れられない話があります。ずいぶん昔に読んだ話ですけど。
僕と同じ年格好くらいの男性が、みんなくらいの若い女性を、高級な中華料理を食べさせてあげようか、と連れて行った。
本格的なフルコースを食べさせてやろうかな、ちょっとかわいがって奮発してやろうかな、と思っていたわけです。
もちろん恋人にするのじゃないけど、たまたま女の子に本物を味わわせてあげようという親心みたいな気持ちで連れて行った。
そしたらその女の子は、大勘違いをした。
こういうときには遠慮しないで、自分の好きなメニューを言うものなんだ、と。
この男の人は、中華料理の本当のフルコースを食べさせてやろうと思っていたけれども、一応、礼儀みたいに「何か食べたいものある?」と言ったら、「はい」と言って、女の子は「餃子」とか「シューマイ」とか頼んでしまった。
「え?」っと驚いて、その年配の男性はしらけてしまった。餃子とかチャーシュー麺とか、そんな料理だったらいつでも食べられるでしょう。
たとえば、前菜だったら普通にピータンとキュウリとクラゲのから始まって、フカヒレの姿煮とか、そういうものを入れたフルコースでも頼もうかと思ったのに、いきなり餃子と言われてしらけちゃって、じゃあ、もうそれにしたら、とフルコースをやめてしまったという話なんです。
ある種の積極性は、相手の好意を踏みにじったり、ばかげた結果をもたらしてしまうというエピソードです。
2人で仕事をするときも、そういうことはあります。
ましてサークルや会社に入ったら、その会社の流儀、そのサークルの掟といったものがある。そんな場に行って積極的にでると、だいたい損をする。
ばかげた積極性だと思います。
そういうときには、あたらず障らずでいて、こいつ役に立つのかな、と思われてもいいから、周りを見て、周りを真似して、出すぎず引っ込みすぎずとやっていくのです。
しばらくして、その会社のやりかた、暗黙のルール、雰囲気、そういう物が飲み込めてきたらそれに合わせて動く。
充分に合わせて動けるようになったら、今度はリードするように動く。もちろん数週間、数か月単位の話です。そういうのが、動き方の基本だと思いますね。
この質問をした、どう協力し合って動くのが正しいですか、という人は、自分がどこまで積極的に出て相手に協力したらいいのか、自分が積極的に出る加減を分からないんですね。
ひとことで言えば、相手を補完するように動く、というのが正解でしょうね。
相手と関係が出来るようになって、相手より自分が力が上だなというのがお互いにわかってきたら、私はこっちやるから、あなたはこっちやる? というふうに相手に自分を補完するように動いてもらう。
相手が、負けん気の強い人だったら、もう相手を立てっぱなしでいいです。相手が、あまり積極性が無ければ自分が出る。
どこまでも、どっちかが上か下になります。横並びは、あまりうまくいかないです。
質問
途中質問
(中華料理なんですけど、上司の人が「何かある?」と聞いちゃったのは、なぜですか?)
答え
うーん、答える前に、ちょっと別の話を聞いてね。
この間、日本人の天才的なボクサーがタイトルマッチをしました。
ノックアウトの多いハードパンチャーです。試合の途中で右の拳を痛めちゃって、左だけしか打てなくなってしまった。でもすごく強い。
ところが、試合の途中から、痛めていたはずの右のパンチを再び出すようになった。なんでか? 相手はけっこうダメージが来ているのだけど、左だけでやってたらなかなか倒せない。
それで、強い方のボクサーは右を出すようにした。
右のパンチで相手を打つつもりはないけれども、右を出すと相手は一瞬、その右に反応するので隙ができる。そこを左で打つ。
ジャブは軽いパンチです。
思いっきり出すパンチだけでパンとやってても、なかなか当たらない。
ジャブで相手を崩しといて、強いパンチを出すわけ。
それと一緒で、「何か食べたいものある?」と聞くのはジャブ、本気じゃない。
そのときに、
「こういう高級な中華料理店にあまり来たことがないので、どんなものを頼むのがいいでしょうか?」
と言えばいいのです。
「じゃあ、僕がフルコース頼むから、食べてみて」ってなる。
そのとき、「餃子とシューマイとチャーシュー麺でお願いします」と言ったら、ジャブだけで終わって、本気のパンチが出せない。
質問
途中質問
(素直になってはいけない、馬鹿正直になってはいけない、ということですか?)
答え
いや、それは正直じゃないんだって。
何かある? って言われて、
「メニューを見ても、どういうものがいいか分からないんで、どういう物を頼んだら良いんでしょうか?」
それが正直で謙虚な姿勢です。
たとえば、僕は、子供が10いくつのとき、新宿の高層ビルの、本格的な中華料理屋に連れていったことがあります。
その時子供は、「なにこれ、お父さん、お金大丈夫?」
メニューを見て、「なにこれ、全然分かんない。お父さん分かるのこれ?」
素直に言いますよね。
そうだろ? だから連れて来たんだ。黙って見とけって感じ。
それが、20歳を過ぎていてもたぶん行ったことないだろう、と思って連れてったわけだからね。ありがたくごちそうになればいいと思うんだよ。もし行ったことがあっても、2、3回じゃ分からないよ。
この店は四川料理なのか、広東料理なのか、北京料理なのか。
先生と生徒とか、上司と部下とか、そういう関係だからね。
おじさんとどっかの娘なんだから。
素直に、こういうところでは、どういう頼み方をするのが正しいんですか、と。
それが、ラーメン十番とか行って、どういう頼み方をするのが正しいんですか、と聞いたら、「えっ」てなるけどね。
そのところ、そのところによって、自ずと頼みようが変わってくる。
いつも前に出る、出るって感じの女の人だと、そういう時に失敗してしまう。
ちょっと引くところがあっていいのです。
だから、その女の子を連れて行った人は、餃子とシューマイとチャーシュー麺と言われて、「この店に来て?」と思って、でもこんなやつだから、食わしとけ、ああ失敗した、と思いながら、自分もラーメンとチャーハンを食べる。
周りから、この人、この店に何しに来たかな、と思われる。
この人はそういう底の浅い馬鹿な女だったんだな、と思って見限られる。
かわいいところだな、とは思わない。
コースで7、8千円くらいご馳走してやろう、と思ってるのに1200円くらいで済んでしまう。せっかく連れてったという行為を踏みにじられた。
自分も、ひとりでフルコース食べたってあんまり、と思って、誰かと食べたい、かわいい娘と食べたい。喜ばせてやって、そうだろう、嬉しいな、おいしいな、楽しいなと思って食べたかったのに。
自分がリードしようと思って行ったのに、「何かある?」と言ったら、女性の方が、じゃあラーメンと餃子と、ってリードしちゃったわけです。
そういう2人の協力関係を理解できなかったんですね。
良い協力関係は、いつもリードするかリードされるかのどちらかだとしたら、いまはどちらなのかお互いにはっきり見極めることができる関係です。
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