人との距離感についての質問です。私は人と自分との間に、高い高い壁を作っていた時期と、突然、人との距離感が極端にゼロになった時期がありました。人との間に高い壁を作っていた時期は、テレビの話や共通の娯楽の話や話題などで薄っぺらく笑うだけの関係でした。人との距離がゼロになっていた時期は、その人の悲しみや傷を全部背負うような、感覚でした。
抽象的な質問になってしまうかもしれませんが、きちんとした人間関係を築いていくとき、人との距離感というのはどのような感覚が正しいのでしょうか?
【お父さんの答え】
人と人との関係は、国と国との関係みたいに思うといいでしょうね。
国と国との間には、国境がありますよね。国ごとにそれぞれの産業があったり、それぞれの生き方や暮らしがあり、言葉があるし、文化があります。
そんなふうに、人も一人ひとりの中に言葉があり、文化があり、得意なものもあれば苦手なものがあり、好き嫌いもあります。
人と人との間には、国境のように境界線があるのだろうと、目に見えなくても作らなきゃいけないと思うんです。
人は、生きるために生きているんじゃないんですよ。目的があって生きています。物を食うために生きてるんじゃなくて、何事かを為すために生きているんですよ。
そして人によってそれぞれ背負ったこの世界で為すべきことは、それぞれ違います。
自分が為すべきことをどれだけ背負っているのかっていう、その背負い方も違うわけです。背負ってないと、何かいいことがあって嬉しくなったときも、困ってしまうことがあります。私、こんなに嬉しくなって、あとで怒られるんじゃないかな、みたいな感じ方をする人は、何も背負ってないからそうなってしまいます。
人は、何かを為すという役割を、意識して背負っていくべきだと思います。何かを成すために、この世に生まれてきてるわけですからね。だから目の前に何かが起きたときの受け止め方も、その人が背負ってるものと、背負い方で全部違ってきます。
それぞれがきちんと自分が背負ってきている役割を知って、助け助けてもらうところは助けてもらい、助けるところは助ける。ただ、人はそれぞれその目標に向かって、歩いている途中であるということを踏まえておくことが大事なんです。誰も、生きている限り、途中なんです。今は一緒にいる人も、おそらくどこかで分かれ道に差し掛かったら、別の道に分かれていくことになります。だから、旅の途中で自分のボストンバッグを相手にさらけ出して、全部を見せる必要はどこにもない。
あまり近づきすぎる必要もないので、適切に距離感を保っていく。その関係の取り方というのは、私の目的地とあなたの目的地、結構、似てますね。ではタクシーに乗るとき、1人ずつ料金払うのもなんだから、2人で同じタクシーに乗り合わて行きましょうか、という感覚です。
こんなふうに、その目的地が一緒だったり、荷物が似たようなものだったら、そこまで行くときに、2人で同じものを担いでいくのも重いから、そこまでは同じものを共有て行きましょうかということもあるでしょうね。
だけど、それは仲良くするために仲良くするんじゃなくて、自分はこっち行く、この人はこっち行く、その途中まで一緒ならそこまではお互いに便宜をはかり合っていこうという、あくまで分岐点までのお互いを助けるための仲間であると思うべきです。
人は、やっぱり1人では生きていけないんです。いつも誰かから助けてもらうんですよね。いつも、ですよ。誰かから。人の知恵を借りたり、いま自分たちが耕作している田畑のほとんどは地元の人の土地を借りたものです。
高い壁を作って人と関係を取らないとなると、そういう助けてもらったり助けたりという関係を断ち切ることになりますから、生きにくくなります。
だから、人の間に壁を作ってはいけないし、友達になるために国境を取り払うみたいに自分をさらけだす必要もない。
自分の目的地がはっきりしていると、だいたいはそれを実現するためのチームができるはずなんです。ちょうどダンスを踊るときフラダンスチームに入っていたり、バンドのチームがあったりするでしょう。なのはなには野菜を作るチームもある。
人生っていつもそんなふうに、チームができるんです。子供ができると、子供を育てるなかで公園のママ友チームが出てきたりするように、自分はいつもいろんなチームに所属しながら、生きていくわけです。そのチームに入ったら、そのチームなりの関係の取り方が必ずできてくるし、新しいチームの見つけ方もできてきます。
人は生きている中で、いつも複数のチームに所属しているという見方で自分はいまどんなチームに所属しているかなと考えてみてください。全部、何かの目的があってのチーム関係ですよね。だから、目的をはっきりさせないまま、人との関係の取り方というのはないでしょうね。チームごとにお互いの関係の取り方は違ってくるはずです。
僕も考えてみれば、色々な友人がいますが、友達付き合いのための友達というのはいないですね。10代の頃からの友人は別ですが。
やらなければならないことがたくさんあり、書かなければならないものもあり、いつも何かしらやるべきことがある中での人との関係なので、人と関係をとるための関係というのは、全く要らない気がします。
やっぱり、自分がどう生きてるのか、どこに向かっているのか、そのことがすごく大事で、それを大事に思っていると、いつの間にか目的地が似ていて一緒に歩いてくれる人が出てきます。それは同性だったり、異性だったり、年上だったり、年下だったりするかもしれませんが、出てきてくれたら、分岐点が来るまでしばらく一緒に旅をする人という感覚で関係をとるのがいいのかな、そんなふうに思いますよ。
(2023年9月4日 掲載)
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