私は、動物を飼うことについて、どう思って良いのかわからないところがあります。
生き物を愛玩物にすることに罪悪感を感じたり、動物が本来持っている自立して生きていく力を奪っている、というような気持ちがして、(本当に、これで良いのだろうか)と思ってしまいます。
動物園や水族館に行くと、可愛いと思う一方で、檻に入っている動物を見て、どこか切なく感じてしまいます。
鹿を捌くお話しをきいたり、動物を食べることには抵抗を感じないのですが、“飼う”ということについて、どう思って良いかわからないです。
動物を飼うこと、可愛がることについて、どう感じて、どう思うことが適切ですか。
そうだね。この人はね――『高安犬物語』(戸川幸夫 著)というのがそこの本棚に無いかな。それを読んでみてください。動物を飼う、犬を飼う楽しさとか、喜びというのが、わかります。
高いレベルの、愛玩動物を飼う喜びと、低いレベルの喜びというのがあると思うんですよ。やっぱり高いレベルでわからないとしょうがないですよ。
世の中のペットの中には本当にね、素晴らしい、ものがあります。
渋谷の「忠犬ハチ公」って聞いたことあります? 銅像がありますね。あれね、ちょっとあれは微妙ですよ。
忠犬ハチ公、主人が亡くなる前に立てたという話もありますね。
何かと言うと、主人の帰りを待って渋谷駅まで迎えに来ている犬が有名になった。ちらっと銅像を立てようかという話があった。すると何ということか、そのための資金集めがばんばん行なわれるようになった。集まるようになった。それを集めたのは誰かと言うと、小さい詐欺師たちなんですよね。「ハチ公の銅像を立てるために募金しています」と言って、集まったお金を全部自分の小遣いにしちゃっているグループが、たくさん出てきちゃったんですね。
それで慌てて、そういうグループを無くすためにどうしたらいいか。次々出てきちゃうからいけない。そういうグループを無くさせるには、銅像をパンと立てちゃう。もう立ってるから、今頃「資金集め」なんておかしいでしょ。
あのハチ公が素晴らしい犬かどうかというのはちょっと眉唾です。
そうじゃあなくて、『高安犬物語』読んでみてください。
動物を飼うということでいうと、僕は小鳥をたくさん、小さいときから飼っていました。ウズラも、チャボも、アヒルも飼いました。ニワトリも。
小鳥屋さんで売っている鳥の、半分くらいは飼ったかもしれません。ジュウシマツ、セキセイインコ、それにメジロ、ウグイス、モズ、スズメといった野鳥も飼いました。
飼ってないのはハトと……。
でもお父さん、ハトは、ベランダに巣を作って子供を孵してたよ。
そうですね。ベランダで飼ってました。子供産みました。……でもそれは僕のハトじゃない。餌やってませんでした。だから飼ってたとは言えないよね。
小鳥、可愛いですよね。何が可愛いんだろうね……。まあちょっと、いいです。
動物を飼うと、可愛い、という感情が育つでしょうね。
ぜひ、高安犬物語、この小説読んでください。
他に動物を飼う面白さがわかる小説は、何があるかな。いくつかあります。ちょっと今、『高安犬物語』しか思い出せませんけど、いくつか、ペットについて書かれた名作と言われる小説があります。そこで、動物を飼う喜びというのはすごくわかるでしょうね。
ぜひ、知って欲しい事があります。
子供の頃、メダカを飼っていたんです。ちょうど春にメスがタマゴを産むシーズンで、ずっと水槽のメダカを見ていたんです。
そしたら、産卵を迎えたメスにオスが寄り添いました。すると、息んでいるメスをかばうように横についたオスの背びれと尻びれが、メスを抱くように横に曲がったのです。
オスのメダカの背びれが90度、横に曲がってメスを抱くようにしたのです。尻びれも曲がって下から支えるように抱くのです。まさに抱擁です。そしてメスが卵を産みました。大感動、です。
まさか、メダカが抱擁をするなんて、初めて見たし、聞いたこともなかったし、うわーってみんな、見て、見て、見て、見て、たいへんだーっいうくらい、感動したんですよ。
そんな小さな生命の感動を、すぐそばでたくさん見せてもらえる、それが動物を飼う歓びの1つでしょうね。
猫も、僕は好きですよ。
猫可愛がりみたいなことはしませんけど、猫って、人の気持ちを汲むんですよ。
だから、もし悲しい気持ちで僕がすごくお母さんに叱られた、みたいなことで階段に座ってちょぼんと頭を垂れていたら、猫は絶対、横に来てそっと座ってくれますよ。黙って、横にじいっとして頭を垂れてね。必ずそうします。悲しみを共感してくれるんです。
余計なことは言いません。ただ、じっと同じ悲しさで寄り添ってくれる。それが猫です。
みんなも悲しいことがあったら、靴箱辺りで座ってみてください。
猫が寄ってきて、スッと、こうやって(頭を垂れて)くれます。猫のそういうところは好きですね。でも、猫アレルギーの人はやらないほうがいいですね。この人は猫アレルギーがあるって、猫のほうではわかってくれませんから。
(2018年6月22日掲載)
Copyright © なのはなファミリー 2025 | WordPress Theme by MH Themes