第２２５回「恥ずかしさにどう対処するか」

【質問】
　私は今、２０年間、親の機嫌がいいように振る舞うことだけに全力を尽くしてしまったということに気づいてから、すごく自分が未熟だなというふうに痛感しています。意志もないし社会性もない。普通の世間で、みんなが気持ちよく思う行動と、父親が気持ちよく思う行動がかけ離れていたりすると、私は、どう振る舞っていいかわからず育ってきたんだ、ということを痛感しました。
　最近、恥ずかしい気持ちでいっぱいになってしまいます。自分のやってきたことに対して恥ずかしく思う気持ちや、今、自分はどう振る舞うのが正しいのか、わからないことが恥ずかしい気持ちです。この恥ずかしい気持ちをどうやって処理したらいいですか。爆発しそうなほど恥ずかしいのです。

【お父さんの答え】
お父さん：
　なるほど、わかればわかるほど、それは恥ずかしいでしょうね。わからないときには恥ずかしくもなんともないんだけどね。
　どうしたらいいのか。
　……あのね、そういう恥ずかしさから逃げたいでしょ。いずれにしても、逃げたいような気持ちのときって、恥ずかしさから逃げようとするともっと恥ずかしくなっていく。
　犬に例えるといい。最近は鎖の外れている犬はいない。交通事故で轢かれるから。僕が子供の頃は野良犬がいっぱいいて、噛みつかれる子供も何人もいた。夕方、一人で歩いていると、たちの悪い犬はワンワンって追いかけてくるわけです。子供の足で逃げようとすると必ず追いつかれて噛みつかれちゃう。だから、追いかけてきたら、まず逃げたい気持ちにブレーキをかけて、すっと、とりあえず、その犬に向かって走っていく。すると犬は、ふっと踵を返して向こうへ逃げていく。それと同じだと思うんだよね。恥ずかしさに立ち向かう。それにはどうしたらいいかといったら、この恥ずかしい状況をメモして書き留めて、自分の恥ずかしいことすべてを、明らかにして書き留める。自分でその恥ずかしさを思い知ろうとしたらいい。
　何がどう恥ずかしいのか。恥ずかしさから目を背けない、という気持ちになっていくと割と冷静に受け止められるかな、と思います。

質問者：
　今のこともあるんですけど、過去のこともふとした時に思い出してすごく恥ずかしくなるんですけど、それも書き留めておいたほうがいい？

お父さん：
　そういうこと。自分が困ったり悩んだりしているときは、だいたいが曖昧なまま困ったり悩んだりしている。箇条書きにした途端、それだけで悩みは８割方、減ります。
　書き留めていないとまた、ふっと、何回でも思い出して嫌な感じがぶり返す。書き留めたからもう思い出さなくても大丈夫、っていう感じ。書き留めてある、忘れていないよ、っていうふうに安心できます。
　実際にその書き留めたものをどうするかはともかくとして、恥ずかしいことの全てがそこに書かれてあると思えば、それを見れば安心じゃない？　悩まなくて済みます。恥ずかしいけど、やっぱり。
　少なくとも無駄な空回りからは避けられるという感じがする。書き留めて、それを明らかにすることでね。
　それでかなり、精神的な消耗は少なくできるんじゃないかな。