質問
お父さんがこれまでで一番感動した景色、美しい国はどこですか。
答え
美しい国と僕が思ったのは、カナダです。
一番、感動した景色はアメリカですね。
なんていうのかな、感動だとか、美しいとか、好きとか、そういうプラスの感情は、案外に自分の知っているものしか好きにならないものなんです。
味もそうで、共感しやすいと美味しいと感じます。食べたことのないものは、美味しいと感じられない。
今日の朝食で、飲み物が出ましたね。
(ああ、嬉しいな、また黒豆オレだ)
と思って飲んだら、味が薄い。まずい。
それもそのはず、あれはミルク紅茶だったんだよね。改めて紅茶なんだ、と思いなおして飲むと、ああ、こういうもんかな、美味しいと思う。
そういうふうに、予想が外れると、まずいと思うんですね。
それから、どれくらいの期待値があるかとか、どんなふうに現実との出会いがあるかで、感動は変わってきます。
アメリカは広いところです。アメリカを車で走ってみると、本当に広いんですよね。
その広さに、感動します。うわー、いいなーって、心が開放されていきます。
景色にとりとめがないくらいに遠くまで見渡せる。あまりにスケールが大きくて、何でも許されてしまうような、自分が肯定されているような、何かに出会えるような、そんな感じを受けます。
それと、カナディアンロッキーは美しいですね。
こってりとした絵の具が溜まったコバルトブルー、コバルトグリーンの湖が、森の中にたくさん点在していて、白い岩肌とか雪、そして針葉樹の深緑、すごく鮮やかな色が360度、広がっている。とってつけたような美しさですけど。
そういう意味じゃ、部分的に美しい国や景色はいっぱいありますよ。
スペインにフランスから電車で行った。明け方、紫色に夜が明けていく。まだ暗い中で、線路工夫が線路のすぐそばで大きなたき火をしていて、鮮やかな炎が人の背丈よりも高く上がっている。その炎が、赤と紫と黄色で、夜の明けかかった紫の空とあいまって、ゴッホの絵のような深い色に満ちている密度の濃い時間を目の当たりにした。
夜が明けると、窓の外は一面の緑の丘で、空の色が、どんどん変わっていく。
丘の中腹に真っ白の壁の農家。その鮮やかさ。
電車の車窓から見たスペインの景色も忘れ難いですね。
ヨーロッパに行くときに、どこに行くか、まったく計画を決めていないまま飛行機に乗りました。
とりあえず、パリのオルリー空港を起点に1か月くらい旅行しようと思っていた。その日、泊まるホテルも決まっていない。計画を立てる暇がなかったので、ヨーロッパのガイドブックを飛行機の中に持ち込んで、飛行機の中でめくっていた。
すると隣に座っていたおじさんが画家で、まだ決めてないなら、絶対にスペインに行ったほうがいい、とアドバイスしてくれました。その人はフランスにも滞在するけど、スペインまで絵を描きにいくと言っていました。
言われた通り、スペインは空気が違うんですね、透明感が高くて、いちいち家の白壁が抜けるような白さ、地中海沿岸の並び方も、色の鮮やかさも桁外れでしたね。
どっちかっていうと、パリのあたりは重い。石畳で色が重くて。車の色、肌色とか黄土色、茶色と中間色が多かった。まず日本だったら使わないだろうなっていう中間色の車ばかりだった。
それがスペインに行くと、色がまぶしくなって、景色がいちいち鮮烈。
スペインの人柄はすごくいい。パリの人柄が良いって思ったことはあまりないです。
スペインはどこへ行っても、みんな人なつっこい。
スペイン人は、すぐに仲良くなる。居酒屋で見ず知らずの人と仲良くなって、朝4時まで飲みに連れて歩かれた。看板もない、普通の家みたいなところで、ドアを開くと中は飲み屋というところがけっこうある。
その間、全部おごってくれる、初対面の東洋人にですよ。何て気前のいい人なんだろう。そういうことが何回かありました。いま考えると何語であんなに意気投合したのだろうかと不思議ですけど。あぁ、スペイン好きですね。
でも、スペインの大衆食堂のまずさは、こたえられません。喉を通りません。パン、しょっぱいんですよね。街角にでている、肉あるでしょ。ぐるぐるまわって、油がしたたり落ちてるやつ。これはしょっぱいだけで、うまくなかったですね。今はおいくなってるかもしれませんが。
その点、フランスの街中で売っている、ジャンボンとか、フランスパンにハムを挟んだやつは、美味しい。隣り合っている国なのに、フランスは美味しい、スペインだと、だいたいまずい。
不思議ですね。景色だけはいいです。
旅行は年齢によっても印象は違います。
若いときにした旅行は、いちいち、心に刻まれます。
僕は国鉄職員の息子だったので、ときどき、高校のころから東京に1人で行っていました。2時間くらいかかる。106キロですから、何で2時間かかるんだよって思うんですけど、かかります。
それで、東京に行くたびにドラマがあるんですよね。帰りに必ず車中でガールフレンドができるんです。今、そんなことは、まったくないですよ。電車に6時間のっても、ガールフレンドはできそうにない。
あ、お母さんと一緒だからいいのか。
とにかく、旅行に出たら必ず友達ができる。2時間、106キロの間にガールフレンドがなぜかできる。ガールフレンドができるような旅行じゃないですけど。必ず。僕、人を求めていたんでしょうかね。いや、そんなことない。もともと人嫌いですからね。でも、なぜか出会って、仲良くなる。
みんなもチャンスがあったら、どんどん旅行するといいです。
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