私がいま働いている縫製業界のことでの質問です。国内の縫製業で、黒字でやっていけるところあるのかなと疑問に思っています。社長に聞いてみたら、あんまりないということでした。黒字でやっていけてるところは、ごく少数で自社ブランドで製造から販売までやっている会社のようです。
今は大手になっているワークマンは海外で作ってるけど、海外の中でも農閑期を狙って作って納品しているので工賃が安く抑えられているとも聞きました。
いまOEMという業態でなんとかやっている日本の会社も、数年後にはすべて淘汰されるんじゃないか、やがては衣料品の価格も上がっていくんじゃないかと思いますが、お父さんはどう思いますか。
【お父さんの答え】
縫製業が日本でほとんど成り立たないというのは事実だと思います。なぜそうなのかというと、世界を見渡すと、人件費の安い国があって、そういうふうに労賃の差とかモノの価格差があれば、そちらに仕事が流れていく、というのは大航海時代から続いていることです。
しかし、こういう地域差がどんどん埋まっていけば、時間がどれくらいかかるかは別として、いずれ全体が均衡し、外国だから安いというのはなくなります。
そうすると、究極の形としては、食料安全保障などが議論されたり、あるいはサプライチェーンは地政学的なリスクを避けて作るべきだと議論されているように、すべてが自国の中で生産、消費される形になる方向に行く、と考えるのが自然です。
しかし、あまりにも生産拠点の海外移設が進んでしまうと、やがて自国に生産を戻そうとなったとき、生産ノウハウが失われてしまい、やろうにもできなくなるというリスクがあります。
そういう意味でも、国内に全ての産業の生産設備や生産技術はある程度、残しておくべきだと考えます。
ただ、人件費が高いので、商品が高くなれば赤字続きで残そうにも残れない、という話しになると思うのですが、それは「生産から販売まで」という体制を作るということで、凌げるかと思います。すでに農業の6次産業化が生き残る道だと言われて久しいです。農産物を作るのは1次、加工するのが2次、販売するのが3次で、合わせて6次産業にしていけば、農業が成立する、という意味です。
それと同様に、衣料品などの工場生産品も、原料の仕入れ、デザイン開発・縫製加工、販売まで、1社で完結すれば、利益を出していけるはずです。また、いまはネットや流通等が進化して、それが実現しやすくなっています。
経済が発展して先進国になるほど、技術立国で生産は途上国に任せる、といっていたのは過去の話で、開発から生産、さらに販売まで自国に収め、自社で完結させるというふうに、あらゆる産業でなっていくのではないかと思います。もっとも、それがどれくらい先になるのか、ということに関しては議論のあるところでしょうね。
(2023年9月10日 掲載)
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