第58回「甘いと甘え」


〈質問者〉

質問

 「自分に甘い」と「甘えが強い」は同じ意味ですか? 違う意味ですか?
 私は自分に甘すぎているから、いつまでもしっかりしないのですか?

 

〈お父さん〉

答え

 あの、これの意味の違いを考えて、どうなるのかな。
 違っても同じでもいいような気がしますけどね。
 自分に甘い、っていうのは、1人で完結してますよね。違いをあえて言うんだったらね。
 これを今日やろうって決めたのに、夜になってきて、ああめんどくさい、やらないで寝ちゃおうっていうのは……、自分でやることを決めたのにやらないで寝るというのは、自分に甘いよね。
 これだけ仕事をしようとか、今日は5キロ走ろうとか予定してたのに、もう走らなくていいやっていうのは自分に甘い。

 ところが甘えが強いっていうほうは、これは誰かに、人に甘える。甘える対象があるということで、自分の中で完結してない言い方だなあと思います。
 自分に対する甘えが強いっていう言い方はしないですね。
 僕に対する甘えが強かったり、お母さんに対する甘えが強かったり。誰かこれやって、と人に向かって甘えて行く。
 お母さんは甘えが強くないから、(腕を怪我していても)「お父さん、このビンのふた開けて」って言わないわけだね。
 
 そういう、甘える対象がほかにあって、他の対象に助けを求める。気持ちを逃がす。あるいは許しを請う。
 そういうことが、甘えが強いということでね。自分に甘いというのとはちょっと違うんじゃないのかなという気がしますね。
 
 じゃあ、自分に甘い人と甘えが強い人とでは、どっちが悪いかというと、僕は甘えが強いほうが悪いと思いますね。
 自分に甘いのは、多少の甘さはいいと思うのです。誰にも迷惑かけないで自分だけで完結するのでね。
 甘えが強い人っていうのはね、人に迷惑をかけるんですよね。

 これね、今、他の人に甘えるって言いましたけどね。
 状況に甘えるなんてこともありますね。
 甘えが強い人は、「私これできません」みたいなね。私には無理でーすみたいなね。これは甘えが強いね。「私にはできません」とか、「やだー」とか、そういう空気をまき散らす。これは他の人のやる気を削ぎますよね。自分に甘い人は、いくらひそかに自分にどんどん甘くして全部やらないとしても、人にあまり迷惑かけないけどね。
 
 甘えが強い人は、甘える対象の人に迷惑をかけるばかりじゃなくて、甘々の、周りの状況に甘える空気を出し続けると、根っこに同じものを持った人が、あ、私もそうしようかな、私も私もって引っ張られる。よその人を引っ張って、甘えの集団を作りかねないのでね。甘えの強い人っていうのは迷惑かなと思います。

 でね、次の質問が甘えに関してで。
「私は自分に甘すぎているから、いつまでもしっかりしないのですか」
 っていう質問。
 これね、反対なんですね、この人に限って言えば。
 ほとんどの場合、みんなを見るとね、いつまでもちゃんとしっかりしない人というのは、自分に甘すぎる人じゃないんですね。反対に、自分にからすぎるんですね。点数が。
 
 自分に甘すぎる人っていうのは意外にね、崩れないんです。
 自分に甘いからね。何かができなくても、自分を許しちゃう。いいんじゃないの? ってね。何かできると、「やったね、自分」みたいな。可愛くないね。「すごいね、自分」言ってられないですけどね。
 そういう奴って崩れないんですよ。
 
 だからね。自分に甘すぎる人っていうのはね。頑張ったら頑張ったで有頂天になっちゃうしね。
「できないなら仕方ないよ、頑張ったね自分」。そんな自分を励ましている人の心の声を聞いたら、うるせえこのやろうって思っちゃうけど、でもいつまでもしっかりしない人は、「私はだめだ。こんなんじゃだめだ」いつまでも攻撃しちゃっていることが多い。
 ああ、もう寝込もう……。こんなんじゃだめだ。こんなんじゃ許されるはずがない。みんなに迷惑かけてる。嫌われてる。こういう人間が許されるはずがない。死刑! じゃないけど、寝ろ! みんなの前に顔出すな! って自分に言って、しっかりしない。
 ちゃんとしない。できなくなっちゃう。
 自分に厳しすぎると思うんですよね。

 僕、自分で考えてもね、なんかね、前はね、ものすごく自分に厳しかったなあっていうふうに思うんですよね。
 そういうときにはね、けっこう大変なんですよね。
 自分に、どんどん甘くなってから、自分をどんどん許すようになってからね、どんどん楽になっていって、結果的にね、それが、いい結果を残すようになってるとかね。
 
 あの……例えば今、なのはなファミリーやってて、僕が「もうダメだ、もうなのはなファミリーに顔を出したくない。なのはなファミリー嫌だ、行きたくない」と思って、タイムとか言って、やめるって言ったら、回らなくなる。代わりの人は、今はいないでしょ? 当面いないのでね。
 だから、絶対に自分に向けて駄目出しをしないのです。
 
 自分で、もう、ああ失敗したなあ……これまずいな、ってことが仮にあったとしても、大幅に全部許してね。いいよいいよって。
 その代わり、前向きさを失わない、やる気を無くさない。 
 最低限のやる気は持ち続ける。
 そういう意味で、逃げ隠れできないのでね。かなり、いろんなことで自分を常に許すし、甘くするしっていう感じはしますよね。してますよね。

 考えてみるとね。お母さんなんかね、僕はずいぶん責められましたね。なのはなファミリー、もういやだ。キリがない。エンドレスで次から次に新しい人が来て、新しい人は必ずと言っていいくらい、夜も眠らせてくれないほどごねまくってね。
 それで、四苦八苦してね、ようやく元気になってね、やあ助けになるなと思った頃に卒業していく。次々ひどい人ばかり来て、もうエンドレスだ! もういやだって。 
 
 それで、その頃なんか、最初はご飯を作ってましたからね。お父さんとお母さんでね。朝も、昼も、晩も。洗い物をしてましたからね。朝、昼、晩と。
 年中、洗い物とかご飯作るのとか、家事に追われちゃうんだよね。
 それで、最初の頃なんかね。ちょっとやる気出していつでも話すとなると、夜中の1時、2時がふつうになっちゃったからね。これ、もうだめだな、回らないなと思って。
 それがいつの間にかね……そういうことを2、3年続けましたけどね。だんだん、いろんな状況が変わってきてね。
 楽になってきた。
 だけどね、なかなかね、楽になる自分というのを許せなくてね。

 

〈お母さん〉

 ふふふ。

 

〈お父さん〉

 あのね、うんと。
 最初は3年数か月、岩見田に寝泊まりしててね。それから家で寝るようになったけど、朝7時に岩見田に行って朝食を食べるようにしたんです。
 3食、みんなとね。7時に行ってね。
 それで、そのときにね。「よく続くね……よく行く気するね」って。
 行く気するかどうかわからないけどね、毎朝7時に行って、そのとき7時半朝食で。
 
 あの、それでね、いやもう、毎食は行かなくていいことにしようっていうふうに自分で思えるようになるまで、すごく時間かかりましたね。だけどもう、それよりもね、もっとね、次の大事なことも考えなきゃならないし、何かに追われることばっかりが、いいことじゃないんだと。
 あの……自分が常に追われて、常に睡眠不足で、常にイライラカリカリして限界で生きてることが善ではない、と思うようになるのに、やっぱり時間かかりますよね。
 
 だけど、なんかかんかって人に任せることができるようになり。
 人に任せると、これまた大変なんだ。だいたい失敗するんだよね。僕以上に。許しがたい失敗を。
 それも、でもだんだん、自分だって同じような失敗するよなと思うようになって。
 自分を許し、人を許しってなってくると、適度な自分の許し方、適度な頑張り方、適度な人の許し方、適度な人への励まし方っていうのがね、だんだんわかってくる。っていうことなんじゃないかと思うんですよね。

 この、だいたいね、甘えてる人ね。甘い人っていうのは、「甘いってどういうことですか」って聞いてこないんだね。既に甘いから、そんなことは考えないでおこうって流しておく。
 自分に厳しいからね、自分は甘いんじゃないか、甘いんじゃないかって聞いてくるんですよね。
 自分に甘いなっていう人はね。
 
 ……ちなみに聞いてみようか。2択。単純にね、自分に甘いと思うかね、私は自分に厳しいと思うか。2択、どっちかに手を挙げる。
 じゃあ……目をつぶって、頭の上にグーを乗せて。自分に甘いと思う人は人差し指を挙げてください。それで次におろしてください。自分に厳しいと思う人、指挙げてください。
 うーん……。
 はいはい。
 自分に厳しいね。はい、おろしてください。オッケーです。
 なるほどね。
 うんうん。あの、自分に甘いっていう人がね、9割くらい?

 

〈お母さん〉

 うん。

 

〈お父さん〉

 9割くらいですね。自分に厳しいっていう人が1割くらい。
 でね、今パッと見た感じね、ちょっと意外だったのはね、割と正しく上げてるなっていうのが僕の直感。
 というのはね。自分に厳しいっていう人、もっと多いかなあと思ったんです。
 何人か、自分に厳しいっていう人いましたけど、正しく自分に厳しさを持ってる。
 
 でね、中にね、自分にものすごく甘い人が、自分に厳しいって挙げることが結構あるんだけど、意外とみんな客観的に自分を見てるなと。
 でね、自分に厳しいって挙げた人は、だいたいそうだろうと思います。
 で、甘いって挙げた人はね、そうでもないです。
 だいたいね、自分に甘いっていう人は、もっと頑張らなければいけないっていう思いを常に持ってる人なんですね。
 だから、自分に甘いって挙げた人のほとんどは、けっこう頑張ってる人だと思いますね。
 意外と、ほんとに甘い人は、自分に厳しいって挙げますね。だけど今、自分に厳しいって言った人は、ほんとに厳しいかなと思いますね。
 自分に甘いんじゃないかって思いを、結構強く持ってる感じがしますね。

 

〈お母さん〉

 ちなみに。

 

〈お父さん〉

 僕?
 僕は……自分に甘いですよ。かなり甘くなりましたね。喜んで甘くしてます。でも僕は、自分に厳しく生きてきたなという感じがしますね、かなり長いこと。
 でもみんなを見てて、自分に厳しすぎない生き方を……
 あ、お母さんと暮らしてからだね。お母さんと暮らしてから、いいかなあっていうふうなね、感じを少しずつ、覚えてきましたね。
 
 あの、変な話だけど、僕はあんまり視野が広くないんです。すごく視野が狭くて、一つのことで頭いっぱいになって他はあまり考えたくないタイプです。
 今でもね、後悔してる取材が一つありますね。大阪で大阪ガスの幹部に会って1人インタビューして、そのまま新幹線に乗って東京に帰ったことありますね。たった1時間のインタビューのために大阪まで来てね。
 そのとき、精算したときね、月刊誌の編集者にね「他に、遊びでもどこか寄ればよかったんじゃないの」って。
 他の仕事があって帰らないといけなかった。というのもあるけど、ほんっとに僕は視野が狭かった。
 
 お母さんはいろんなことにすごく興味がわく人でね、お母さんに広げてもらっている。自分に厳しい人は視野が狭くなりますね。自分に甘い人は何にでも興味をいっぱい持つ。
 僕もいろいろ手を出してきたほうだけども、そういう中でも視野が狭い。

 

〈お母さん〉

 うん……でも、いまお父さんの話聞いていて、みんなの中で、頭ぐちゃぐちゃになってると思うけど。

 

あゆ:眉間にしわが。

 

〈お母さん〉

 何を言われたかわからないんじゃない?

 

あゆ:何を言われたか……。

 

〈お父さん〉

 そうだね、自分の話を絡めてするからだよね。今日は話にまとまりがないね。
 まあ全体的にね、自分を、責めたり自己否定をしたり、被害感情があったりね。被害感情まで行かなくてもね、みんなは自分のことをよく思ってないんじゃないかとか、そういう感情。
 そういうことと、自分を褒めすぎて自惚れでもいいから自信家になることと、どっちが良い人生を送れるだろうかと。
 
 自己否定して自分に厳しくするのと、自分を褒めて自己評価を高くするのと。
 自分を褒めて自己評価を高くする、こっちが絶対得なのですよ、と言いたいわけです。
 
 そういう意味では、「自分に厳しく生きるのと、自分に甘く生きるのと、どっちが得ですか」って言ったら、特にみんなに向かっては、自分に甘く生きるほうが得だ、と言い切れるくらい。 
 みんなは自分に厳しくしがちなので。
 自分を褒めながら行く。
 よく子供はね、褒めながら育てる、否定しない、ほめて伸ばすっていうね。
 自分も育てるつもりで、褒めて育てる。そういう方向で考えたらどうかなと思いますね。

 意外にね、こういう、自分は甘いですかどうですかっていう場合にはね、人の目が気になるんだよね。
 人の評価が。
 僕の評価、お母さんの評価がすごく気になるんだよね。
 そのときね、私はお父さんお母さんからかなり高い評価をもらっている、という前提でやっている人と、自分は怒られるんじゃないか、いつ怒られるんじゃないか、もうお父さんお母さん怒ってるんじゃないかっていう人。2通りいるとしたら、高い評価をもらっていると信じきってしまったほうがいいです。
 僕は、例え間違ったことやってても、絶対お父さんお母さんは怒るはずがない、って信じて堂々とやってたら、これは怒りにくいです。
 だけど、泣きっ面に蜂じゃないけど、もう僕に呆れられてるんじゃないかって思いながら、叱られることを前提でやってる人を見ると、コラッて言いたくなりますね。
 怒られることを期待してるみたいな。
 だから、どっちかと言ったら、絶対怒られるはずがない、きっと認めてもらってるって、そういう気持ちでやってもらいたいなと思いますね。









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