第55回「未完成」


〈質問者〉

質問

未完成の自分を、どう許していいのかわかりません。
自分を見ないようにと思うのですが、自分のできていないところやだめなところが見えるとそれが頭から離れなくて、自分に幻滅した状態から抜けることができません。すぐにやる気が失せてしまって、前向きな気持ちが長続きしません。
できていないところやだめなところを許していいとは思わないけれど、今の未完成な自分をどう考えたらいいですか。
完成することはなくて、常に未完成なのだとしたら、いつの時点でも許していい自分はあるのですか。

 

〈お父さん〉

答え

なのはなファミリーでメジャーデビューができたらいいなと思って、オリジナル曲の作詞をしたんです。そのうちの1つのタイトルが『未完成』なんです。
何で書いたかというと、未完成なんですよ、ここにいる人は全員、未完成。
それで、例えば完成した人って、恋をしないんですよね。恋愛ができない。
未完成な人が、誰かに、未完成な部分を埋めてもらって、それで人として完成形になるっていう、そういうイメージですかね。

抜け落ちているところは、自分の弱点にもなってる。そういうようなところを、誰か異性が来てぽっと埋めてくれたら、その人と一緒に生きていこう、って思う。その人と一緒に人生を完成させていこうと思うので、その、欠落感を抱えたまま生きていくっていうことが、大切な人との出会いの準備として大事なんじゃないのかな、っていう気がするんですね。

欠落感がない人は、焼酎のお湯割りを飲んで、小学校の同級生と、60過ぎてもまだ語り明かしてる。同じ話を。60歳にして80年語りあう。そんな感じですよね。ぜんぜん欠落してないのでね、50年前と同じ話でも30年前と同じ話でも、いいんですよね。
だから、未完成っていうのは、より良く生きようと思う人には、必ずついて回る。未完成つまり欠落感がある。自分が欠落したものがあるっていうことだと思うんですよね。

僕も、その欠落感は抱えてますよね。それだから僕、最近、机の上を綺麗にしましたね。人生で3回目くらい。小学校に入学した日とね、あともう1回くらいある気がします。あと、今日。
なんか人生が変わって欲しいなっていう思いがね、まだあるんですよね。ちゃんとしたいな。ちゃんとした人間になりたいなっていうね。
そういう、未完成な自分を、いい加減僕も慣れ過ぎちゃって、自分の駄目さ加減にいい加減呆れ果ててますけどね。

ただ、なんつうんだろうな。みんなくらいの歳の時の未完成の欠落感っていうのはね、ものすごいきつかったですよね。だって、自分がちゃんとした人間じゃないんじゃないかって疑いますからね。なんかものすごい、人間として欠陥人間であって、自分がちゃんとした普通の人になれるんだろうかっていう疑問が出てきてしまう。

よく言うけど妖怪人間ベムベラベロじゃないけどね、早く普通の人間になりたいという気持ちになる。欠落してるものが多すぎて、普通じゃないから、早くフツウになりたいと切実に願うわけです。その普通じゃない感じっていうのは、小学生の時からずーっとありましたよね。

大洗弁で生きてきて、水戸市の郊外に親が引っ越して、そこで大洗弁が通じないっていうかね、異国の言葉みたいになってる。水戸市内に越境入学した時点でね、二重に自分だけがその地域で別の人なんですよね。バス通学して市内の小学校に通ってる。だから、自分はここにいるべき人間ではないという後ろめたさがあり、なおかつ言葉が違う。
二重の意味で、早く普通の人間になりたいって思いました。
ほどもなく学区内に引っ越すので、越境入学は1年半くらいで解消される。

だけど、なんかこう、自分はここにいるべきじゃないっていう感覚っていうのは、その後小学校6年生くらいまで続いて、その後地元の中学に通えば地元の人間になれたかもしれないんですけど、また違う私立中学に入ってしまった。
そういう経験が、自分を他と違うって思わせてるのかなと思ったんですけどね。

そうじゃなくて、心の傷があるために他に気持ちを使いすぎてしまって、自分だけ浮いてしまう。それは傷ついた子には普遍的なものなんだな、っていうのが後で分かるんですけどね。
そういう意味で自分だけは他の人と別で、未完成だって、やっぱりずっと思ってましたね。

それでいて僕は、小学生だか中学生のころ、蛙の卵集めたりしていました。蛙の卵の観察が面白かったのでね。みんなはそういうことしない。
蛙の卵の2細胞期に、細い糸でその細胞分裂した分かれ目の所を縛っていくんですね。少しずつ縛っていくと、最初は1つの卵だったのが、区切れ目で細胞分裂できなくなっていくので、やむなく左右でそれぞれ細胞分裂すると、人工的に、双子のオタマジャクシを作れるんですね。そういうことをやって、遊んでたのでね。まあまあ、おたくっぽかったんでしょうね。

そういえば。今日ね、遊びに来たひなのの友達が帰るころ雨になったのでトラックで送って行きました。そのトラックの中で、友達が言うんです。

「そういえばひなのちゃん、何になるのかなあ。アルトサックス奏者かな。ダンサーかな。大きくなったら何になるんだろう」
「え、だってみんなももうそんなの決めちゃうの」
と僕が聞くと、
「そうですよ。中学2年生で志望出さないと、それによって高校違ってくるんですから」
「ああ、そう……」
「ひなのちゃん何になるのかな」
「今、決めなくて良いんじゃないの」
「駄目ですよ。手遅れになりますよ」
「わかりました」

みたいなやりとりがありました。
そういうのがね。僕は、なんていうのか、早く決めたほうがいいというのは分かるんだけど、僕が親の立場からいうと、ひなのはこうなったらいいかなっていうのはいくつかあるけども、今それを言って、お前こうなれよってプレッシャーかけたり、具体的に目標を掲げすぎるのは、あまりにも先が長すぎる。遠すぎるよね。それを目標に頑張るには、道のりが遠すぎるんじゃないのかなあって、どうしても思っちゃうんだよね。

将来何々になる、って決めてその職業につくために中学1年生で頑張り、中学2年生で頑張り、中学3年生で頑張り、高校1年生で頑張り、高校2年生で頑張り、高校3年生で頑張り。こんなに頑張らなくちゃいけない……。さらに大学行くなり、専門学校行くなりしてから、ようやく目標の職業に就く。
そこまで同じ気持ちで行くって、よっぽどじゃないかな。
それよりも、どんな職業に就くかはひとまず置いといて、今、中学1年生を楽しみ、中学2年生を楽しみ、中学3年生を楽しみで良いんじゃないのっていう気持ちが、僕はまだ、強いですよね。

勉強することをゲームのように楽しみ、クラブ活動も楽しみ、運動して身体を作ることも楽しみ、というのでいいと思う。
いま生きる事をしみじみ楽しめない人が、良い仕事をできるだろうか。12,3歳で、22,3歳のことを、10年先のことをイメージして生きる。アンビリーバブルですね。それは、手を打ったほうが良いのかも知れないけど……。

僕が中学のときね、あるいは高校のときね、「勉強は何のためにするんですか」って大人に聞いて、それをちゃんと答えられた大人は、いなかったですね。
勉強は、より自由になるために僕はすると思ってます。自分が自由になるために、いろんな勉強して、いろんな知識を持っていると、何か自分が、さあこれからこの場面でどうしようってなったとき、幅広い視野があると選択肢が増えるんです。ものを知らないと選択肢がないんです。どうして良いか分からない。選択肢が1つ、もしくはゼロなんです。勉強すればする程、選択肢が増えてその場にあった選択ができる。
そのために勉強するんです。究極の所、誰も。

僕は今でも、だから勉強してます。
僕は取材で、何か相手を取材するときは、その関係の本を10冊くらい読みます。脳の仕組みを書いたときは200冊読みました。脳の本をね。それは、自分が幅広い知識、これだけの知識を持って、これっぱかりのことを書く。これを知った上でこれを書く。そのために勉強するんですね。

僕は、小学校、中学校では勉強したことない。勉強するふりはしてましたけど。社会人になってからのほうがよっぽど勉強しました。そういうもんだと思いますね。
そういう意味で、なにが完成っていう……自分の理想形には、かなり遠いと思いますよ。誰も、特に傷ついた子は欠落感があるので中々埋められない。だけど上手な未完成の作りかたっていうのはあるでしょうね。上手な欠落感の抱え方はあるでしょうね。
お母さんも、ある種欠落感は今でも抱えてると思います。僕も抱えてます。

自分は未完成のまま終わって、駄目人間かもしれない。だったらもうここでお終いにしちゃおうと思った。自分がちゃんと完成に近付いてちゃんとした人間になれますよって、誰も言ってくれなかった。むしろみんな、「もっと頑張ればちゃんとできますよ」って。もう頑張れないと思っていた。大人はたくさんいたけど歳ばかり取ってて、僕の疑問に答えてくれる人がいなかった。

大人になってからもしばらくそうでした。今はどうか。今もいない。だけど自分で、答えを見つけてきた。これはね、ほんとに20年越しで答えを見つけました。
ただ、僕思うんだけど、みんなはね、いま目の前に僕とかお母さんがいる。答えがあるのだから、その未完成を嘆く必要は無いと思いますね。だったら上手に未完成を持ち続ける。もちろん、そこにあぐらをかくんじゃなくてね。そういう意味で希望はありますよ。もうレールが敷かれてるも同然ですよ。いつの時点でじゃなくて、今の時点で自分に満足したほうがいいですよ。っていうか自信を持ったほうがいい。今の時点で。

僕は今でもそうですよ。僕は、まだまだゴールにほど遠いのでね。なのはなファミリーをやってる今の自分の現状は非常に不満足です。だけど、もっとすごい事できるんだって、そういう自信がある。今の現状を褒められたら恥ずかしくて、いやいやって言うばっかりでね。自分の将来に対して自信を持つ。そういうことで考えたら良いんじゃないでしょうかね。
そのうち、実績が出てきたらほんとに、自分の実績に見合った確信、自信が生まれます。確実に成果は出ますから、ちょびっとした成果を全部自分のものにすることですよ。自分の手柄はハッキリ自分の手柄として胸の中にしまい込むことですよ。
そうすると、ほんとに安定した自分になり、生きていくことに安定感が増します。

結論からいうと、今は未完成でいい。その代わり将来は最高の人間になるんだ、と信じたらいいですよ、ということです。









第1回~第100回(クリックすると一覧を表示します) 第1回「縦軸と横軸について」
第2回「神様は何をしようとしているのか」
第3回「本で涙を流すことについて」
第4回「本を読んでも内容を忘れてしまうことについて」
第5回「時間をうまく使えるようになるには」
第6回「太宰治について」
第7回「摂食障害の人が片付けが苦手だったり、約束の時間に遅れてしまうのは何故ですか?」
第8回「自分のことを『僕』『おいら』と言うのをやめられなかったのは、なぜか」
第9回「おいしいカレーと、おいしくないカレーの違い」
第10回「楽しんで走る」
第11回「死ぬことへの考え」
第12回「『聞く』と『教えてもらう』」
第13回「頑張るフルマラソン」
第14回「他人の成功」
第15回「『今』という時間」
第16回「不安の先取り」
第17回「良い協力関係」
第18回「急に悲しくなる」
第19回「夢の持ち方について」
第20回「心の許容範囲」
第21回「疲れるのが怖い」
第22回「スポーツの勝ち負け」
第23回「人といること」
第24回「“好き”という気持ち」
第25回「何でも知っている」
第26回「舞台鑑賞が怖かったこと」
第27回「生まれ変わるとしたら」
第28回「一番感動した景色、美しい国はどこですか?」
第29回「好きな時代はいつですか」
第30回「体型について」
第31回「行きたいところ」
第32回「悲しくなったら、動く」
第33回「意志を持てないこと」
第34回「心を動かす」
第35回「恋愛できますか」
第36回「日記の重要性」
第37回「心配されたい」
第38回「ONとOFF」
第39回「いつも同じ態度で」
第40回「涙腺が弱い」
第41回「子供が苦手」
第42回「正しいことを通そうとして」
第43回「流されて生きる」
第44回「才能について」
第45回「身長は伸びますか」
第46回「否定感が強い」
第47回「ぐっすり眠れない」
第48回「見え方、感じ方」
第49回「強さについて」
第50回「自分の出し方」
第51回「身体の調子と気持ち」
第52回「何のために変わるか」
第53回「痛みを知る」/a>
第54回「投げやりな気持ち」
第55回「未完成」
第56回「相手を許す」
第57回「書けないとき」
第58回「甘いと甘え」
第59回「イライラしない」
第60回「落ち込んだ時」
第61回「生きているなら」
第62回「わからない問題は」
第63回「眠ること」
第64回「子育てについて」
第65回「夫婦で大切なこと」
第66回「自己否定について」
第67回「友達が欲しい人、そうでない人」
第68回「未来を信じる」
第69回「山を登ると」
第70回「リーダーをすると苦しくさせる」
第71回「自分から人を好きになる」
第72回「小さいころからの恐怖心」
第73回「お姉さんのような存在を」
第74回「作業に対して気持ちの落差が激しい」
第75回「大きな希望を持つとき①」
第76回「大きな希望を持つとき②」
第77回「夢について・集中力について」
第78回「やるべきことをできていなくて苦しい」
第79回「やるべきことをできていなくて苦しい②」
第80回「真面目さは何のために」
第81回「高いプライドをつくるには」
第82回「番外編:そうだ、お母さんにきいてみよう!」
第83回「相談、確認が多いことについて」
第84回「自信を持つ」
第85回「間の良さ、間の悪さ」
第86回「過去を美化してしまう」
第87回「統合力を高めるには」
第88回「見張られているような不安」
第89回「どうして人間だけに気持ちが必要なのか」
第90回「休日になるとやる気がなくなってしまう」
第91回「低気圧」
第92回「どうして動物を飼うの?」
第93回「自分を褒める話をするには」
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第102回「依存を切り離すことについて②」
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▶第251回~
第251回「アメリカンドリーム」
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