第18回「急に悲しくなる」


質問

 訳もなく、不安になったり、虚しくなったり、悲しくなるのはなぜですか。
 特に気持ちが落ちることもないし、毎日楽しいと思えるのに、ふとしたときに、怖くなります。
 これは、私の甘えですか?  教えていただけると嬉しいです。

 

答え

 人ってね、大きい喜びと、小粒の喜びとで生きています。
 ジャガイモを栽培していると、大きなジャガイモだけとれるとか、小さいのだけがとれる、ということは無いんですね。大きなジャガイモができたときも、小粒のジャガイモが一緒に掘れてきたりする。
 そんなふうに、大きな喜びと小さな喜びの、2つの喜びがある。

 感情には、喜怒哀楽があります。
 これは、言葉のあやでそう言ったんですが、感情の中には、嬉しいのも、悲しいのも怒るのも、いくつもの種類がありますね。
 大きく分けるとプラスの感情と、マイナスの感情がある。
 人生の中には、大きなのと、小さい悲しみがあって、誰にも大きな悲しみも用意されています。
 
 例えば、家族が年をとって亡くなる。
 年を取ったら誰でも死ぬよ、と思っていてもそれが現実になったら悲しいですよね。
 
 お母さんが、夕べ、ムカデに刺されたんですよ。今は、足がすごい腫れちゃっていますね。 ビックリしました。
 最初は、針が刺さったとか言って、右内ふくらはぎですからね。縫い針が落ちていて、刺さったと思ったらしくて、針を探している。それが、時間とともに痛みがひどくなってきて、見たら、2つ、噛まれた跡があるから、ムカデだっていうことになって、それから慌ててキンカン塗ったから、腫れて来た。それも、辛さですよね、小さいもの。

 昔、飛び石のけんけんぱをやったと思うけれど、○は楽しみで、喜びの上をけんけんぱする。間違うと、落ちちゃうことがある、悲しみの上に。そうしたら、しょうがない、悲しみの方に足を出して石を取るしかない。
 人はそんなことをして生きているんですが、ふとした時そのことに、つまりすぐ隣に悲しみとかがあることに気がつく。
 最初からそれはあるのだけれど、大きな目標に向かっている時には、それがいつもすぐそばにあるのに目に入らない。
 その目標から少し目を離して、息をついてふと横を見た時に、小さい悲しみがいっぱいある。
 そういう時に、悲しさや虚しさを感じるということは、どんな人にもあるわけです。

 もの凄く有名人になって、才能があって評価されて、タレントでも、映画俳優みたいな大女優でも、悲しみがあって、大女優になったら、楽しさも、手応えのある楽しさもあるだろうけれど、それに匹敵する大きな悲しみもあるだろうし、誰がいいとも悪いとも言えない。
 小粒の人生を生きている人は、楽しさも小粒だけれど、悲しみも小粒で済むかもしれない。
 でも、悲しさは誰にでもついてまわる。
 目標を意識しないで、横ばかり見て、悲しいことばかり考えたり、マイナスなことばかり考えていると、ますます虚しくなったり、虚しい度合い、寂しい度合いが大きくなりますよね。
 
 よく、卒業生でメールを書いてくる人がいる。
 職場に何人か人がいるんだけれど、どんなところに行っても、変な人はいる。
 読むと、確かに変な人なんだ。
 でも、いい人もいる。
 ところが、変な人に目を向けていると、イライラしたり、嫌だなって言う気持ちでいっぱいになる。
 嫌いな人の、ドアをバンって閉めたり、物をがさつに置いたり、言っている言動に、いちいちイライラする。
 それを8割考えちゃうと、楽しいことがあっても、楽しくなくなる。
 どうせなら、プラスのこと考えていると、嫌な人がいても忘れちゃう。
 そういうことってあるから、やっぱり何に目を向けるか、プラスの方に目を向けるということを考えたらいいんじゃないかな、と思います。

 訳もなく不安になるのは、お腹がすいたとき、眠たいとき、疲れたとき、嫌でもそうなります。
 例えば、車で山小屋と古吉野を行ったり来たりしますよね。
 便秘の時に車に乗ったら、この距離でも十分車酔いします。
 お腹の調子で、頭のコンディションも悪くなる。気持ち悪くなるというのは頭のこと、お腹じゃなくて、頭が痛くなる。
 大腸のコンディションで、脳も悪くなったりするわけだから、その反対に身体を健康に保っておくと、気持ちも安定して、不安とか緊張がなくなる。

 誰でもそういうことはあるんだけれど、プラスの方だけを見て、目標に向かって、着実に進んでいるという実感を得るといいと思う。
 人は、やることがあるといいと思う。
 僕は、大きなことに向かうことだけが人生じゃなくて、人生は、小さなこと、雑用でできているとよく言いますよね。
 雑用をいかにするか、やるべきことはやって、やらなくていいことはやらないか、それをどうするかで、いい人生になるかならないかが決まります。
 今、やらなければいけないことが、手紙。手紙を書かなければいけない人が、3人います。大急ぎの人。出すべきなんです。
 出さなくても済んでしまうかもしれないけれど、出さなければいけない。早ければ早いほどいい。手紙って面白いもので、いい手紙、っていうのは、時間とともに変わって行く。
 
 今日出したタイミング……そうそう、このサパトスさんからいただいた絵ハガキ。
 ここに来た翌日に出してくれているでしょう?
 翌日だと、絵ハガキで充分に気持ちが伝わります。
 僕が有難うございますと書くのでも、この長さでいい。
 でも、いまはそれから時間が経ってしまっているでしょう。
 今から出すとしたら、時間経ったんだから、たったなりに、その感想なり、思いなりを、充実させて、ようやく翌日出したハガキの長さと同じくらいの礼儀なんです。
 
 もっと時間が経ったら、もっと長く書かないといけない。
 すぐに出したら、すぐに有難うございますでいい。でも、3日経ったら、便箋で1枚くらい。今だったら2枚以上書かないと、成立しない。
 こういうやり取りを、きちんとやるか省略しないでできているかで、その人の人生がいい人生になるかどうかが決まってくる。
 で、こういうところに人生の本質が宿る。
 一見サブなんだけれど、すごく大事です。
 そういうことでね。
 
 まあ、そう言うことをふまえつつ、人間なんだから、悲しくなるときもね。
 その辺で、いま道路を這っている虫に、虚しさはないですよ。
 悲しさも、不安もないですよね。
 あのいま何匹も道路を這っている毛虫は、どうして道路を横切るのかね、右側の木と、左側の木の葉っぱの美味しさに違いがあるのか。
 車に轢かれるのに、行かなければいいんじゃないの?
 何しに用事があるの?
 でも何か、道路を横断する理由があると思います。
 虫に悲しさはない。悲しさを感じるから人間ということです。
 









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第3回「本で涙を流すことについて」
第4回「本を読んでも内容を忘れてしまうことについて」
第5回「時間をうまく使えるようになるには」
第6回「太宰治について」
第7回「摂食障害の人が片付けが苦手だったり、約束の時間に遅れてしまうのは何故ですか?」
第8回「自分のことを『僕』『おいら』と言うのをやめられなかったのは、なぜか」
第9回「おいしいカレーと、おいしくないカレーの違い」
第10回「楽しんで走る」
第11回「死ぬことへの考え」
第12回「『聞く』と『教えてもらう』」
第13回「頑張るフルマラソン」
第14回「他人の成功」
第15回「『今』という時間」
第16回「不安の先取り」
第17回「良い協力関係」
第18回「急に悲しくなる」
第19回「夢の持ち方について」
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第21回「疲れるのが怖い」
第22回「スポーツの勝ち負け」
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第24回「“好き”という気持ち」
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第28回「一番感動した景色、美しい国はどこですか?」
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第45回「身長は伸びますか」
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第49回「強さについて」
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第52回「何のために変わるか」
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第54回「投げやりな気持ち」
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