お父さんがお母さんを幸せにする、とおっしゃるんですけど、そのときに、心がけていることはなんですか?
相手を幸せにするとか、誰かを楽しませたいというのは、相手のことを理解していないと、その人が求めていることを叶えるというところに届かない。
でも、幸せが人と人との間に生まれるものだとしたら、一方的なものでもいけないし、自分ばかりでもいけない。
お父さんとお母さんがお互いを理解し合っていて、という前提ではあると思うんですけど、なんていうんだろう、幸せにするには終わりがないというか、うまく言えないんですが、幸せにするとはどういうことですか。
【お父さんの答え】
幸せにすると言うけど、じゃあ、何がどうなることが「幸せ」だ思いますか。
幸せって何? と聞かれたとき、一言で答えるとしたら、どう答えますか。
それも、今日だけ幸せにするんじゃなくて、ずっと幸せにするわけですから、どういうふうにしたら幸せだと感じ続けることができると思いますか。
Mさん 幸せとは「共感できる」ということかな。
共感できる? ううん、幸せ=共感できること、というのとは違うと思うな、僕は。
共感というのは、その時だけのことだからね。いろんな共感を拾い集めても、幸せになるかなっていうと、短期間は幸せを感じるかもしれないけど、ずっとは無理だろうね。
僕が思う夫婦の「幸せ」というのはね、「成長する喜びを感じさせ続けること」だと思っています。
人って、成長することが一番の喜びだと思います。だから、幸せになるには、うまく育つことが大事だと思います。うまく自分も育つこと。そして夫婦の2人がいるからその成長がより大きいと思わせる、ということが大事だと感じます。それが一番の、究極の幸せなんだと思います。
片方だけが育っていってもしょうがない。自分だけ育ってもしょうがない。2人が同時に育って、着実に成長しているなと感じるような生活を続けること。
一緒にいる年数に見合っただけ、精神的に豊かに成長していると思ってもらうこと。僕はそれが幸せにするということだと思っています。
さっき、このハウスミーティングで、「大きな目標とはどういうふうに持てばいいですか?」という質問が出たけれど、その質問に対する答えは、究極のところ「どう育つか」というのが目標なんだよ。どっちに向かって育ちたいんですか、ということ。
そのとき、僕は例として自分のことを挙げました。僕は15,6歳の時に、あまりにも苦しくて生きていけないと思うくらいに苦しんだとき、それから生きていくとしたら、自分の苦しみを突き詰め、何がどう苦しいのか理解して、そして自分と同じ苦しみを味わっている人に、自分が進んで解決したところまで答えをあげられる、そういう仕事ができるなら生きてみよう、そのために物書きになりたいと思ったことを話しました。それが僕の大きな願いであり、大きな人生の目標だった。それは今に続いている。僕は自分が苦しかったから、自分の人生のテーマをとしてそれを掲げました。
今の質問でも、誰か自分が結婚する相手と出会ったときには、その相手の人を育て、自分も育ち、という2人で成長していくような心掛けで生きていくことが幸せになるコツだと思います。結婚しても、瞬間的な悦楽、享楽を求めることじゃなくて、ただの瞬間的な共感じゃなくて、長期にわたって死ぬまで成長し続ける、そういう喜びをお互いに感じられるような人生にしていくことを目標にしてはどうでしょうか。
2人で同じ方向を見て力を尽くしていく、ということが幸せだと僕は思う。
じゃあ私は幸せだね、お父さん。
うん。お母さん幸せですよ。
と言う感じ……。お母さんは多分、僕と出会ってから、かなり成長している。幸せだという意味では、成長してるから幸せだと言えるのだと思う。成長してるということを実感していなければ、逆戻りしていたら幸せじゃない。悦楽に溺れていたり、一時的な、ものを買った喜びとか、美味しいものを食べる喜びなんて、瞬間的なものでね。モノがあったって、モノなんかすぐゴミになるし。何かモノを求めることと幸せとは関係がない。
成長する。それは別な言い方をすると、生き甲斐とかやりがいでしょう。それが重なっていくと成長する。
お互い様じゃないとね。
お母さんは、本当にお父さんに出会ってよかったと思っていて、成長してるけどね。それは、お父さんがすごい人だからといって、私がぶら下がってたってダメなんだよ。お父さんも、お母さんと一緒になってすごい成長してるわけ。
お母さんだけ幸せで僕は犠牲者です、といったらおかしいよね。
誰か自分の伴侶と出会うまでは、自分育てをする。
伴侶と出会ってからは、自分育てと同時に相手を育てる。2人を育てる。で、それが死ぬまで続かなきゃいけない。
でも、自分育てをちゃんとしておかなかったら――本当にいい人に出会いたかったら、自分をかなりのところまで育てておかないと、素敵な人と出会えないよ。
出会ったとしても、相手に認めてもらえないしね。
出会っても気づかなかったり、あるいは追いつけなかったりしたら関係が続かない。
それは友情でも一緒で、片方だけ成長して片方停滞していたら、それは友達にならない。同じくらい伸びていかないと。同じような刺激を与えないとね。本当の友達にはなれない。
お父さんはすっごい勉強するね。
だって、今、農業にはまってるけど、ずっと物書きで農業を知る必要はなかったけど、なのはなファミリーで農業をするようになってからは、次々、すごい努力してすごい勉強するから、勉強することに関しては尽きることがないよね。
やればやるほどハードルが上がってくるから、高いレベルで農業をしたいと思えば思うほど、年々、難しくなってくるよね。
年を取ったら、隠居で安泰でしょ、なんていう場面が僕に来るとは思わないし、そういうのは何歳になっても自分たちにはないと思っている。
若い時よりも成長してる分だけ、もっと成長すると言ったら、ハードルは高くなるばかりだし、よりよく生きることも、年々難しくなる。だけど喜びも深くなるし、色んな意味で生きる価値が上がってくるし、価値を出していかなきゃならない。夫婦でより価値のある生き方をしていけたら、その間はずっと幸せだと思います。
歳をとってくるほど大変なことも増えてくるけど、歳をとるほど面白さも増えてくるということも言えるね。
(2021年3月29日 掲載)
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