第105回「一緒に長時間いられない」


質問

私は、好きとか嫌いとか関係なく、同じ人と長時間、一緒にいることができないです。
例えばシスターさん同士だったとしても、自分が尊敬していたり好きだなと感じている人だったとしても、何か役割などで毎日のように一緒に作業をすることがある時、
(自分は馬鹿にされているのではないか、相手の人も一緒にいたらストレスなのではないか)
と思ったり、嫌だと感じる所を気にしてしまったりします。また、自分のことを詳しく知られたりすることも少し嫌だと思ってしまいます。
それは、距離感がとれていなかったり、自分が上に立とうとしているからですか?
好きだなと感じる人がいたとしても、私は、本当には誰のことも好きではないのではないかと思いました。
どうしていくことで、平らかな気持ちで人と関係がとれますか?

自分の思う答え
①人の良い所だけを見るようにする。
自分も不出来な所が多いことを常に頭において、謙虚になって相手の立場になって考えるようにする。
②その他

 

 

お父さん:
最近の人は、こういうふうに長時間、人と一緒にいられないという人が、結構多いですよね。
恋人の期間が長くあって、結婚して一緒にいるようになった途端に、仲が悪くなったり、気詰まりを感じて嫌になっちゃう、ということもあります。
お母さんも、僕とずっと長く一緒にいるけど、最初、苦痛だったことないですか。少しあったかな、どうなの?
年中一緒にいたよね。

 

お母さん:
年中一緒にいるよね。

 

お父さん:
でも、年中一緒にいて、嫌だなと思うことはあまりないです。お互い別行動したときに、うわ、清々したなと一瞬思うんですね。夜になったら大変です。寂しくて寂しくて。お父さん、寂しいよってメールが来たりします。

 

お母さん:
うそばっかり!

 

お父さん:
そんな気がしました。メールが来るような気がしました。

 

お母さん:
でもそんな気がしてていいよ。思ってるよ。

 

お父さん:
思ってるよね。そんなふうになるんですよね。
この質問の人ね、自分のことを詳しく他の人に知られたりすることも少し嫌だと思ってしまう。怖いんですよね。

 

お母さん:
そうそう。
良い人でありたいからね。
なんだろう、「相手は自分のことこう思ってるだろうな」と思ったら緊張して、長いこといられないんだよね。

 

お父さん:
僕はお喋りで、まあ人の悪口を言うよりも自分の話をしてる分には罪がないだろうと思って、若いときから、よく自分の話をしていた。長く一緒にいると喋り過ぎちゃうわけですね。後で一人になったときに、喋り過ぎたことに対する後悔、喋り過ぎたことに対する、ものすごいやりきれない思いに、非常にしばしば襲われたことがあります。
そういう、喋り過ぎによる後悔というのがありますよね。
でも今は、喋り過ぎによる後悔って、ほぼ無いです。
お母さんとも、もう、本当に疲れ過ぎるくらい喋りまくってるけど、お互い喋りすぎたことによる後悔というのも無いと思うんですよね。

「距離感が取れなかったり、自分が上に立とうとしているから」というのとちょっと違うのだと思います。
自分を晒す、ということが、かなり苦手なんです。
摂食障害になってしまったみんなは、ずっと人知れず、いろんな心配をし続けてきていたんです。それで、自分くらい心配してる人はないという、自分の心を全部世間に見せたら大変なことになってしまうというくらい、深く大きな心配を、それぞれその人なりに懸命にしてきたから、自分の心なんか誰にも見せられない、という思い込みがあるのです。
で、それをずっと物心ついたときから続けていますから、自分を全部、晒すなんて言うのは……、とてもそんな発想は持てないし、できるわけがないし、ありえないと思ってるんですね。
ところが同じ人と長くいると、結構、自分を晒さなきゃならない。自分のことが明らかになるほどに、どんどん困っていっちゃうんですね。
自分のことが知られていくほど、なんか丸裸にされるような不安な感じ、困る感じ、ありえない感じがしていっちゃう、というのが本当のところなんじゃないかな。

みんなは完全に安心だとか、この世界は安全なんだ、というふうに思えてないんですよ。
まだ傷のミーティングをしていない人いますけど、傷のミーティングをするとよくわかるんですが、自分の家族がばらばらになるんじゃないかとか、母親が孤独で苦しく生きてるんじゃないかとか、父親が可哀想なんじゃないのかとか、そういう、家族がばらばらになる、家族が苦しんでいる、自分が助けなきゃいけないという思いにずっと囚われている。
自分がなんとかしなきゃいけない、とずっと心の奥底で無意識に、時には意識的にずっと考え続けている。そのことが症状として出てしまうし、症状が消えたとしても、その考えを完全に取るということはなかなかできない。
心を隠し続けてきて、症状にまでなって、それを全部明らかにするというのはかなり難しいことで、その手前まで明らかにすることも、自分のことのすべてを知らせるというのも、すごく難しい、ということですよね。

ところが実際には、意外と、人って平和なんです。
みんなが密かに心配していたほど、家族は危機的な状況ではなかったのです。
実際には、父親も母親も、そのまま元気に生きてます。兄弟姉妹も、なんとかそれぞれやっています。自分も生きていけるし、自分の知ってる人もみんなそれぞれ、なんとなくいいふうに幸せになっていけるんです。世界は平和なんですよね。
自分の心にあるドロドロした心配を全部、さらけ出したとしても、自分がどんなダメ人間だったとしても、どうであろうとなかろうとも、現実に周囲の人たちは平和なんです。
そのことがわかってきたならば、自分を晒しても平気でいられるようになります。

それと同時に、ちょっとした自信が出てくると、どう思われてもいいよっていうふうになるんです。
たとえば、なのはなのお母さんが世間から後ろ指を――お母さんは今すごく強いですけど――世間からどんなに後ろ指をさされようと、誰に何を言われようと構わない、という覚悟があるから、とても強いんですよね。
で、その根拠は何かと言ったら、お父さんがいるから、だと思います。私にはお父さんがいればいいもん、他の人いらない、っていう感じだよね。世間の人にどんなに嫌われたとしても、何を言われたとしても、構わないですよっていう自信がある。
そういう意味でも、何を知られようが知られまいが、どうでもいいことなんですよね。
お母さんはお父さんを自信にしている。
で、この質問の人であったらば、同じようなことで「誰に何を思われてもいいよ、自分にはこれがあるからね」って思えば人と一緒にいても平気でいられます。
そうは言いながら「これがある」と言うほど自信にできるものは、私は何もないという人がほとんどだと思います。でも、そんなのは何でもいいんです。
お母さんは、「私の自信はお父さん」。なんだそれ、みたいなね。自分のことじゃないじゃん。極端にいうとそれでも良いんですよ。「私の自信はなのはなファミリー」と言ってもいいんです。
それくらい、自分が何か、これと思うところがあればいい。その自信というのは、人より秀でているから自信があるとかそんなものじゃないんです。どっちかと言ったら、信じる気持ちに近いですよね。自分がそう思っただけでいい。
そして次に、私は何を思われてもいいと思った途端に、何を知られてもいい、という気持ちに変わっていくんじゃないでしょうか。永く一緒に居て、何を知られてもいいし、何を話してもいい、そして、相手も自分のことをそんなに嫌っていないということが自然にわかって、時間がたっても自然体でいられるようになっていくと思います。

 

 

(2018年8月7日掲載)









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第3回「本で涙を流すことについて」
第4回「本を読んでも内容を忘れてしまうことについて」
第5回「時間をうまく使えるようになるには」
第6回「太宰治について」
第7回「摂食障害の人が片付けが苦手だったり、約束の時間に遅れてしまうのは何故ですか?」
第8回「自分のことを『僕』『おいら』と言うのをやめられなかったのは、なぜか」
第9回「おいしいカレーと、おいしくないカレーの違い」
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第11回「死ぬことへの考え」
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