質問
どうすれば、お父さんが教えてくださるような”好き”という気持ちを持つことができますか。私は、見返りを求める”好き”にしかなれたことがないと思います。自分が好きだ、と思っている人から嫌なことをされたりすると、(なんで?)とか、(相手は私のことが嫌いなんだ)と思い、好きという気持ちが揺れてしまいます。好きだ、と思っている人から嫌われた、と思うと、ものすごく悲しくなってしまいます。
その人が、その場に居てくれるだけで幸せ。
その人と、同じ空気を吸えるだけで幸せ。
そういう気持ちを、どうしたら抱くことができますか。
答え
そうだね、好きっていう気持ちは、気持ちの中でも高級な気持ちかもしれませんね。
僕は簡単に好きになるし、一回好きになったら嫌いにならないので、好きになるのってどうしたらいいかって改めて考えてみないと、自分でもよくわからないくらいです。
さて、何で好きになるんだろう。
相手の良いところがすごく分かると、どうしたって好きになりますよね。
その人の気持ちを好きになる。感情、気の回し方、感じ方、考え方。
好きっていう感情は、自分の持っていないもので、自分が(それ良いな)っていう、自分もそうなれたら良いな、っていうものを好きになるんです。
その人に近付きたいな、その人のレベルに近付きたいな、どうしたらいいかなって思うと、好きになるんですね。
以前、卓球で、子供の話をしましたね。
子供が高校生のときです、僕と親子ですから、17、18くらいの子供に対して、僕とは30歳近い年齢差がありますよね。
それが17歳の子に対して、尊敬の念を抱く。勇気があるな、すごいなと。
僕はみんなに対しても、すごいなと思う気持ちを簡単に見つけることができる。
僕の持っていないものを持っている。僕と違う人ですから、それぞれ持っているんです。それに対して、いいなっていうね。そういうふうになれたらいいなっていうものを見るんです。
そうしたら、好きになります。
「愛は惜しみなく奪う」っていう有島武郎の本がありますが、愛は奪うもの、相手の良さを、もっともっと相手の良さを吸収しようとするものだ、と書いています。
だから、好きな人と一緒にいたいと思うし、もっと良く、何でそんないいふうに思っているのか、もっと成り立ちを知りたいと思うから、一緒にいたいと思う。好きな人とね。
そういう感情です。
僕は若いときに、好きになった女の子には、好きっていえませんでした。
自分と知り合う前の人間関係で作られたその人が好きだから、自分と知り合うことで、自分がその人の人生に少しでもかかわることで、その人の人生を汚してしまったり、その人の人生に影響を与えたりするのはよくないことなのではないか、とその人に近づくことがためらわれたのです。
そういう人がいることを知っただけでも幸せだし、同じ時代に、同じ空気を吸って、この世に存在できただけでも大きな喜びだと感じられました。
その人に知られないように、そっと遠くから見るだけで、充分に幸せを感じることができるというくらい好きになりました。
中学生のとき、初めて異性を好きになって、どうしたらいいかわからなかったので、答えを求めて図書室に行きました。哲学書のコーナーに、恋愛について書かれた本が何冊かありました。一番、心魅かれたのは、次のようなことが書かれていた本でした。
「好きな異性には、決して、好き、と告白してはいけません。
なぜなら、好きと告白したからには、2人の関係はそのままではいないからです。
中学生、高校生がお互いに好きと告白して、大人になるまでつきあって、めでたく結婚までたどりつく、ということはほとんどありません。
せっかく好きと告白したのに、途中まではうまく交際できたとしても遅かれ早かれ、2人の関係は悲しい終わりを迎えてしまいます。いずれ、必ず失恋してしまうのです。
もし、告白しなかったら、どうか。
その好きな人のことは、いつまでも輝きを失うことがありません。
あなたが、年をとって晩年を迎えたとき、思い出すのは若い時の恋心です。あの人が好きだったな、この人も好きだった、そういう思い出が夜空にまたたくキラ星のように、たくさんあなたの心の中で光り続けているはずです。それぞれが、すべてすばらしい思い出のまま輝き続けることになるのです」
この本を読んだときは、そんな殺生な、と思いました。
僕は、嫌だ。失恋しても、告白してその人と仲良くなりたい、と思いました。
でも、いつも心の隅に、この本に書かれていることが残っていて、せっかくの好きな人との関係を悲しいものとか、つらいものにするのだけはやめよう、という気持ちになっていきました。
そして、いつの間にか、素晴らしい人、大好きな人に出会えたら、それだけで感謝する気持ちを持つようになっていたのです。
人を大好きな気持ち、これは生まれてきてよかったと思うきもちです。それ以上に求めなくても、充分に、幸せをかみしめることができます。
異性には特別、そんな幸せを感じますが、同性ですばらしい人に出会ったときも、生きていく勇気を分けてもらったような気持ちになります。
そういう好きな人には、少しも嫌な感情を持つことはないです。
あなたがいるだけで私は幸せなので、もし嫌われたとしても、ごめんなさいね、こちらばかり幸せな気持ちになってしまってすみません、という感情があるだけです。好きな気持ちのまま、いくらでも身を引く気持ちにもなれます。
先ほどの本の影響かもしれませんが、壊れるかもしれないような関係を深めようとは思わないので、見返りを求めないのです。好きな人に好きと告白しないのと同じことです。
こちらが好きになっておいて、相手にも同じ気持ちを持ってもらおう、というふうに考えることこそ、行き過ぎた気持ちだと思います。
好きになれないというのは、相手の良いところが見えない、ということなのかなと思います。
他の人の良いところが見えたら、簡単に好きになるんじゃないでしょうか。
考えてみたら、ここにいるどの子も、良いところ、分かります。悪いところはあんまり良く分からないけれど、良いところはよく分かります。
そういうことで、同じ空気を吸えるだけで幸せっていうところまで好きになる、というのは余程にならないといきませんが、その人の良いものが特にすごいなと思って、うんと好きになると、そういう気持は出てきますよね。
それくらい、素晴らしいものを持っていると相手を尊敬したら、その人から嫌われたとしても、嫌と思わなくなります。
それと、自分が好きになった人は、絶対に自分のことを嫌いにならない、という確信がありますよね。
僕はそう思います。
誰でもそうだと思いますね。
ということで、相手を好きになるコツは、相手のいいところをはっきりと知る、ということだと思います。
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