【質問】
私は、人の気持ちが汲めない人だと言われました。また、同じ失敗を繰り返している、とも。
そういう特性があるから、職場の周囲の人に説明したほうがいいのではないか、と先輩の社員に言われましたが、自分がアスペルガーであることを説明したほうがいいですか。
アスペルガーだから、人の気持ちを汲めない、ということは、ちょっと違うように思います。
アスペルガーのために統合力がなくて、全体的に見る事ができないため、いまの流れを掴めない、その流れの中で考えている人の気持ちがわからない、ということです。
だから、同じ失敗を何度も繰り返してしまうのだと思います。
空気が読めない、というのは、その場にいる人たちの、全体的な総意というか、暗黙の了解があるのに、自分が暗黙の了解を知ることが難しい、ということです。
1人、ひとりの、気持ちを真正面から向き合って考えれば、気持ちを汲めないことはないのですが、その場の空気を前提にした人の気持ち、となると、途端に「その場の空気」という前提を共有できないので、なんでそういう気持ちなのかわからない、となってしまい、相手は相手で、「この空気を知っているはずなのに、なんでそれを無視したことを言えるんだろう」と、不審に思ってしまう、ということでしょう。
だから、相手に自分の欠落をどう伝えたらいいかというと、アスペルガーの説明をしてもわかりにくいと思うので、「私はその場の空気を読むのができないので、失礼があると思います。できたら、その場の流れも一緒に教えてくれると助かります」という言い方がいいと思います。
それと、自閉症の子は、「バイバイ」とお別れをするときに、自分の顔に手の平を向けて、ヒラヒラと手を振ります。
驚くべきことに、ごく自然に相手に手のひらを向けてバイバイする、ということができないのです。
このことからしても、まったく悪気なしに自分中心に考えてしまう、なかなか相手の立場に立つのが難しい、という特徴があるのも事実だと思います。
もっと言えば、自分にとって好都合なことが、まわりの人にとっても好都合なはず、と無意識に信じていて、自分に好都合な発言を平気でしてしまうので、まわりの人の顰蹙(ひんしゅく)を買う、という事態になるのです。
どうやったら、自分にとって好都合なことは、必ずしも周囲の人に好都合ではない、と思えるようになるか、ということですが、答えはあります。
小説を読む事です。
小説は、いろいろな出来事が起きた時、人はどう考えるか、ということが書かれているので、いってみれば、様々なパターンでの人の気持ちの動きをシミュレーションできるのです。
また、人の気持ちが書かれていますから、相手の立場に立って考える訓練にもなります。
そしてそういう人の気持ちの動きを、頭の中にプログラムしておけば、ああ、これはあの場面と一緒だな、というふうに比較的に簡単にその場の空気を理解できるようになっていくし、その後の展開も予想できるようになるので、多少、周囲の空気が読めなくても、シミュレーションのお陰で、的外れな行動を免れます。
ですから、小説を読むことがとても有効だと思います。
ただし、2、3冊読んだくらいでは効果はほとんどないです。1年に最低でも100冊以上、できれば200冊くらい読む、そのくらいのペースで読んで行けば、次第に周囲の空気を読める自分を実感でいるようになるでしょう。
年間に200冊で5年たてば1000冊になります。それくらいまでいけば、空気読めない感はほとんどなくなるはずです。
ちなみに、推理小説とかファンタジー小説はNGです。
いわゆる純文学のジャンルがベストで、川下りのエッセイや、釣りのようなドキュメント・エッセイ、著名作家の自伝的な青春記なども極めて有効です。
(2018年8月10日掲載)
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