第25回「何でも知っている」


〈質問者〉

質問

 個人的なことだと思うのですが、教えていただけると嬉しいです。
 昨日、お母さんにちょっとした質問をされて、答えることができませんでした。お母さんは、「そう、○○でも知らないか」(ちょっと言葉は違ったかもしれません)と、少しがっかりしたように言われて、私は「ごめんなさい。分かりません」と答えました。
 その時、せっかくお母さんが聞いて下さったのに、答えられなくて申し訳ないなと感じて、もっと色々なことをちゃんと知りたいと思いました。

 私は、よく母親から質問されることがありました。私が「知らない」と答えると、母は「○○でも知らないことがあるんだ」とよく言っていました。母は責めるように言うのではなくて、純粋に私は何でも知っていると信じていて、知らないことがあるのに驚いているみたいでした。

 私はそういう風に言われることが嫌で、母に反発する気持ち、嫌だと思う気持ちがありました。昨日、お母さんから質問を受けたときのシチュエーションは、母が質問をしたときとよく似ていると思ったのに、全く反発心や怒りを感じませんでした。これは、どうしてなのか、教えて頂けると嬉しいです。

 

〈お父さん〉

答え

 同じ、「○○でも知らないことがあるのか」という言葉をかけられたわけですね。
 これね、その子供に対して母親側からの言葉は同じかもしれないけど、距離のとり方とか、期待の仕方とか、位置づけが違うんですよね。
 だから、この人の母親は、後半に書いてあるように、「純粋に私は何でも知っていると信じていて、知らないことがあるのに驚いているみたいでした」となってしまう。
 
 この母親は、自分の子供を自分よりも上に置いているのです。この子はなんでも知っている。母親である私よりも知っていて、自分のほうが知らないんだという立場にいるわけです。
 子供をすごく尊重して尊敬しているようですけど、どうなんでしょうか。
 子供からしたらどうか、を考えてみればすぐわかることです。
 
 僕は、自分の子供が小さいときに、自分の子供には、僕のお父さんはどの大人よりなんでも知っていると思い込ませようと思っていました。
 誰と喧嘩しても、誰よりも強いって信じ込ませる。
 お父さんは何でもできる、って信じ込ませる。
 そのことが、子供に安心感を与えることだ、と思っていたからです。

 もし学校で子供に何かあったら、学校に言いに行きます。
 そんなことをしていたら、結局、PTAの会長に祭り上げられてしまいましたけど。
 子供を絶対に1人にしない。我が子を、先生なり、校長先生なりに、絶対に不当な扱いはさせない、そういう心意気でいました。
 子供が、「何だ、お父さんも言ってるほどじゃないな」ってわかるのは、子供に力がついてからで良いので、それまではカラ元気でも、元気のいいお父さんを演じ続けるつもりでした。

 子供が小学校高学年くらいになったある時のことです。心配になったんでしょう。
「お父さん、うちに貯金どれくらいあるの」
 そんなふうに聞くのです。僕は答えました。
 
「27億8000万円くらいしかないよ」
「それって、お金持ちなんじゃないの?」
「いや、世間の人は、表立って言わなくても、それくらいは持っているものだよ」
「ふーん」と安心して信じるわけですよ。

 そんなふうに、絶対的に自分の親は強いって思い込ませる。それが大事だと僕は思うんですね。
 そういうスタンスを親がとることと、子供のほうが何でも知っているというスタンスでは、正反対ですよね。
 僕は、例え知ったかぶりしても、「知らない」なんて言わない。
 何やったってお父さんには負ける、って思い込ませる。
 
 それぐらい、僕も頑張ります。そういう姿勢っていうのかな、そういう姿勢を持っていると、子供も大きくなると、途中で気がつきますよ。そうね、小学校の高学年くらいか中学生くらいになるとわかる。
 思ったよりたいしたことないなって。それでもいいんです。まだ強気で行くんです。

 PTAの卓球大会に何度か出場したことがあります。当然、僕より上手い人がいる。
 でも、お父さんはたいしたことないって言わせない。負けても、本当は強いんだと自分で信じている。
 お父さん、全然強くないよって、子供に説得されるくらいね。
 うちのお父さん、自信ありすぎ。そのほうが子供は安心するんです。

 この質問をした子は、親に安心できないでしょう。
 何か、下駄を預けられたような感じ。
 これは淋しいよね、親が諦めている感じで。
 
 それに対して、なのはなのお母さんは、現役を降りようとしていない。諦めていない。
 あわよくば、コンサートでステージに立って、みんなと一緒に歌いたいという気持ちが満々です。
 実際にステージに立つ。人ごとにしない。自分のことにしている。現役を降りない。
 自分の子供くらいのみんなに、そんなガリガリの細い身体していたらね、男の人に私と○○とどっち選ぶって聞いたら、まだ私の方が選ばれるよって言い切っている。身体にも自信をもっているんですね。
 何をとっても負けないっていう気持ちを持ってると、子供は安心するし、嬉しい。
 
 そういう前提で生きてますから、お母さんに「お前でも知らないのか」って言われたとしても、あまりストレスには感じないのです。
 子供なのに親に頼りにされて、親に聞かれて答えられなかったときにがっかりされたら、ストレスに思うでしょう。あなた、親でしょって。カチンときますよね。
 
 本当は、親であるあなたのほうが知っているべきでしょう、それなのに親の立場を棚に上げて、平気で私のことを頼りにしないでよ、っていう苛々があるでしょう。
 そういうわけで、親のスタンスのとり方が違うから、というのが答えだと思います。









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