考え事がやめられない
何かをしていても、いつも頭の片隅で、うっすらと考え事をし続けてしまいます。それをやめることができません。そのために集中力がありません。
私は、起きている間、ほとんど1日中考え事をしていると思うのですが、特に、自分がそのことを強く感じるのは、ダンス練習のときです。
(今日こそは、真面目に集中して取り組む)と意気込んで練習に臨んでも、気がついたら考え事をはじめてしまい、上の空になってしまいます。リーダーさんの言葉を、よく聞き逃してしまいます。
ダンスを踊る以前の問題だと感じています。
他の作業のときも、完全に集中したり、没頭できていることは少ないです。
これは、症状ですか。なぜ、こうなってしまうのですか。改善していけますか。
【答え】
あのね……この人の“うっすらと考え事をする”という状態が、どういうことを言っているのか、これだけでは正確につかみにくいですね。
ただ、言えるのは、「集中力」の使い方に問題がある、ということだと思います。
僕は、障害をもつ子どもの発達訓練を20年以上やってきてたんです、この頃は下火になっていますが、子どもの発達訓練をやるとき――なっちゃんがやってるような訓練なんですけど――1つのメニューをだいたい1分間で構成して、15種類くらいのプログラムを作って、それを2回りの30分で1セットとするんですね。
なんで1分間ずつ構成していくかというと、1,2歳の子どもでも、3,4歳の子どもでも、子どもは集中力が1分しか続かないからなんです。
集中力なら2分くらい持つんじゃないかと思うでしょう――これね、訓練やってみるとわかるんですけど、2分の訓練、例えば手足を動かす訓練をすると、(長いなあ)と感じますね。3分だったとすると、(これ、何これ、永遠に続くのかな)と思うくらい長いです。
1分くらいだったら、できます。
それで、同じ訓練は1分しかやらないんです。
たった、1分です。
で、大人だったら、もっと集中力が続くんじゃないの、ということをみんな思うでしょうけど、実はそうじゃないんですよね。
みんなは、今夜の質問時間で、僕の話しをもう30分以上聞いていますけど、子どもだったらどうかと言うと、多分聞いてないです。もう廊下に出て走り回っていますね。飽きてしまうから。
では、みんなは何でおとなしく聞いているかというと、集中力が高いからじゃないんです。適度に力を抜いて、集中力を低くして聴いているからなんです。
つまらない話になったら、気を抜いて、ああ眠いなとか。聴いてるような顔をしているけど、ぼうっとしていたりする。それで、自分に興味がある面白そうなところだけは集中して聞いて、話しが移ったらすぐに気を抜く、というようなことを繰り返しているんです。
気を抜いてることがバレバレだったら、後でお父さんに怒られるかもしれないから、顔だけはこう(聞いてる顔)やってるけど、心の中は別のこと考えたりしているんです。そうやって、適度に気を抜いてるから、30分もずっと座って聞き続けられる。つまり、幼い子供よりも、みんなは気を抜くのが上手なだけなんです。
質問を見ると、「うっすらと考え事を」って書いてある。これは、集中力が高くない状態だ、ということができます。ほんとに集中力を高く聞いてたら、疲れてしまって15分もしたら居眠りが出ます。これはみんなしていることだ、と言えるんですね。
ところが、この人は集中力が無いことで困っている。なぜ困ってしまうかというと、集中しなくていいところで集中していて、気を抜いてはいけないところで集中が切れているからです。
集中がアクセルで、気を抜くところがブレーキだとすると、この人はアクセルワークが下手だということなんです。困っていない人は、集中とリラックスのアクセルワークを上手にしている人だということなんです。
ダンスを習っているとき、ここは集中して聞く、ここは気を抜いていい、ここは聞く、ここは気を抜く……、厳密に言えばそういう場面の繰り返しなんです。それが、集中するところを間違っちゃうから、「フォーメーションを変えます」というの聞き逃してしまった、みたいなことになる。
それまで一生懸命ガーッて聞いてたのに、大事じゃないことを一生懸命聞いていて、大事なところに差しかかるころに(集中力切れた、ああ……、今日の夕飯なんだろう)ってなるからトンチンカンなことになるんですね。
みんなだって夕飯のこと考えてますよ。でも、大事なところでは、考え事するのをやめてきちんと頭に入れている。だから困らないのです。この人はそれを聞き逃す。
どうしたらいいかというと、力を入れて聞く所と、力を抜いて聞く所のメリハリを意識的につけていけばいいのです。
別の言い方をすれば、基本的にあまり一生懸命になりすぎない、リラックスしてちょっと斜に構えて指導する人の話しを聞いていて、たまにここが大事だというところだけ真剣に聞く、リラックス7、真剣3くらいの割合でいいんじゃないですか。あるいはリラックス8、真剣2でもいい。
今回、簿記部の8期生が1回目の講義を受けましたね。
簿記部1期生は、「眠る1期生」と言われてました。先生の話が始まったらすぐ寝る。それで先生は頭をピコンって叩く玩具を持ってきて、起こしながらやらないと、寝ちゃって困ると言っていました。
ところが1期生は成績抜群だったんです。1期生のなかから税理士が何人も出ています。
2期生は真面目で、眠る人が一切いない。でも成績悪かったんです。
どういうことかというと、2期生は寝てはいないけど、覚えてもいない。リラックスしっぱなしで、集中力が少なかったから寝ないでいられた、そういう2期生だったんじゃないか。そんな感じがします。
1期生は、集中力が高い人ばかりだったと言えるでしょうね。あまりにも集中しすぎて疲れてよく寝る。集中して寝て、集中して寝て。それが1期生でした。
そういうことで、集中どころを考えてみてください、意識的に集中するところとリラックスするところを作ってみてください、というのが答えです。
どちらかというと、やさぐれた気持ちがこういうときは大事かもしれませんね。
真面目にやろう! と思うと、「一生懸命聞くぞ、聞くぞ、ああ、聞き漏らしちゃった……」となってしまう。けれども、やさぐれた気持ちは、「面白いところだけ、かいつまんで聞こう」と最初から力を抜いて、大事なところ探しをやりながら話しを聞くことができます。
ともかく考え事をしている自分を許しましょう。ここだというときだけ、聞く。そういうふうにしてやってみてください。
(2019年2月1日掲載)
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