第263回「利他心について」


【質問】

 利他心のことで、最近思ったことなんですけど、自分がしてもらって嬉しいことを人にするというのが利他心の一つかなと思うんですけど、最近、自分が「こうしてもらったら嬉しい」と思うことを誰かにしたときに、それが逆効果になってしまったり、その人が嬉しいというよりその人を困らせてしまったり、逆に、嫌な気持ちにさせてしまうということが、何回かあったんですけど、それは、そもそも自分がしてもらって嬉しいと思ってること自体が、本質的に間違っている、ということでしょうか。――具体的に挙げていないからわかりにくいかも。

 
 
【お父さんの答え】
お父さん:

 いやいや。そもそも利他心は自分がしてもらって嬉しいことを人にするということじゃないですね。もっと心のインフラに近いようなものなんだと思います。
 例えば、畑、田んぼでの仕事とか、山仕事とかで考えるとわかりやすい。
 畑、田んぼの作業とか山仕事というのは、自分の名義になっている自分所有の田んぼ、畑、山であっても、やっぱり、自然の中にあって、地続きで他の人の畑と同じ場所にある。
 そうなってくると、自分のものだから自分の好きなようにしていい、ということはないですね。やりたくないからといって草ぼうぼうにしていたら、害虫が大発生する元になってしまったり、カビや病気の元になってしまったりして、近隣の畑に迷惑をかけることになります。あるいは、勝手に水を引き込んだり、勝手に水を隣の畑に流したりすることも許されない。
 つまり、自分で作る畑、田んぼでも、常に近隣との調和を考え、他の人の利益を考えながら、自分の畑田んぼの作業を采配するという、そういう意味の利他心なんだよね。
 
 春になって田植えのシーズンが近づいたら、田んぼに水を引きます。田んぼを作るひとは、誰でも水を引かなきゃいけない。そのとき誰から、どの順番で水を引いていくか、みたいなときに利他心が必要なのであって、自分優先ではなくて、調和をとれた判断ができなければならない。
 要するにどうしても必要なものをどうやって分けるか。誰にも必要なことはわかっているのだから、そういうときこそ自分よりも他の人を優先してやりましょう、というときが利他心のベースなんだよね。
 
 それと違うのが、チョコレートを自分が食べて美味しかったから、チョコレートをみんなに食べさせたい、というのはちょっと利他心とは違うと思います。
 もっと別な言葉を使ったほうが良いのかなと思う。

 
 
質問者:

 今、自分がそういうふうに思って行動しようと思ったら、それは利他心とは違う?

 
 
お父さん:

 それは何かプレゼントしたいな、ということであって、「よし、利他心でプレゼントしよう」というのは、本来の利他心とは違うように思います。

 
 
質問者:

 利他心とは関係ないところとして、自分がその人のために――と言ったら偉そうですけど――その人は嬉しいと感じてくれるかなと思ってしたことがそうならないというのは、その行動自体が、間違っているんでしょうか?

 
 
お父さん:

 おそらく、そうだろうね。その行動以前に、その人がどういう人かという認識がちょっと間違っていたということのほうが大きいだろうね。

 
 
質問者:

 そっちの人は嬉しいかもしれないけど、この時この人には嬉しくない、ということがあるんですね。

 
 
お父さん:

 そう。そういう認識はしっかりしないと。
 例えばうちに来た人が「みんなのために」ってよく言うけど、「みんな」って例えば誰。みんなと一口に言っても、1人ひとりは随分と違う。みんなに共通することってあんまり無いよ、と言いたくなることがある。
 この人にとっては嫌なこと、この人にとってはプラスなこと。「みんな」と言った途端にわけがわからなくなっちゃう。
 「みんなのために」って簡単に言う人は、そっちの人とこっちの人の違いを認識できていないから「みんな」って簡単に出てしまう。認識できてたら不用意に「みんな」って言えない。
 そもそも利他心というとき、その言葉のイメージからすると、目の前の人に使う「利他心」というよりは、まだ見ぬ人に対しての「利他心」を持って生きていくというふうに考えたほうがいいように思います。

 

 

(2020年11月20日掲載)









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