「人との間にしか幸せはないこと」
お父さんのお話を聞いて、私は、小さい頃から、楽しいという気持ち、幸せを感じられたときは、いつも、1人でした。誰もが寝静まっている夜中とか、誰も起きていない明け方の神聖な空気とか、真冬の夜の森の中で見る星空とか、誰も自分のことを知らない、誰からの連絡も来ない、言葉の通じない外国で1人になるとか。世界にたった1人、自分しかいないような解放感の中で、生きているという実感や、楽しい、喜び、幸せという感情を初めて感じられました。
イギリスに新しいポストが新設された。大臣のポストです。その大臣の名前が「孤独大臣」。何する人かというと、孤独が身体を蝕むから、その孤独対策をするための大臣なんだそうです。
孤独になっていると、1日に15本煙草を吸っている人とおなじくらいの健康被害があるということです。なんで煙草が出てきたのかはわかりません。年寄りが孤独でいると不健康になる。1人になったらどうするか。1人対策を考えるための大臣です。
孤独は人を不健康にする。1人では幸せを感じられないからです。それで病気になると、余計な福祉予算が増えてしまうから、病気にさせないためには、なるべく老人を孤独にさせないようにしたい。孤独な高齢者にセブンブリッジを教えて回るのか、実際、何やるのかわかりませんけどね。
少なくとも孤独にならないような手を打って行く。そのことで健康被害をなくしていくというポストです。
質問の途中で、余計なことを言いました。要するに孤独が幸せって、有り得ないということです。
(質問再開)
このことは、明らかに歪んでいて、おかしくて、普通じゃないです。客観的に見たら、凄く寂しくて、孤独で、理解不能だと思います。自分でも理解不能です。
私がこのようになってしまったのは、小さい頃から、無意識に耐え続ける生き方を強いられてきたからですか。自分が求めてしまう幸せは、明らかに間違っているという自覚を持つことから初めて、本当の幸せを知る、感じられるようになるのだ、人の中にいるのだと、努力することが大切ですか。今からでも、そうやって自分を強制していかないと、人間味がなさ過ぎて、大変なことになりますか。あまりに普通の人間から逸脱していると思います。
【お父さんの答え】
孤独が好き、というのは普通じゃないですよ。じゃ、なぜ孤独が好きになったか、孤独なほうが幸せになっちゃったのか。
答えは簡単です。普通の人は、生まれたばかりでは赤ちゃんですから、お母さんが大好きです。もっと可愛がってもらいたい、とずっと思っていますね。お母ちゃん聞いて、聞いて、お父ちゃん聞いて、聞いて。その願いを凄く強く持っています。
聞いて、聞いて、聞いて。
「後で」「だめ」「そんなこといってないで、それしなさい」「あれしなさい」「そんなこと無駄だから聞かない」
親からこういう対応ばかりされていたら、そういう願いをもつこと自体が駄目なんだな、と思うようになりますよね。
誰とも関わらないで面白いこと見つけよう。拗ねた。求めなくなった。絶望した。諦めた。となりますよ。だけど、その前は、絶対に親との関わりを求めていたはずなんです。
これを元に戻すにはどうしたらいいか。
そういう元を作った家庭環境がおかしい、その犯人は誰だ、犯人は母親だ、父親だ、と自分の中で断罪する。あれが犯人で、自分の心を拗ねさせた、と自分自身で確かめたらいいのです。
ちょっとね、もし、いま一番前にいるななほが拗ねて、3年生教室の隅っこで1人でいるとします。それが今この人の状態。「1人が良いんだもん」と言っている。
こういう時に、何て声をかけますか。
「どうしたの?」
「嫌だ。何でもない。行かない」
そう言って拗ねている。
では、そういう子に声をかける次の言葉は何でしょうか。
「どうしたの、何でそんなに拗ねてるの? 聞かせて」
そう言ってみたら、だいたいこう答えるはずです。
「だって誰ちゃんが、私にこう言ったんだもの」
それを聞いて、こう答える。
「それは酷いね、それは酷いよ。とんでもない話しだね」
「そうでしょ」
そんなふうに自分のつらさを共感してもらえた、と思えたらもうそれで気が済むんです。
そうなった上で「じゃ、遊びに行こうか」と声をかけたら、行こう、となりますよ。
必ず、聞いて欲しい悲しい訳があるんです。
酷い目に合わせた人がいて、そりゃ酷かったね、と言ってもらいたい気持ちが深いところにある。
そして、自分に共感してもらいたい気持ちがある。
その共感してもらいたい気持ちを話して、肯定してもらい、もっと聞いて、もっと聞いてという気持ちを満足させてもらったら、もっとたくさんのことを、そしてもっと深いことをもっともっと共感したい、という気持ちになります。
人と気持ちを通い合わせる、深い共感をともに味わう、それが「幸せ」です。
だから、この人の場合、もう根が深くなってますけど、自分が受けた酷い仕打ちを聞いてもらう、どれだけ孤独にされてきたのか、どんな悲しさを味わってきたのか、たくさん聞いてもらって、自分に共感してもらう。そして拗ねる気持ちを捨てていく。よそを向いた気持ちを真っ直ぐにする。
そういうことを重ねていったら、ふつうの人として、誰か好きな人と一緒にいること、一緒に体験することが楽しくなりますよ。1人でいるより好きな人といるほうが幸せを感じるようになりますよ。それが答えです。
(2020年3月20日掲載)
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