第273回「目の前のことに集中できない・利他心と利己心について」


【質問】

 集合でしてもらった、「その人のスピード感と人生観は深い関係がある」という話がすごくわかりやすかったです。
 私は、まだ、どこか遠い先に幸せがあるように思う人生観なんだなと思いました。
 作業をしているとき、集中しようと思ってやっているのに、半分くらいは他のことに意識が飛んでたりします。そういうときに、目の前の幸せではなく、遠い先の幸せを思う人生観があるからそうなってしまうんだなと思ったんです。

 その人生観が入っているから、集中できなくなっちゃうんだなと思って。
 今、目の前の人とか、目の前の作業に全て、自分の全部を出し切ることのなかに、幸せがあるんだっていう人生観に変わったら――どうしたらいいかわからないんですけど――。
 ひとまず、目の前の人や、目の前の作業との間により良く関係を取るというふうにしようかとは思うんですが、それでいいでしょうか。

【お父さんの答え】
お父さん:

 目の前のことに集中できるかどうかで、一番のポイントになるのは、利己心で生きているか、利他心で生きているか、ということだと思いますね。
 身体が動かないのは、まだ利己心の気持ちの中で生きていると思う。
 今、目の前の人との間でいい関係をとる、というけど、それも間違い。
 一見、それはいいように思うけど、好んで目の前に置きたくなっちゃう人は、利己心に酔っている人なんだ。自分に近いからね。それで、利己心の強い人と関係をとるようにしていて、自分は目の前の人と良い関係がとれている、と思ったら大間違いでしょ。

 あのね――だから、利己心か、利他心かと言うのは、非常に、わかりにくいよね。精神的な面で理解しようとすると、わかりやすそうで、わかりにくい。
 ところが、その人の作業中の動きを見ていると、即、わかってしまう。
 この中には、やっぱりみんな発展途上だから、利己心ぽいひとも中にはいるし。利他心のほうにぐっと向いている人もいる。それを意識できている人もいれば、まったく意識できていない人もいる。
 そういう中で、無評価でいつでも目の前の人に合わせようというのは、ちょっと間違いなんだね。
 自分が利己心をまだわからないとしたら、利己心の世界というのはどういう世界なんだろうか、ということを、本当に真剣に考えないといけないと思うね。
 なのはなにいて、進化の速い人と、進化の遅い人がやっぱり、いる。進化の速い人というのは、ぐっと、いきなり利他心のほうに来れる人なんだよね。
 来れる人と、なかなか来れない人がいる。
 それは何かというと、いままでどんな世界で生きてきたか、ということが一つ。
 それから、その人の持ってる個性的なもの。それこそ生まれつきの個性的な考え方というか、その人のありようというものが、一つ。

 だから、1年ここにいても、さっぱり動けない人もいるし、利他心がなかなか入らない人がいる。そうかと思えば、最初はひどい荒れ方をしていた人が、3、4か月でガラッと音を立てるように変わっていって、半年過ぎたらまるで別人みたくなっちゃう人もいるね。それは見ていてわかるでしょ。
 それは何の違いかというと、利己心がどれくらい入っていたか、入っていないか、その一言で言えるくらい利己心か利他心かというのは大きな要素なんです。
 そういう意味で、あなたは利他心がまだまだ心の中に入っていないんだと思うんだ。
 それはやっぱり、今までの考え方、今までの生き方が深く影響していると思う。

 何ていうんだろうな。いまはどんな学校の中でも、普通のアルバイト先の世界でも、言ってみたら、自分さえ良ければいいというと言葉が悪いけど、まさに自分のことが大事でしょっていう利己心で占められている世界だよね。
 まあ、小学校から中学受験があったり、中学では高校受験があったりして、自分の成績、偏差値というのは、みんなの中でどのくらいのポジションに居るか、がいつも示されるし、それが重要なことになっている。
 だから、みんなの成績が良くなってしまったら自分は相対的に成績が落ちてしまうわけだから、自動的に自分だけみんなの上であってほしいと思うようになり、そういう願いというのは、無意識に生まれちゃうんだよね。まさに構造的に利己心を育てるような学校教育になっているんだね。
 で、先生の言葉も、生徒に順番をつけて、偏差値の高い学校に行かなければいけませんよ、ブランド大学に行かないと幸せにはなれませんよ、立派な人間になれませんよ、みたいなことを進学校では必ず言うので、もう生活そのものが、利己心のみの世界になっちゃう。

 昨日、FIRE(Financial Independence, Retire Early 早期リタイア)の話をしたけれども、まさに、働かされる人はアホな人、損な人で、理想は働かないで金利生活をする人だというような考え方が本になっていたり、そういう生き方がいいなんていう話しが出回っている。みんながそういうなかで生きているのに、利他心になったら自分は損しちゃうじゃない、なんで損しなきゃいけないのというふうになったら、そこから抜けられなくなる。利己心から利他心へと行けなくなる。
 そういう気持ちの人がなのはなに来て、なのはなで利他心で動いてください、と言われても全く動けなくなっちゃう。まさにそういう状態だと思いますよ。
 自分の中に、見えにくいかもしれないけれども、なかなか意識しにくいかもしれないけども、そういう利己心がはびこっていると気付かなきゃならない。その利己心を完全に手放さなければ、幸せにはなれない、そう断言しておきます。

 それから、進化するということもできなくなります。利己心で生きていたら、人格的に進化することができないです。
 そして、依存も手放せない。依存が手放せないのが一番困るね。依存症の人は、かわいそうだけど、「利他心を持たなきゃ生きられない」と宿命付けられてしまった人なんです。依存症じゃない人は、利己心でもまったく普通に生きられます。そういう人に利他心を持ったほうがいいよ、といっても鼻で笑われるくらいかもしれない。
 けれども、依存症を持ってしまった人というのは、これは形を変えながらでも、一生つきまとってくるものなので、その依存症を断ち切るためには利他心を持つしか他に方法がないのです。
 利己心を持ちながら適当に生きていきます、と言って通用しそうに思うけれども、必ずどこかで足元をすくわれる。依存症に生活を断ち切られる。なんでもかんでも、価値観、人生観を取り替えなきゃいけないんです。利他心の人生観に取り替えなきゃいけない。

 それから、ある意味、もっと美意識を鍛えなきゃいけない。美意識のある世界に行かなきゃいけない。
 僕らがやってるウィンターコンサートの音楽劇では、ストーリーがあり、音楽があり、ダンスがある。そんなウィンターコンサートをやってたけど、僕もお母さんも、徹底して美意識を求めている。ほんとに徹底して、面白くて、話の展開が奇想天外で、奇抜。だけど、美しさがある。そして真実味がある。そして何より利他心がある。
 僕らがやっているコンサートは、徹底していつも利他心の世界を伝えるためのステージなんです。そこに徹底している。どの回のウィンターコンサートも例外はないです。
 僕らは、そういう世界でしか生きられない。ちゃんと依存から離れて生きていくということは利他心を持っていないとできない、ということを自分たちでもそうしたいし、それをコンサートという形で世の中に訴えてもいく、ということなんだよね。

 質問を聞いていると、まだまだものすごい迷いの中にいると感じるね。利己心と利他心だったら誰だって利他心でしょ、とここの場にいたら簡単に言えそうだけど、まだまだ利己心の中にいます。

――それはわかります。

お父さん:

 それだといつまで経っても進化しないし、これだけ材料があって、環境が整っているのだから、よく考えたほうがいいですね。

(2021年5月6日掲載)









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