私は物心ついたときから7歳頃まで、お風呂に入るときはいつも湯船の中でオシッコをしていました。いけないこととわかっていたし、親に知られたら叱られるし、自分でもそのことに恥ずかしさでいっぱいでしたが、止められませんでした。
同じように、爪を噛む癖もやめられませんでした。私はどうしてこういうことを止められなかったのでしょうか。
【お父さんの答え】
それは不安が大きかったということだと思います。特に幼いときには親が絶対的な存在ですから、親子の気持ちが通っていなかったという状況が生まれていて、不安が大きくなっていたと考えられます。
湯船でオシッコしていたというのは、僕の同級生にもいました。みんなの中で、自分もそうだったという人、手を挙げてみてください。やっぱりたくさんいますね。
僕の同級生でおしっこをしていたという人は、愛情に恵まれていない人でした。事情があって、父親がかなり年齢がいってからの子供で、そういうことも影響したと思いますが、子供の気持ちを汲んでもらえない状況だったのです。それで親に対しての欲求不満とか、寂しさとかが、かなり強くありました。こういう場合、子供には責任がありません。
親とうまく気持ちを通わせることができなかったといったときの内容は、それぞれ違うとは思います。例えば親が強く叱りすぎるとか、折檻をするとか、精神的に逃げ場がないような叱り方をするとか、習い事を強要されているとか、情緒的にあまり子供の気持ちに沿うことができないとか、いずれにしても親子とも共感して気持ちが通う、という状況が作れない関係だと、子供を不安が大きいなかで生活させてしまうことになります。
そういう種類の不安が、浴槽でおしっこをさせてしまうのだと思います。
おしっこと不安のストレスというのは深い関係があります。
健康な若い人であれば、夜、就寝前にトイレに行っておけば、ぐっすり朝まで眠るというのはごく当たり前のことです。ところが、摂食障害の女性になると、夜中に3回も、4回もトイレに起きるという人が多いです。
摂食障害でなくても、健康な人が極度な緊張状態に置かれると、やはり夜間に何度もトイレに起きてしまいます。
もっといえば、なのはなファミリーには5分おきにトイレに行きたくなってしまうという状態で入居してきた女性がいます。なのはなファミリーまで来る間に飛行機、電車に乗らなければならないので、5分おきにトイレに行けませんから、やむなくオムツをしてきました。
その女性は入居後もしばらくはトイレから離れたところでは活動できなかったのですが、やがて時間がたち、不安が薄くなっていくに従ってトイレに行く間隔が長くなっていって、卒業するときにはトイレに通う頻度は普通になっていました。
こんなふうに、おしっこをしたい欲求と不安の大きさは相関関係があります。
そして、体温に近いお湯というのはさらにおしっこを催すような効果があります。2、3歳の子供からオムツをはずすとき、トイレに座らせてもなかなかおしっこをしないようであれば、ぬるま湯をコップに汲んでトイレに座った子の股間にかけてやると、そのぬるま湯につられてすぐにおしっこが出ます。
そんなふうですから、子供で不安がある場合、体温に近いお湯の中にはいったら、止めようもなく出てしまう、というのは不思議ではないというか、むしろ自然なことのように思います。
爪を噛む癖をやめられないというのも、やはり不安な気持ちの逃がし先としての癖でやめようがなかったのだと思います。
(2023年5月11日 掲載)
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