第23回「人といること」


〈質問者〉

質問

誰かに何かをお願いすること、助けてもらうこと、誰かの時間を取ってしまうことに、ものすごく大きな罪悪感を感じてしまうのは、どうしてですか。
また、1人でいうことを、寂しいとか悲しいとか感じないことは、おかしなことですか。
どうしたら、誰かと一緒にいたいと思えるようになりますか。
教えていただけると嬉しいです。

 

〈お父さん〉

答え

人に依頼ごとをするときに罪悪感を感じるのはどうしてでしょうか?
それはこの人が、誰かに何かをお願いされて、自分の時間をたくさん取られてきたからだと思います。

自分の時間をたくさん取られて、すごく嫌な思いをしてきた。端的に言えば、母親に、父親に、学校の先生に期待されて、自分の意思を殺すようにして勉強してきたとか、こういうのを達成しなさいと言われて、そのことで時間を無駄にしてきたな、時間を取られて損したなっていう思いがあるのではないかな。

自覚的じゃなくても、無意識的に、自分の時間を人に捧げ尽くして、自分らしく生きてこなかった、静かな怒り、悲しみが自分の中にいっぱいあるから、自分の用事でお願いすることで、人の時間を奪うことになったら悪いな、ってもの凄い深い罪悪感を感じるということです。
これは自分の時間がなくなった悲しみとか、徒労感がなくなったら、自然に消えてなくなると思います。

1人でいることを寂しいと思わない?
それは、おかしなことですね。
誰でも1人になりたい、と思う瞬間はあります。人の中にいて苛々したり、頭が混乱した時は、1人になりたいなってこともあるでしょう。
だけど、いつも1人でいたほうが楽だって思ったり、1人でも寂しくないっていうのはおかしな感情、おかしなことですね。

喜び、楽しみは、1人よりも誰かとやったほうが楽しいに決まっているんです。
おいしいものを、誰にもやらないで1人で食べるのと、みんなと「おいしいよね」って分け合って食べるのじゃ、おいしさが全然違う。好きな人と、おいしいねって言いながら食べた方が、おいしいに決まっている。

勉強も、自分の知識を膨らますためにじゃなくて、誰かを喜ばすためです。
……例えば、いま新車は、燃費のいい車作りの競争になっています。
1リッターで20キロ走ったら、ガソリン代が半分になって嬉しい、と作った車を使うユーザーがいる。それが、リッター30キロ走るようになったら、ガソリン代が3分の 1、嬉しいわ、助かるわって喜ばせることができる。
うわー嬉しいな、もうガソリンをあまり使わなくて済む、環境も汚さなくて済む、って喜ぶ人がいるから、もっともっと燃費を良くしようと努力を重ねる。

ありとあらゆる仕事、ありとあらゆる勉強は、自分のための勉強じゃなくて、自分も楽しむけれど、自分が自由になるための勉強でもあるけれど、究極のところ、人のためですよね。人のため、何かに奉仕するための。

いま流行っている「いつやるの?」「今でしょう」っていうフレーズを作って、テレビ出ずっぱりの、現代国語のカリスマ教師がいます。予備校の先生ですね。
この人は、もの凄く勉強のできる人、もの凄く頭のいい子は、字がことごとく汚い。ノートも汚いといいます。

頭のいい2番手グループの人は、字が綺麗で、ノートも綺麗。東大生のノートは綺麗で真似したらいいだとか言われるけれど、それは本当に頭の良い人じゃなくて、2番手グループ。本当に頭が良い人のノートは見られたもんじゃない、といいます。
誰かに、「そういう、頭のいい子を育てるには、どうしたらいいか?」って聞かれると、「それは、もう3歳から5歳の間に決まってしまいますね」。

受験生になってからも、勉強の勢いが違う、頭のいい子を育てようと思ったら、幼児教育するんじゃなくて、その子の興味を満足させてあげる。一緒に遊ぶ、調べる、そしてどこかに行く楽しみ、新しいことを知る楽しみ、創意工夫をする楽しみを覚えさせる。すると自然に、自分で見つけたり調べたり、工夫しようとする。
そうしたら、その楽しみからはもう離れられないから、自分から知ろうとする、自分で調べる、自分で工夫をする子になる。

小さな子供は、家族と一緒にいるのが一番楽しい、と思いますね。
ところが中には、家族といるよりも1人のほうがいいという子供がいて、そうなると、大人になっても1人のほうがいいし、1人でも寂しくない。
家族と一緒にいると、不当な要求をされる。自分の非力さを感じさせられたりするから、いたくないと思うわけです。

「1人でいることを寂しいと感じない」と思う人は、家族で一緒にいた、3歳から5歳の時、強烈に楽しいと思わないといけない時に、家族といて苦しかったのです。
本当は、人といて、すごく嬉しかったりすることや、人と遊んで、充実して、楽しい事はいっぱいあります。その楽しさを知っていたら、1人だとつまらなくなっちゃいます。

どうしたら、誰かと一緒にいたい、と思えるようになるか。
これは、誰かと一緒にいるから楽しい嬉しいというのを、今から、遅まきながらでも味わうしかない。
無理矢理でも味わっているうちに、楽しいことがちょっとずつ繰り返しあるうちに、繰り返しやる中から、少しずつ感じているうちに、段々本物の感情になって、「やっぱり1人よりも、みんなといるほうがいいな」っていう気持になっていくと思います。

なのはなファミリーには、個室は設けていません。
最初から個室を設ける気持はなかったです 。
入所するとき、よく親御さんが、うちの子は対人関係が苦手なので、個室がないでしょうかって聞かれますが、むしろみんなといることに慣れていくうちに苦手意識が取れていきます。

卒業生は、なのはなにいるのが一番嬉しい、ホッとする、私の帰る場所だってみんな言います。大勢でいたときは辛かったけれど、卒業して1人暮らしになってよかったなんて卒業生は思っていないです。
つい昨夜、届いた卒業生からのメールの一部を読んでみます。

 

私は今、
すごく恵まれた生活をしています。
帰る家があって本当に幸せです。
100%軌道修正ができます。
なのはなファミリーがあるから私は前向きであり続けることができます。
お父さん、お母さん、私に家を与えてくださって本当にありがとうございます。
いつも私はそこからスタートできます。私の原点です。みんなと同じ原点です。
そして、なんだかんだ言っているけれど、
なのはなの外の価値観をもった人にもまれています。
なんだこの~! と思うこともあるけれど、
その人達のおかげで気づかせてもらうこと、修正してもらえることがたくさんあります。
吸収できることも、利用? させてもらえることも、まだまだたくさんあります。
その人たちとの関係の中で私が行き詰まってしまうのは、
私の視野が狭い何よりの証拠です。

ゲームだな、と思います。
競争でも闘いでもないけれど、
自分の頭で作戦を立てて、イメージして実行する。
成功か失敗か、結果がでる。また、それをうけて、また作戦を練る。
その繰り返し。
次、相手がどうくるのか、今度はこう出てみよう。
さあ、上手くいくか?
そんな気持ちです。
本気で面白がって勝負してみようとおもいます。
自分がやられてしまうのは弱いからです。
弱いのは十分わかっているので、強くなります。
敵は私を強くしてくれます。結局、敵も味方もみんな味方のように思います。

はっきり具体的に気付いて、直して行きます。
人を見ます。よく見ます。きちんと聞き取ります。
物まねができるくらい見て、ききます。
失礼かな、くらいにそうしてみます。
封建社会、長年続いてきた暗黙のきまり、
何でもよく見てみます。
正しく認識する訓練をします。
いろんな社会を知って受け入れて幅広くなりたいです。
それが自由になることだと思います。

今週はこのテーマで行ってみます。

 

 以上がメールの抜粋ですが、なのはなに気持のベースを置いて、あえて外で磨かれて、大きく成長しようという気持が伺えると思います。
なのはなファミリーを大事にする気持、ここがあるからぶれないでいられる、正しくいられる、みんなのことも大事に思える。なのはなファミリーが追求している精神性、そういうものを大事にしているから、苦しくなくいられる、というのがよく伺えると思います。

それと、今回の質問の、1人でいたいということでいえば、この卒業生は、1人になりたいという気持ちはどこにもありませんね。人のいる社会の中で経験を積んで、怒られるなら、喜んで怒られます、直すべきところは直します、そうやって視野を広げていきます、軌道修正します、という心持ちです。
このメールの中に、1人でいたいです、という要素はない。人の輪の中に入って、軌道修正します。どこまでも人といるという姿勢です。
人はどこまでも、誰でもそうあるべきで、1人でいることを良いと思って、1人が悲しいな、寂しいなって思わないのはおかしいです。

やっぱり、人は人の中で生きていく、人の中で鍛えられもする、癒されもする。
あくまでも人といる存在が人だと思います。
人といることに喜びを感じるように、少しずつ、喜びを感じる感覚を磨いていく。

楽しい時には楽しいと言ってみる。
そうやって、自分に新しい感覚を覚え込ませていく。

味覚もそうで、人は味わったことのない味覚は、美味しいと思って味わうことができません。何度か食べているうちに、おいしいなと思うようになる。
感情もそうで、人といて、嬉しいなっていう経験がないから、人といて嬉しくてもよく分からない。だから、「分からないから私は嬉しくないです」じゃなくて、分からないから、分かろうとする。

さきほど3歳から5歳の遊びと言いましたが、例えば農業には、その遊びめいた要素がたくさんあります。
土いじりをしたり、竹で支柱を作ったり、紐で結んだり、畝を作ったり、砂山を作るのと一緒ですよね。面白いんだ、真っ直ぐだと嬉しいし、曲がっていたらあれって思う。

スポーツも、そういう面白さがいっぱいありますよね。ダンスにもあります。
みんなの衣装、日常的じゃないですよね。小さい頃、お姫様ごっこをしたみたいな、非日常的な衣裳でステージに立っています。
昔、むしろを広げて、何々ごっこをやりました。ごっこ遊びで楽しいな、面白いなっておもしろがる。
非日常的な面白さを感じようと思えば、いっぱい感じられる時間があると思います。
ダンスの練習をする時も、音に合わせて身体を動かす、表情を作るとか、ステージに出る練習がごっこ遊びみたいなものですから、それを利用して喜怒哀楽の感情を磨いてほしい。

色んなことに興味を持って動ける人になってほしい。
楽しい、悲しい、嬉しい、面白い。そういう感情の色、鮮やかな色んな感情を、高く、深く、広く、色濃く、持てる人になるように努力してほしいです。









第1回~第100回(クリックすると一覧を表示します) 第1回「縦軸と横軸について」
第2回「神様は何をしようとしているのか」
第3回「本で涙を流すことについて」
第4回「本を読んでも内容を忘れてしまうことについて」
第5回「時間をうまく使えるようになるには」
第6回「太宰治について」
第7回「摂食障害の人が片付けが苦手だったり、約束の時間に遅れてしまうのは何故ですか?」
第8回「自分のことを『僕』『おいら』と言うのをやめられなかったのは、なぜか」
第9回「おいしいカレーと、おいしくないカレーの違い」
第10回「楽しんで走る」
第11回「死ぬことへの考え」
第12回「『聞く』と『教えてもらう』」
第13回「頑張るフルマラソン」
第14回「他人の成功」
第15回「『今』という時間」
第16回「不安の先取り」
第17回「良い協力関係」
第18回「急に悲しくなる」
第19回「夢の持ち方について」
第20回「心の許容範囲」
第21回「疲れるのが怖い」
第22回「スポーツの勝ち負け」
第23回「人といること」
第24回「“好き”という気持ち」
第25回「何でも知っている」
第26回「舞台鑑賞が怖かったこと」
第27回「生まれ変わるとしたら」
第28回「一番感動した景色、美しい国はどこですか?」
第29回「好きな時代はいつですか」
第30回「体型について」
第31回「行きたいところ」
第32回「悲しくなったら、動く」
第33回「意志を持てないこと」
第34回「心を動かす」
第35回「恋愛できますか」
第36回「日記の重要性」
第37回「心配されたい」
第38回「ONとOFF」
第39回「いつも同じ態度で」
第40回「涙腺が弱い」
第41回「子供が苦手」
第42回「正しいことを通そうとして」
第43回「流されて生きる」
第44回「才能について」
第45回「身長は伸びますか」
第46回「否定感が強い」
第47回「ぐっすり眠れない」
第48回「見え方、感じ方」
第49回「強さについて」
第50回「自分の出し方」
第51回「身体の調子と気持ち」
第52回「何のために変わるか」
第53回「痛みを知る」/a>
第54回「投げやりな気持ち」
第55回「未完成」
第56回「相手を許す」
第57回「書けないとき」
第58回「甘いと甘え」
第59回「イライラしない」
第60回「落ち込んだ時」
第61回「生きているなら」
第62回「わからない問題は」
第63回「眠ること」
第64回「子育てについて」
第65回「夫婦で大切なこと」
第66回「自己否定について」
第67回「友達が欲しい人、そうでない人」
第68回「未来を信じる」
第69回「山を登ると」
第70回「リーダーをすると苦しくさせる」
第71回「自分から人を好きになる」
第72回「小さいころからの恐怖心」
第73回「お姉さんのような存在を」
第74回「作業に対して気持ちの落差が激しい」
第75回「大きな希望を持つとき①」
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第77回「夢について・集中力について」
第78回「やるべきことをできていなくて苦しい」
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第81回「高いプライドをつくるには」
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