第274回「仕事への心配と、自分が空っぽの人間だと感じることについて」


【質問】

 連休が終わって明日からまた仕事ですが、自分の仕事が終わってしまったり、何かのきっかけでまた自分が不調になってしまうんじゃないかと不安です。
 自分は中身のない空っぽの人間なので、それがバレないように取り繕っていますが、それがバレそうになると、もうどうでもいいという投げやりな気持ちになってしまいます。
 どうやって自分をキープしたらいいでしょうか。

【お父さんの答え】
お父さん:

 自分が空っぽというけど、性格が良くて、頭が良くて、仕事が早くてとてもいい子だと思っているよ。きっと職場の人たちもそう評価しているんじゃないかな。
 それなのに、どうして自分のことを自分で低く評価してしまうのか、ということをよく考えてみようよ。
 それは、もっともっと褒めてもらいたいという気持ちの裏返しなんだと思う。
 自分は求められたら、精一杯にどこまでも頑張り抜く覚悟があるのに、どうしてそこまで求めてくれないのか、と潜在的に不満があるんじゃないかな。
 気持ちが強くて、能力の高い頑張り屋のところがある人は、どうしてもそうなりがちだけど、もっともっと頑張るので、仕事でいい結果を出したら、もっともっと褒めてください、という気持ちが潜在的にあると思う。

 思い出してみたらいいけど、子供の時に、親にもっと振り向いて欲しくて学校の活動や勉強を懸命に頑張ってきたはず。それなのに、どこまで頑張っても、もっと頑張りなさいと言われるばかりで、どうにも褒めてもらったという実感がない。愛情が欲しくて、欲しくて、たまらなかったのに、満たされないまま子供の期間が過ぎてしまい、摂食障害を発症した。勉強を投げ出しただけでなく、人生も投げ出そうとした。
 そしていまなのはなファミリーにいるわけだけど、なのはなファミリーに来てから症状は治まり、勉強もして、資格を得て、いま立派な仕事に就いている。
 どうしてそれができているかというと、ここに来るまで満たされなかったものが満たされたから、と言えるんじゃないかな。

 

 愛情というのは、いつでも「理解し、理解されること」だと言っている通りで、理解されたと感じたから、投げ出したい気持ちをおさめて、真面目に取り組めるようになった。
 だけど、その子供の頃の満たされない気持ちは、今もまだ続いているんだと思う。だから、もっともっと理解してほしい、高く評価してほしい、褒めてほしい、という気持ちが強い。
 いくらでも頑張るから、もっともっと試練を与えてみてください、という気持ちだね。
 それが、仕事でも、まあゆっくりやりなさい、と親切にされると、何かこう自分が低評価されているような気持ちになってしまう。頑張らせてもらえない、ということは自分の能力を低くしか見てもらっていない、と感じてしまう。
 客観的に見ると、今の欲求不満的な思いというのはそういうことなんだと思う。

 そして自分が空っぽだと思うということに関してだけど、心の深い人というのはどれくらいの深さがあると思う?
 そして、空っぽの自分の心はどれくらいの浅さだと思う? ちょっと考えてみて。
 僕はこう思うんだ。
 心が深いという人でも、その心の深さは、文字数にしたらたぶん便箋の1行くらい。
 そして、自分のことを心が浅いというけど、同じく便箋の1行くらいで、ほとんど変わりがない。どうしてそう言えるかというと、心の働きはいってみれば頭で考えることだよね。
 人が考えることのできる長さは、1行くらいでしかない。
 どうしてそう言えるかというと、将棋指しを例に挙げるとすぐわかる。頭に思い描いた指し手を書いていくと、5六金、同角、同飛車というふうになるけど、もしそれを頭の中だけでメモをとらずに考えていったとすると、1行分も考えたら素人はもう覚えられない。普通の人は、五手か六手くらい先まで考えるのが精一杯だと思う。せいぜい、半行くらいしか読み手を覚えることはできない。
 心のあり方もそうで、心の中でいろんなことを無限に考えることができるようだけれども、一度に考えられるのは半行くらいのもの。
 何か考えをまとめるときには、文章にすればいいと言われるのはそのためだね。僕もみんなによく、考えるときは紙と鉛筆を持って考えてね、と言ってる。

 

 自分の半行を書いて、また1行を書いて、とやって半ページか1ページくらいになると、それを読み返してみて、ああ自分はこういうことを考えていたのか、とわかることが多い。
 だから、心の深さというのは、誰でも1行以内くらいのもので、みんな空っぽに近い。全く嘆く必要がないんだよ。
 それを、自分だけが空っぽのように思えてしまうのは、やっぱり愛情欲しさが募っているから、それが満たされないことで、自己否定に走りやすくなっているだけと考えたらいい。
 何度もいうけど、やる気のない人はそういうことにならない。やる気があるからこそ、もっともっと責任を負わせてください、そしてもっともっと褒めてください、という気持ちが強く出すぎてしまって、責任を負わせてくれない、褒めてくれない、それは自分がダメだからだと自滅するような崩れかたをしてしまうんだね。
 だから、そこをよく考えてほしい。やる気があるために、意識と無意識にズレが出てきているんだと思う。

 

 意識では、超やる気になっている。無意識で、褒めてもらえないことに不安になっている。
 だから、意識のやる気を少し落とし気味にして、無意識を不安にさせないようにする、というふうに持っていってはどうだろうか。そこにギャップをあまり作らないようにすると、意識と無意識にズレが起きないから、気持ちが安定すると思う。
 そして、ちょっとでも不安があったら、すぐにお父さんとお母さんのところに相談においで。いくらでも、褒めてあげるから。本当に大好きで大好きでたまらないんだよ。ちっとも心配することはないよ。

 

(2021年5月10日掲載)









第1回~第100回(クリックすると一覧を表示します) 第1回「縦軸と横軸について」
第2回「神様は何をしようとしているのか」
第3回「本で涙を流すことについて」
第4回「本を読んでも内容を忘れてしまうことについて」
第5回「時間をうまく使えるようになるには」
第6回「太宰治について」
第7回「摂食障害の人が片付けが苦手だったり、約束の時間に遅れてしまうのは何故ですか?」
第8回「自分のことを『僕』『おいら』と言うのをやめられなかったのは、なぜか」
第9回「おいしいカレーと、おいしくないカレーの違い」
第10回「楽しんで走る」
第11回「死ぬことへの考え」
第12回「『聞く』と『教えてもらう』」
第13回「頑張るフルマラソン」
第14回「他人の成功」
第15回「『今』という時間」
第16回「不安の先取り」
第17回「良い協力関係」
第18回「急に悲しくなる」
第19回「夢の持ち方について」
第20回「心の許容範囲」
第21回「疲れるのが怖い」
第22回「スポーツの勝ち負け」
第23回「人といること」
第24回「“好き”という気持ち」
第25回「何でも知っている」
第26回「舞台鑑賞が怖かったこと」
第27回「生まれ変わるとしたら」
第28回「一番感動した景色、美しい国はどこですか?」
第29回「好きな時代はいつですか」
第30回「体型について」
第31回「行きたいところ」
第32回「悲しくなったら、動く」
第33回「意志を持てないこと」
第34回「心を動かす」
第35回「恋愛できますか」
第36回「日記の重要性」
第37回「心配されたい」
第38回「ONとOFF」
第39回「いつも同じ態度で」
第40回「涙腺が弱い」
第41回「子供が苦手」
第42回「正しいことを通そうとして」
第43回「流されて生きる」
第44回「才能について」
第45回「身長は伸びますか」
第46回「否定感が強い」
第47回「ぐっすり眠れない」
第48回「見え方、感じ方」
第49回「強さについて」
第50回「自分の出し方」
第51回「身体の調子と気持ち」
第52回「何のために変わるか」
第53回「痛みを知る」/a>
第54回「投げやりな気持ち」
第55回「未完成」
第56回「相手を許す」
第57回「書けないとき」
第58回「甘いと甘え」
第59回「イライラしない」
第60回「落ち込んだ時」
第61回「生きているなら」
第62回「わからない問題は」
第63回「眠ること」
第64回「子育てについて」
第65回「夫婦で大切なこと」
第66回「自己否定について」
第67回「友達が欲しい人、そうでない人」
第68回「未来を信じる」
第69回「山を登ると」
第70回「リーダーをすると苦しくさせる」
第71回「自分から人を好きになる」
第72回「小さいころからの恐怖心」
第73回「お姉さんのような存在を」
第74回「作業に対して気持ちの落差が激しい」
第75回「大きな希望を持つとき①」
第76回「大きな希望を持つとき②」
第77回「夢について・集中力について」
第78回「やるべきことをできていなくて苦しい」
第79回「やるべきことをできていなくて苦しい②」
第80回「真面目さは何のために」
第81回「高いプライドをつくるには」
第82回「番外編:そうだ、お母さんにきいてみよう!」
第83回「相談、確認が多いことについて」
第84回「自信を持つ」
第85回「間の良さ、間の悪さ」
第86回「過去を美化してしまう」
第87回「統合力を高めるには」
第88回「見張られているような不安」
第89回「どうして人間だけに気持ちが必要なのか」
第90回「休日になるとやる気がなくなってしまう」
第91回「低気圧」
第92回「どうして動物を飼うの?」
第93回「自分を褒める話をするには」
第94回「眠れない」
第95回「ふいに恥ずかしくなる」
第96回「躾について」
第97回「壁をなくしてオープンになるには」
第98回「自分がオーラのある人になるには」
第99回「私のストレスは何?」
第100回「社会性を身につける」
 
第101回~第150回(クリックすると一覧を表示します)
第101回「依存を切り離す期間は? その後はどう変わる?」
第102回「依存を切り離すことについて②」
第103回「会話が理解できない・生きる意味」
第104回「何者にもなれないのでは、という不安」
第105回「一緒に長時間いられない」
第106回「人の気持ちを汲めない」
第107回「リーダーとしてちゃんと動くには」
第108回「仕事への情熱と、興味があること」
第109回「日々の習慣を持つ」
第110回「自分のアスペルガー的な要素について」
第111回「外見について」
第112回「芸術、情緒、愛情 心の深さ」
第113回「なぜ風俗業は禁止にされないのか」
第114回「生き難さを抱えていなかったら、どんな将来の夢を」
第115回「健全な家庭なら自我は育つのか」
第116回「自我を育てる」
第117回「説明が理解できない」
第118回「好きな花①」
第119回「好きな花②」
第120回「血を連想させる単語を聞くと」
第121回「社会性と、基本的な姿勢」
第122回「深い関係をとって生きる」
第123回「ノルマ感、義務感が強い」
第124回「野菜の収穫基準がわからなくなる」
第125回「自分を楽しませること、幸せに過ごさせることが難しい」
第126回「向上心を持てないこと」
第127回「アーティスティックな心」
第128回「野性味を取り戻す」
第129回「個人プレイからチームプレイへ」
第130回「すべてのことを高いレベルでやりたい」
第131回「なぜ、痩せているほうが良いと思われるのですか?」
第132回「予定が変わると、気持ちがもやもやする」
第133回「楽観主義者と悲観主義者の境界線」
第134回「上品に、笑顔で、美しく」
第135回「続『上品に、笑顔で、美しく』」
第136回「嘘をつけない」
第137回「お父さんが怖い 前編」
第138回「お父さんが怖い 後編」
第139回「見事やで」
第140回「頼まれごとが不安・時間に遅れる①」
第141回「頼まれごとが不安・時間に遅れる②」
第142回「頼まれごとが不安・時間に遅れる③」
第143回「大きな声を出すこと」
第144回「時間の使い方」
第145回「お腹がすく」
第146回「本を読む時、第三者の視点になってしまう」
第147回「罰ゲームの答えとユーモア」
第148回「アイデアが出ないこと」
第149回「気持ちと身体の助走」
第150回「花や動物を可愛いと思えない」
 
第151回~第200回(クリックすると一覧を表示します)
第151回「美味しいセロリ」
第152回「尊敬している人といると、あがってしまう」
第153回「考え事がやめられない」
第154回「認めてもらいたい気持ち」
第155回「寝汗をかかなくなった」
第156回「時間の不安について」
第157回「楽器を練習したい、本を読みたい」
第158回「疲れを認めたくない」
第159回「アトピーと蕁麻疹」
第160回「はっきりした人になりたい」
第161回「会話と、興味の深さについて」
第162回「思春期の不安定」
第163回「潔癖症について」
第164回「自尊心」
第165回「自分の身体のサイズ感をとらえるのが苦手」
第166回「兄弟を心配する気持ち」
第167回「自分の声への違和感」
第168回「野菜の調子が悪いと、自己否定してしまう」
第169回「好きな気持ちと、誤解をされることへの不安について」
第170回「トイレが近いことについて」
第171回「競争意識について①」
第172回「競争意識について②」
第173回「コンディションによって態度が変わる人、変わらない人」
第174回「恐がりなことについて」
第175回「テンション」
第176回「目を見ること、見られること」
第177回「よいお母さんになる10か条」
第178回「音楽と我欲①」
第179回「音楽と我欲②」
第180回「時間の使い方と焦りの気持ち」
第181回「自分に疑心暗鬼になって、不安に陥ってしまうのはなぜ」
第182回「有志の募集に手を挙げづらい」
第183回「緻密に」
第184回「いつも怖い」
第185回「体型に対するこだわり」
第186回「気持ちの切り替えが、うまくできない」
第187回「米ぬかぼかし作り」
第188回「評価すること」
第189回「堂々とした人に怯えてしまう ①」
第190回「堂々とした人に怯えてしまう ②」
第191回「耳が良くないこと」
第192回「限界」
第193回「物を簡単に捨てることができてしまう」
第194回「整理整頓、片付けができない」
第195回「次のミーティングは、いつですか?」
第196回「整理が過ぎるのは症状ですか」
第197回「人をもっと理解したいということについて」
第198回「体育の授業が怖くて、さぼっていたことについて」
第199回「完璧が怖い」
第200回「やるべきことに追われてしまいがちな気持ちについて」
 
第201回~第250回(クリックすると一覧を表示します)

第201回「正面から受け取りすぎることについて」
第202回「手持ち無沙汰にさせることが怖い」
第203回「生き物が好きで触りたくなる気持ちについて」
第204回「魚の食べ方について」
第205回「ステージで間違いがあったときは」
第206回「作業で焦ってしまう」
第207回「調理されて食べられる魚はかわいそう?」
第208回「頑張ろうとすることに疲れた」
第209回「自己愛性パーソナリティ」
第210回「期待について その①」
第211回「期待について その②」
第212回「アウトプットで生きる」
第213回「キャパシティを大きくしたい」
第214回「コミュニケーション」
第215回「秋が寂しい」
第216回「我欲と、自分を大切にすることの違い」
第217回「声を前に出して歌うには」
第218回「できる気がしない、と感じてしまう」
第219回「苦手なことをしている時間を苦痛に感じてしまう」
第220回「握力について」
第221回「喜び合うための全力」
第222回「リモコンの操作と、ゴミの分別が覚えられなかったこと」
第223回「相談をしたり、買ってもらったりすることが怖い」
第224回「ケアレスミスが多い」
第225回「恥ずかしさにどう対処するか」
第226回「きつく締められないこと」
第227回「豆掴みと羽根つきが、うまくできるようになっていた」
第228回「プライドを守り合える関係」
第229回「人間味を学ぶために」
第230回「リーダーをするときの不安と罪悪感」
第231回「幸せについて」
第232回「不思議ちゃんと言われていたのはなぜか」
第233回「話の絶えない人になるには」
第234回「サービスをする人になる」
第235回「ソフトボール部に入らなくてはいけない気がする」
第236回「ディストピアと野蛮人の村」
第237回「好きと言ってみる」
第238回「質問がまとまらない」
第239回「ソフトクリーム」
第240回「謙虚について」
第241回「人との間にしか幸せはないこと」
第242回「思いっ切り遊んだことがない」
第243回「癇癪について」
第244回「友達について その①」
第245回「友達について その②」
第246回「センスよく生きる」
第247回「根拠のない自信」
第248回「先生になること」
第249回「演じること、正直になること」
第250回「怒りと感謝の気持ちは共存しない」
 
▶第251回~
第251回「アメリカンドリーム」
第252回「悲しむこと」
第253回「限界までやってみる」
第254回「リーダーの向き不向きについて」
第255回「悲しくならない求め方」
第256回「人前に立つ緊張」
第257回「野菜の見方」
第258回「プライバシーについて」
第259回「寝相について(前半)」
第260回「寝相について(後半)」
第261回「変わっていくことについていけない恐ろしさ」
第262回「速く書く事」
第263回「利他心について」
第264回「集中力について」
第265回「読書について 解釈と鑑賞」
第266回「年齢、役割に見合った振る舞いについて」
第267回「相手に喜んでもらいたい気持ちと、自分が幸せを感じることの怖さ」
第268回「相手を幸せにするということについて」
第269回「シンプルであること」
第270回「人のために動くとき」
第271回「周囲の人や家族のなかで浮いている感覚があったことと、個性について」
第272回「楽しませる人、発信する人になりたい」
第273回「目の前のことに集中できない・利他心と利己心について」
第274回「仕事への心配と、自分が空っぽの人間だと感じることについて」
第275回「理解されたいという欲求が強かったこと」