米ぬかぼかし作りについて
米ぬかぼかし作成中に、白いカビと黒いカビが生えることがあります。どちらのカビも良いカビ、良い菌だと理解して良いですか?
もし黒いカビが悪いものであればその部分(表面のみ)を取り除き、水分量の調整やかき混ぜるなどを行い、その米ぬかで作り直しても良いでしょうか。
現在の作り方以外に良い方法があれば教えていただけたら嬉しいです。
現在は水と米ぬかを混ぜ、密閉して3日間ほど寝かせています。指で突くと崩れる程度に、手で固めています。
【お父さんの答え】
なるほどね。密閉して3日間。そして、黒いカビと白いカビが生える。
まあ、米ぬかの堆肥ということですよね。米ぬかと水を混ぜるだけで、寝かせて――。
「腐る」っていうのと、「発酵する」というのの違い、度々言っていますけど、人間に役に立つのが「発酵」で、役に立たないのが「腐敗」。
いい匂いがするのが「発酵」で嫌な匂いがするのが「腐敗」。じゃあ、黒いカビとか白いカビはどうなんだろうかと考えたときに……僕はあまりカビが好きじゃないな、と思うのでね、これは良くないんじゃないかな、と思うんです。うまく行ってないんじゃないかなという気がします。正確にはわかりませんけどね。
今の時期に、発酵させるというのはかなり難しいですね。というのは、もう真夏の陽気ですからね。6月になったばかりですが、すでに気温30度という真夏の陽気が何日もありますから、こういう陽気の中で、何かを上手に発酵させるというのは難しい。
みんなは味噌を作っていますが、米麹を発酵させたのは寒いうちですよね。3月のうちに味噌作りの仕込みは終わらなきゃならない。なんでかというと、人工的に蒸して電熱器で温度を上げるならいいのですが、全体的に気温が高くなってしまうと、いろんな菌が活発に動いて、カビとか菌が生えやすくなる。
だから、梅雨の時期はジメジメしていろんな菌が生えやすいでしょう。いまは難しいんじゃないでしょうか。
それと「密閉」というのが、どうなんですかね。米ぬかと水を混ぜ、密閉して、と言いますが、◎◎ぼかしというような、ぼかしを作るのが流行って菌を売っていたりします。それは、空気に触れさせないで作るぼかし菌、と言っていたのがあります。これに関しては、いいものだと言われている割には普及しない。どうしてかというと、矛盾があるからでしょうね。
菌の中には密閉した酸素のないところで動ける菌と、酸素がないと動けない菌があります。だいたい酸素がなくて動ける菌というのは悪い菌が多いですね。良い菌は、酸素がないと動けないんですね。だからほとんどの人間に役立つ菌は、密閉を好まないんですね。
1回発酵して菌が良い状態になってくると、菌は餌を必要とするので、僕は野菜くずを入れたり、魚を入れたりとか……、そういえば、あんなちゃん、どこかでやっていなかったっけ、魚のアラの堆肥作り。あんなはもっぱら桃のために堆肥を作っているけれど、あんなから菌を分けてもらって、あんなも魚を発酵させるノウハウを知っていますから、あんなに菌を分けてもらうといいでしょうね。
菌が魚を分解するとき、すごい力だよね。小さな魚の骨は、すぐに形がなくなっちゃうでしょう。菌に分解されて。米ぬかだけじゃなくて、いろんな材料を入れて、割とダイナミックに肥料を作っていいんじゃないかな。
こういう、ぼかしを作るって、最初はすごく大変なんですよ。失敗するんです。しかし軌道に乗ったら、割に簡単に良い循環で回る。軌道に乗るまでが大変ですね。
人間にとって役に立つか役に立たないか、人間が匂いを嗅いでみて、いい匂いだなと思ったら発酵だし、嫌な匂いだったら腐敗ですとさっき言ったけど、この「人間にとって」というところがすごく好きなんですね。
全然、関係ありませんが、もう一つ、蝶と蛾の違いというのも大好きですね。蝶と蛾の違い。人間にとって可愛いなと思うのは蝶、気味が悪いなというのは蛾なんです。
蛾か蝶か、怪しいな、っていうのも中にいるかな。
そう思ったら、毛が生えてるのは蛾です。で、昼間飛ぶのが蝶で、夜に飛ぶのが蛾です。だから、夜の酒席の場でお姉さんが「どうせ私は夜の蝶」と歌っているのは嘘です。蝶は夜飛ばない。夜に飛んでいるとしたら、それは蛾だ、と言ってやりたいですね。
あとなんだっけかな……忘れちゃったけど。蛾と蝶の違い。人間基準でいいんだな、っていう、それってすごく面白いなって思いますね。
でも、蛾と蝶の間の子で曖昧なのと言うのは、ほぼいないですよ。
ただ、蛾と蝶でどっちが種類が多いかと言ったら、たぶん蛾のほうでしょうね。
蛾の中でも僕が一番気に入っているというか気になってる蛾は、フユシャクという蛾。
蛾、好きなんだね?
嫌いなんだけど。嫌いなんだけど。
この、フユシャク(冬尺蛾)は面白い。なんでかというと、普通は蛾って夏に出てくるでしょう。フユシャクは冬に飛ぶんです。夏に蛾が多いので蛾を食べる動物とか鳥は夏に出てくる蛾を食べる。冬に蛾は飛んでいないので、鳥は冬に蛾を食べるつもりがない。だから食べられる心配がない冬に羽化するんです。
冬、飛んで、交尾するんです。雪の中に出てきて飛ぶ。雪の中、誰も友達、親戚がいない。その中で自分の恋人を見つけて、結婚して子孫を残す。かなり難しい。そのへんをさまよったらすぐ凍死してしまいます。結婚しないうちに凍死。下手をすると、子孫を残さずに死んでしまうのです。
それで、羽が、片ちんばにできてるんです、生まれたときから。片方の羽は長くて片方の羽は短いんです。だから飛ぼうとするとくるくる回って、生まれて飛び始めたとところから1.5メートル以上は遠くに行けないんです。だから安全なんです。だから近くの異性と巡り会う可能性が高いんです。飛んでっちゃったら巡り会えない。雪で凍え死んでしまう。片方にしか飛べない。1.5メートルの範囲しか飛べないけれど、飛ぶんです、一応。雪の上で、メスを求めて飛ぶ。
この蛾だけはなんか、可愛そうじゃないですか。だから……好きかもしれないね。面白いのいるでしょ? なんか自分を見るようで怖いですね。
どこで見たの?
いや長い人生経験のなかでいつの間にか頭にこびりついて、いつから頭にこびりついたのか知りません。
お父さんの話、2回も3回も聞いたなと思うのあるけど、そんな話初めて。
そうですか。20代のときからフユシャクが気になって気になってしょうがないですよ。……まだ、実は出会ったことないんです。
ないの?!
ないよ。
あゆ:
でもすごいね、1.5メートルの円の中に恋人がいないといけないんだもんね。恋人が、しかも異性が重なってないといけない。近くにいたのが同じオスだけだったら可愛そうだね。
でも、雪の中でくるくるいっぱい回ってたらホタルより可愛らしいよねきっと。そんなの聞いたことないよね。
いやいや蛾の世界では有名ですよ。変わった蛾なんだから。冬に飛ぶ蛾は少ないのでね。
でも、これって、なんか、みんなの教訓になるんじゃないかなと思うんですよ。
みんなは、子供の頃、いっぱい勉強して、いっぱい習い事をして、世界に羽ばたきなさいなんて言われて、一生懸命勉強するわけですよ。立派になって日本の中央におどりだして、あわよくば世界に羽ばたきなさい、って。
フユシャクの親はそんな事言わない。飛ぶのは1.5メートルでいいですって。それで子孫は脈々とつながるんですよ。
だからフユシャクはそれ以上の世界に飛び立とうと思わない。
それで成立しているっていうのが凄いね。
そこがね、僕は素晴らしくて、みんなの参考になるんじゃないかなっていう気がするんですよ。
それと似たので、みんな、ネズミの時間、ゾウの時間というの知ってるでしょう。ハツカネズミって生まれて二十日間で子供を産むからハツカネズミ(実際には1か月後くらいから)。どんどん子孫を残して、どんどん死んでいく。畑のレタスの根っこを食い荒らしたカヤネズミ。寿命は1年か2年。
だけど、90年も生きるゾウと、ネズミは、きっと、生きてこの世に生まれて死ぬまでに同じくらいの経験をしてるはず。
わずか1年位で死んでしまうネズミと、90年も生きるゾウがなんで同じような体験できるんだって言うけど、生まれてから死ぬまでに打つ心臓の数は同じと言われていますよね。同じなんです。みんなも、同じだけ心臓を打ったら死ぬんですよ。だからちょっとゆっくりめに打っておいたほうがいいでしょう。
いや、何が言いたいかというと、時間とか経験の重さ、濃さは、相対的なものであって、絶対的なものじゃないんだということなんですよね。
だから、例えば岡山で1年を生きる経験の濃さと、東京で1年と、ニューヨークで1年とでは、なんとなく岡山より東京の1年のほうが濃いんじゃないかとか、東京よりニューヨークの1年のほうが濃いんじゃないかって、なんとなく思わされちゃうんですよ。それは昭和生まれの上昇志向のパターンなんですね。そこに落とし穴がある。
行ってみると、なんていうことない。行ってみると、なんていうことない。あれ、ってなっちゃう。世間で言われてる、濃い、重い世界、華やかな世界と、自分が見る、体験する華やかさというのとは、相対的なものだからぜんぜん違うんですね。
だけどそこに何か思い込みがあると、色眼鏡で見て、自分の体験をみすぼらしく感じる。みすぼらしくしか見ない。人の体験がバラ色に見える。中央にいる人、メジャーなところにいる人が素晴らしく見える。現実には全然素晴らしくない。
それがわかる頃にはおばあちゃんになっちゃってるという、これが困っちゃう。
昨日だか一昨日、農林水産省という――日本の通産省に並ぶような大きな官庁がありますね、メジャーな官庁ですよ――その事務次官という官僚のトップをやった人が74歳で息子を刺し殺しました。子供は44歳、引きこもりの息子を。
その息子はずっと引きこもりでいたらしいんですけど、普段からちょっと暴力的ではあった、と。家庭内でも。
運の悪いことに小学校グラウンドの隣に家が建っている。それで、一昨日の土曜日、運動会があった。運動会で朝から大きな声援、親とかお客さんの声援とか、用意、パーンってピストルが鳴ったり、音楽が鳴ったり、うるさいわけです。子供は、「うるさい」と言って、「なんでうるさいんだ」って怒ってるわけです、家で。運動会だからうるさいんだし、学校の隣の家だから聞こえちゃうのはしょうがない。
それは普段から、自分が――多分頭が良かったはず、お父さんは頭がいいからね、子供も頭が良かったはずなのに――自分が、世が世であれば自分が大活躍するはずなのに、世の中に出はぐってしまったというストレスがある。詳しくは知らないけどそこでお父さんと喧嘩になったという。事務次官をやった74歳のおじいちゃんで分別のある人ですが、「身の危険を感じた」と言うんですが――その少し前に何があったかというと、51歳の男が小学校のバス停に並んでいた子供と大人を19人切りつけて2人殺して、17人に重軽傷を追わせたという事件が先週あった。その男は自分で首を切って自殺した。これも引きこもりの男性です。44歳の息子が、「あいつらうるせえ」と言って、ぶっ殺してやろうか、みたいなことを言ったとして、包丁でも持ち出したら、自分の子供が隣のグラウンドに出ていって、そこにいる子どもたち大人たちを切りつけて大暴れするくらいだったらいっそ、殺しちゃおう、自分の手で、世間に迷惑をかけないうちに。そう思ったんじゃないかと思うんですよね。
何しろ先週、そういう事件が起きてから、包丁を持って道路上で叫んでる男が逮捕されたり、公園に来て子供らに向かって、お前ら皆殺しにするぞって怒鳴る男が出てきて警察に通報されたり、そういうことが続いています。
やっぱり今、8050問題と言って、80代の親が50代の自立できない子供を抱えていて、だんだん親が健康ではなくなってきて、面倒を見れなくなる。その、面倒を見られないと焦っている親たちと、子供は子供でフラストレーションが最高潮に高まって、そういう家庭の問題が家庭の中だけで収まらなくなってきて、いろいろな難しい社会問題を起こす寸前になっちゃっているということなんです。
なんかそういう、本当は足元を見て、目の前の小さな幸せにすべてを感じていると、あまりフラストレーションは、本当は起こさなくていいし、人を羨ましがらなくていいし、いつか自分も花開くみたいな、ここではないところで花開くみたいな、青い鳥を追いかけるような、ここに幸せはなくて他所にあるような、そういう変な気分から抜けられるんじゃないか。フユシャクのことを考えたときにね。そう思うんですよ。
話しはフユシャクに戻ってきたのね。
フユシャクの生き方に見習ったらどうですか。1.5メートルの範囲で生きて満足して死んでいくわけです。
僕は最初にヨーロッパに行ったとき、ものすごいカルチャーショックを受けた。その後漫才師で、欧米化、っていうのが流行った。何か言うと「欧米化」って突っ込むんだよね。欧米では、って、ヨーロッパとアメリカを、日本人はずっと追いかけていた気がする。
その最先端のヨーロッパに初めて行ったとき、びっくらこいたんですよ。
花の都パリ。僕はお金がないから1泊千円くらいの安宿に泊まった。エレベーターが、貨物専用みたいな鉄格子になってる。オーチスって書いてある、鉄格子の、ガッチャーンというのだし、トイレは安いホテルですから共同トイレ。茶色い紙が入れてある。丸くなくて1枚ずつ。片方はつるつる、片方はザラザラの紙です。
僕らが生まれたころ、トイレには新聞紙を四角く切ったのがどこの家でも積んであって。それがすこしお金持ちの家だと茶色い紙だった。片面のつるつるのほうでお尻をふくとツルッとなっちゃうし、ザラザラした面だとザラッと痛いし。それがやがて白い紙になり、それがいつの間にか丸まったトイレットロールになっている。進化を経てきている。それがヨーロッパに行くと逆戻りしていた。ツルツルザラザラの茶色い紙。
何だ、ヨーロッパといったってこんなもんなんじゃないか。建物も何もかも古いし、なんか慌てなくてよかったんじゃないか、という感じがつくづくしてね。何だもうヨーロッパに追いつけ追い越せみたいなこと思わなくていい、とね。
イギリスなんか世界の最先端の国なのに、多分イギリスの河川の9割は、護岸工事をしていない。僕が聞いたときにはそうだった。それから何十年経ったかわからないけれど。多分7割、8割の河川は護岸工事をしていないと思いますよ。
日本の護岸工事、海岸線の8割、9割はしている。
イギリスの真ん中のロンドン橋は護岸工事してある。でも地方ではほとんどの川が、護岸工事していない。
ずるずる、っと川が流れている。僕は、護岸工事した川を見慣れているから、あれ? なんだこれ。川だ。って、不思議な感じ。
考えてみたら日本と成り立ちが違うから仕方ないんですけど、道路工事とか護岸工事をイギリス人はやりたがらない。日本人はやりたがる。
日本の山って傾斜がきついから、雨が降ったらどっと雨水が川に流れる。
イギリスってのっぺらとしている。山が高くない。だからイギリス人はスキーが皆、下手です。スキーをやってないからね。イギリスでスキーができる山は一つしかない。雪が降る山が1か所だけ。日本よりずっと、緯度的には北なのに、ね。
だから傾斜がゆるい中を、水がゆったりと流れるので護岸工事が必要ないといえば必要ないんですけど、めったなことでは護岸工事をしない国民性がある。
あ、もっと大事なことがあった。日本の国有地と私有地。イギリスの国土の3分の2は、貴族の所有地です(嘘だったらごめん)。そうすると、貴族が護岸工事をさせない。先祖からもらった土地をそのまま残そうとする。風力発電のプロペラは建てさせないんです。景観が悪い、と。環境に良い発電とか、関係ない。景観が悪くなる。先祖からもらった同じ景観を残す。だから風車は建てない。これ、見識ですよね。
ここから日本海方面に走ると、其方此方で風力発電のプロペラがまわっています。日本人は、景観が悪くなる、という発想がないんですよね。
そっくりそのまま残すのが貴族の役割。
武士は食わねど高楊枝じゃないけど、貴族も、それなりのお金がもらえると聞いても風車を建てさせない。のっぺりとした川を残す。昔の日本みたいなんですよ、景色がね。
日本は、欧米に追いつけ追い越せと言ううちに変なところで追い越しちゃって、行き過ぎてるんじゃないかという気がする。
今日は脱線が激しいね。著しくね。どうしたらいいの?
ということでね。今日の質問なんだったんだっけ。ぼかし作りだったね。
あんながベテランなので、あんなちゃんに菌をもらって、作り方を聞いてみてください。
(2019年6月4日掲載)
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