(この記事は、第140回からの続きです)
【②身支度に時間がかかっている】
そうですよね。これ、みんなそうなんですよ。あの、特に女の人で身支度が早い人というのは、生まれてこのかた見たことがないですよ。一人も。
あのね、僕の尊敬する、『火垂るの墓』を書いた野坂昭如は、年を取って、なんと、天皇陛下の園遊会に呼ばれたんです。お声をかけてくれるあれですよ。これは名誉なことですよね。天皇陛下の庭に入って、ご飯も食べる、そういうリストに上がるわけですから。
それに呼ばれたんですよ。喜んでね。変な意味で。何でって、名誉なことだと言うよりも、面白そうだなって喜んでる。天皇陛下と直接話ができる。そしたら、奥さんの、豪勢な服を着るのに時間がかかって、出かけて行ったんですけど、遅れたために入れなかったという。天皇陛下の園遊会に遅刻でダメだった、棒に振ったという。
それを聞いて、「女の人の着替えは怖い」ってね……ちょっと的外れなこと言ってますか?
だから着て行く服に無駄な拘りが多くて、一つひとつの動作が遅くて迷ってるうちに園遊会に遅れる。あるよな、っていうね。
僕もそうなんですよ。
それはなんて言うかな、前日に、明日着る服を枕元に置くわけですよ。
上着とか、下はこう、靴下はこう、頭の飾りはこう、上着はこう、ブラウスはこう。畳んで、着る順番にでも重ねておいて、寝る。そういうことをしなければ、ちゃんとはいかないですよ。
かく言う僕なんかも、コンサート用の靴下。は、ちょっと、履かずにとっておくんですよ。靴下の箱の片隅にね、コンサート用って。書いてないですけどね。アトランダムに入ってて、無いってなったら困るじゃないですか。1週間前からコンサート用の靴下は履かない。シャツも余裕があればそうですけど。余裕があれば、シャツはこれ。そうしておかないとうっかり着ちゃったら、「あれっ?! お母さん洗濯したシャツは無いの?」って絶対なりますからね。
そうしないと、絶対に迷いますよ。絶対に、着ていくシャツが無くなりますよ。当日の朝、探してもダメです。だいたい探そうと思ったら無いんですから。キープしておかないとダメです。
それと、なんていうか、もう1つ心構えとして、時々楽しんで変な格好しようかなと思っていることですよ。
着るものがない、ということは、今日は変な格好する日ということなんだな、と思えばいいだけのことです。デタラメにあるものを着てしまえ、という日なのです。僕が変なシャツを着てきたり、変なセーターを着てるときは、ああお父さんは着るものに迷ってでたらめに着て来た「変な日」だなと思ってくださいよ。「あれ?」って思う格好の日、たまにあるでしょ。あれは自分で変な日というのがあるということですよ。心定まらない日。言わないけどわかって、って。
時々お母さんに阻止される。「お父さん待って。何それ着てるの」目ざとく。「お父さん何それ。やめて。やめて。着替えて」「何に着替えたらいいの?」「じゃあ、待って」って出してくれる。阻止されます。
だけど阻止する人がいない人は、変な格好をする日。やってみてください。
【③一番乗りで集合場所へ行くことに対して、抵抗感がある】
それは人の後について行くのは本当につまらないよ。「無意識で人が集まり始めてから動くので、いつも遅れる」。それはつまんないよね。本当に……何だろうな、僕は逆に人の後をついて行くことのほうがストレスを感じますね。一番最初か一番最後か、どっちかが好きで、真ん中は嫌いでね。
真ん中へんで動いてたら一番つまらないです。
僕は高校の時、交通事故で頭蓋骨骨折の怪我をして1か月くらい入院して、学校にまた行けるようになったらすぐに期末試験だった。そのときに先生から、「期末試験を受けなくていいぞ」と言われました。前回のテストの延長で8割くらいもらえるから、と言われたんですけど、「いや、テストを受けます」と答えました。点数なんか高くても低くても良いんだから、と。
やってみたら数学がとんとわからなくなっていた。一番上の簡単なものだけしか、答えが書けない。あとは全然、何が何だかわからない。
それで、(そうだ)と思ったんです。書いたところを消して、人生で初めての0点をとってみることにしました。0点に憧れがあって、これは良い機会だと思って、0点にしてやりました。
そしたらね、通信簿に1がついたんです。
その通信簿を見てびっくりしたことがありました。普通、数字は黒でしょ。それが、「1」だけは赤いんです。これで“赤点”なのかな、っていう新しい発見。
自分はほら、1から5まで全部とったぞっていうね。初めてなんです。1がついたのが。なんか制覇した気分。
ビリか最初かどっちかにしましょう。
【④憂鬱だと思ったら遅れる】
憂鬱な作業には遅れて行きたいという気持ちは、本当ですよね。まさにその通り。
だから、すべての作業を楽しみで仕方がない、というふうに思って行けばいいんです。
プランを持つ、新しいアイデアを持つ。そのアイデアが否定されなさそうだったらやってしまおう、って。
それが得意なのは、ももだな。ダメだなと言っても、やってるから。
この頃覚えてきて、ダメだなと言われそうなのだと、「新しくこんなことやりたいんですけどいいですか」と持ってきて僕に聞くんだけど、僕はだいたいダメと言う。すると「お父さん、3畝だけでいいですから、試しにやってみましょうよ……」3畝ならいいか、みたいなことになります。ももは、僕の了解を得るコツを覚えてきてね。新しいことをどんどん取り入れて、作業を楽しみなものにしちゃうんですよね。そうすると行くのが楽しみになる。そうやって楽しい作業にすればいいだけのことです。
【⑤時計を見ているようで見ていない。時計が壊れても放っておく】
そうですよね。時間を見ていない。見ていなくて、間に合わせようという気がないんですよね。
守ることに意味を見出していないというかね。
例えば、好きな男性と初めてのデートね。こういうときはもう、1日に何回も時計を見るね。なかなか時間が進まないな、と。早々と起きて。楽しみで楽しみで仕方ない。時計ばかり見てね。そういうことはあるでしょうね。
その反対に、なのはなに来たばかりのころは、時計ばかり見て、「いや、全然時計が進まない。1日が長すぎる、早く1日が終わってくれ」みたいなこともある。楽しくなくて嫌なとき、時計ばかり見てるでしょ。中くらいのとき見なくなっちゃう。中くらいを作らないで、楽しみにする。時計を見ざるを得ない状況を作る、ということが大事なんじゃないかと僕は思うんですよ。
これは、予定を入れるのとちょっと、似ています。
(次回に続きます)
(2018年12月21日掲載)
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