【5月号⑩】「ビニールハウス修繕作業、完了! ―― ハウス家族の二か月 ――」 さくら

ユーノス畑のビニールハウスが完成し、大雪被害に あった、すべてのハウスの修繕が終わりました

 

 なのはなファミリーにあるビニールハウス九棟のうち、大雪被害にあったハウス五棟の修繕が、四月五日に完了しました。
 一月二十四日の夕方から一月二十五日の朝にかけて、大雪になりました。三十分前に歩いた足跡も、積雪で分からなくなるほどでした。雪が降り積もる中、私はこんなに短時間に積もっていく光景を見たことがなく、窓の外を見て、明日の朝はどうなっているのだろうとワクワクした気持ちでした。
 朝起きて、廊下から外を見たとき、はじめに目についたのは、潰れたテントでした。昨日テントの横を通ったのに、どうして気が付かなかったのだろうと思いました。

■はじまりの日

 ハウスが潰れていると聞いて、ユーノスハウスに行くと、雪の重みでペシャンコに潰れていました。どうして雪が降っていく時、ハウスのことを思い出せなかったのだろう、とくやしい気持ちになりました。九棟潰れていると思って見回り、四棟は生き残っているのを見たときは、救われた気持ちでした。

 雪が降るときには、青竹の補強を立てるということを教えていただき、来年は雪が降る前にやりたいと思いました。
 二月一日から、須原さん指揮の元、吉畑手前ハウスの修繕が始まりました。初日は解体で、マイカ線、妻面のビニール外し、雪出し、大屋根ビニール外しなどをしました。雪出しでは、大屋根のビニールの上にのった雪を、ビニールを破らないように気を遣いました。須原さんがトタン板でシュートを作り、シュートを滑らせて雪を外に出したらいいのではないかと話してくださり、その方法でやりました。今までと同じだとテミでのバケツリレーですが、トタン板でシュートを作り、その上を雪を滑らせるということもできるのだと、勉強になりました。

 

雪の搔き出しから始まった修繕作業

 

■潔く、ドンピシャ目標

 毎朝、籾摺り機倉庫に集合し、作業内容、目標を共通認識しました。ある日の集合のとき、須原さんが、「為せば成る」のことわざを教えてくださいました。「為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」どんなに困難に思えることも、為せば成るんだ、希望をもって努力していったら、成らないことはないのだと思えました。

 棟パイプをつけるとき、一度三十三個すべての金具をつけ終わったのですが、脚立の下に降りて、さあ次にいこうと思った時、よしみちゃんが、「何かおかしい」と言ってくれました。アーチパイプが地面から棟にかけて、斜めにズレていました。五十センチ間隔でつけていく印の、測りはじめを間違えて、全ての印・金具のつけるところがズレてしまいました。「為せば成るよ!」という言葉が口々に出て、卑屈な空気は一切なくて、一人ひとりが気がつけなかったことに責任を感じながらも、前向きな空気があって嬉しかったです。

 

 

 私は、スピード感のある作業にしたいと思うと、目標の量は多く時間は短くなりました。吉畑手前ハウスで防虫ネット、側面のビニール張りをしているときは、目標の制限時間に支配されて、ただこなしていくせかせかした作業になったと感じました。お父さんが、目標は少し余裕のあるものにすることで仲間をせかすことにもならないこと、もし本当に余裕ができたら質を高める時間に使い、完成度を高くすることを教えてもらいました。また、心の目で見てドンピシャの目標を立てることも教えてもらいました。

 

 

 ドンピシャ目標が、その通りドンピシャになった作業は、気持ちよく良い作業になったと感じました。目標を足すとなると、道具を取りに帰ったりという時間ができてしまいますが、ドンピシャ目標だと、それに使う道具もその通り持っていき、無駄な時間がなかったです。

 だけれど、ドンピシャ目標を立てるとき、怖さがあります。ドンピシャ目標を立てて、それが達成できなかったとき、達成できなかった残念感を思うと怖くなりました。
 それで目標を立てないまま作業をしてしまうこともありました。目標を立てないとスピード感ももてないし、作業で何が良かったのかいけなかったのかが分かりませんでした。

 お父さんが作業をされるときも「できます、します」などと断言する姿がとてもかっこいいです。私も希望だけを見ていきたい、お父さんのようにスパッとありたいと思いました。
 スピード感のある作業にしたいと思った時、せかせかすることは気持ち的にも、実際のスピード感も良くありませんでした。それよりも、やりやすいやり方を見つけることがとても大事だと思いました。

 一つの工程を五棟分、五回行い、良くなる気づきをつなげていけたことがとても嬉しかったです。五棟やっても、飽きるということがありませんでした。

 

 

■好きな作業は?

 ハウス五棟完成後の祝賀会では、一人ひとりの好きな作業について話しました。
 あけみちゃん、るりこちゃん、よしみちゃん、なつみちゃんは妻面のビニールはり、りんねちゃんはアーチパイプたて、さやちゃんはクロスバーつけ、私は棟・母屋パイプつけでした。

 ハウスの修繕は、どの工程も、一人ではできないことばかりで、その中で、協力する楽しさを教えてもらったと思います。
 一棟に五から七通りの母屋パイプを入れるのですが、金具をつけるとき、一人では頑張って頑張ってつくかどうか、という金具も、二人だと簡単につけることができて、早くて綺麗で、二人で味わえる喜びは何倍も嬉しかったです。

 

 

 崖崩れ北ハウスでは、最後の金具を六人でつけました。離れてしまうアーチパイプにぶら下がる人、下のパイプを持ち上げる人、みんながパイプをくっつけてくれている間に急いで金具を止める人、見守る人。その金具が取り付いたときには「やったー!」と歓声が上がりました。

 作業の終わりに、写真を撮る時間も、とても嬉しかったです。一つの工程ができて、その達成感の中、ハウスの前で少し遊びのあるポーズを撮ったり、工程ごとの美しさと大好きな部分をみんなで感じられることが嬉しかったです。

 

 

 崖崩れ北ハウスの修繕で、途中からハウスと古吉野の二手に分かれて作業をすることがありました。作業が終わる時間になって、帰ろうとしたとき、古吉野でマイカ線の準備をしてくれていたメンバーが、「終わる? 大丈夫?」とハウスまで来てくれました。自分たちのやることが終わって、作業時間も終わりだけれど、もう一つのチームはどうか気にかけて、最後にみんなであいさつをして終わると、充実した気持ちに満たされました。こんなに同じ気持ちで一つのことに向かっていけること、みんなと作業ができることが、かけがえのないことだと思いました。

 

 

 ハウスが潰れたとき、るりこちゃんと一緒にお父さんやスタッフさんと立て直していくお話をしました。建築作業といったら、いつもるりこちゃんと姉妹のように須原さんの弟子になります。大雪前の二重ハウスのから、目標を立てるとき、るりこちゃんが一緒に考えてくれて、いつも同じ気持ちでいてくれるるりこちゃんの存在が心強かったです。

■宝物の期間

 あけみちゃんとパイプベンダー台でアーチパイプの修正をしました。アーチパイプの修正を、時には日が落ちた中でライトをつけて目標達成したことや、全二百二十本あるうち、百本以上のパイプをあけみちゃんと修正しました。

 

 

 りんねちゃんがインパクトでピアスビスを打つのがとても上手で、アーチパイプのジョイントからアーチパイプ立てまで、さやちゃんと全棟百十本のアーチパイプを立ててくれました。

 崖崩れ北ハウスで防虫ネット張りをしたとき、防虫ネットの長さを調整するために線の何本目で折ると決めているのですが、数に混乱したとき、なつみちゃんが、「私、折っていくよ」と言って、分かりやすく折ってくれました。メンバー一人のやりにくさも流さないで、やりやすい方法を考えてくれた優しさがとても嬉しかったです。

 

 

 吉畑手前ハウスにアーチパイプを運ぶ時、よしみちゃんと、「為せば成る……」のことわざを言いながら運びました。よしみちゃんと母屋パイプの金具をとりつけたり、古畑のビニペットつけをしたり、よしみちゃんが誰かと作業をすることが楽しい気持ちが伝わってきて、よしみちゃんとハウスの作業の好きなところを共有できるときがとても嬉しかったです。

 さやちゃんと、崖崩れ道路ハウスや、大雪前のユーノスハウスの修繕から一緒にさせてもらいました。どうしたらいいのか困ったとき、さやちゃんが私には考えつかないとてもいいアイディアを出してくれました。
「私は、どうしたらいいかは思いつくんだけど、それを形にすることはできないんだ」
 と言ってくれたとき、
「私はいいアイディア出ないけど、形にすることは得意だよ」
「二人いたらなんでもできるね!」
 と話した時間がとても嬉しかったです。

 

 

 須原さんから、一人ひとりが主体的に動けるような指示をしてくださったり、声を出すこと、少しでも目の前の人がやりやすいように考えること、優しい動き方をハウスの修繕のときもたくさん教えていただきました。
 ハウスメンバーの存在が、ハウス家族みたいに温かかったです。
 二か月間のハウス修繕の期間が宝物だ、と思います。