【3月号⑭】「栗の未来をイメージして ―― 栗の木と会話する冬剪定―― 」 あけみ

 

 食卓にその姿があれば、スプーンを片手に、ただその美味しさと向き合うため思わず集中してしまう。硬い皮に守られた、ほくほくとした優しい甘さ。お正月、おせちのお重の中では、黄金に輝くサツマイモのきんとんの上に輝き存在感と甘さで華をそえる……。

 そう、そんな皆の食卓を色々な姿で楽しませてくれる“栗”。なのはなでは、栗林でおよそ50本の栗の木を栽培しています。
 美味しい実が採れるのは、秋。だけれど、手入れは1年を通して行います。今年は、暖冬と言われるけれど、手入れに向かう途中で見える那岐山の頂上付近には雲がかかり、雪で白く色づけられ吹いてくる風は冷たくて手先がかじかみました。そんな気温の低い時期は、木は休眠期間に入ります。その時期に行うのが、冬剪定です。

 栗の剪定に入らせてもらうのは、私は今回が初めてでした。以前から、担当のまなかちゃん達が気にかけ、収穫、防除、剪定などの手入れをしているのを見ていたり、聞いていたので、一緒に作業をできるのが嬉しかったです。

 栗林に着き、まなかちゃんから剪定のやり方を教えてもらいました。昨年に、大胆に剪定をしたため、今年は強く剪定することはせずに、残せる枝は残しながら、風通しや日当たりが良くなるように剪定をしたいということを伝えてくれました。
 ちなみに、栗の果実の中身はデンプンで、光合成産物の炭水化物そのものと言われています。やはり、日当たりも、美味しい実には重要です。

 

■一本一本違う木

 作業ではノコギリや剪定バサミで剪定する人と、その手元としてトップジンペーストを塗ったり、枝を回収したり、手が届く枯れ枝を剪定していく人を1から2人、というペアかトリオに分かれ、3チームで次々と進めるように、まなかちゃんが中心となって考えてくれました。

 剪定をしていると、桃の木との違いを感じました。栗は、前年に新しく伸びた枝が、今年の実がなる枝の元の枝になります。春になると、芽が伸び新しい枝を伸ばし、その先で実をつける、という形になるそうです。なので、桃とは枝や花芽などの付き方などが少しずつ違い、枝の先端付近に花芽がありました。枝の固さも違っていたし、木も上に高く高く伸びているように感じました。

 栗林にある、一本一本の木の年数や、枝のつきかた、枝の広がり、当たり前だけれど違います。初めて栗の木の剪定をしたこともあって、なんだか栗と初対面で会話をしているような、最初は探りながらで少し難しくも感じました。

 

 

 実際に葉が茂ったとき、栗の実がつくときのイメージ、枝にかかる重さをイメージしながら、剪定をしていきます。高くなりすぎた枝もあり、12段の脚立を使ってもなかなか届かないところもありました。まなかちゃんにもたくさん助けてもらいながらですが、剪定を進めていきました。まだまだ、栗との会話には修行が必要だと感じます。でも、難しさも含めて面白いと思いました。

 栗の開花は、他の果樹と比べて遅く6月ごろだと思います。その後、実がつき、大きくなり、秋になってから収穫です。
 今回剪定した木や枝が、どのように反応して、どのように枝を伸ばし、どのように実をつけるのか、栗との会話のキャッチボールは時間が少しかかり、栗の答えを聞くようで、少し緊張や不安もありますが、楽しみな気持ちもあります。微力でしたが、一緒に栗の剪定が出来て嬉しかったです。