【3月号⑮】「盛男おじいちゃんと繋がる 晩白柚の収穫」 ななほ

 

「僕は、晩白柚が大好きなんだ」。
 以前、盛男おじいちゃんが、まだ実をつける前の晩白柚の様子を見に来てくださったとき、そう、話してくださりました。

 晩白柚の苗木をなのはなファミリーへ贈ってくださったのは、盛男おじいちゃんでした。
「柑橘類は温暖な気候じゃないと育たないんだけれどね、なのはなのハウスだったら、実をつけるんじゃないかと思うんだ」
 盛男おじいちゃんの、そんな願いのこもった晩白柚の苗。
 私が晩白柚の担当になった時にはもう、枝葉を茂らせ、立派な大人の樹に成長していたのですが、晩白柚の側に行くたびに、(この樹は、盛男おじいちゃんが植えてくれたんだ)と思うだけで、とても安心した温かい気持ちになります。

 

 

 この晩白柚の下には、透水防根シートが埋められており、このシートが根域制限の役割を果たしてくれています。
 お父さんも、「どうして、晩白柚が4年目にして実をつけられたと思う? 僕は、透水防根シートの効果が大きいんじゃないかと思うんだよ」と話していました。

 今年、晩白柚は植え付けてから5年目になります。実をつけるのは2回目です。なのはなの晩白柚は昨年、枝葉をグンと茂らせて、いつの間にか私の身長をはるかに超えてハウスの天井に届きそうなほどに背が伸びました。

 けれども、まだ5年目という若さからたくさんの実をつけてくれるのは、防根シートで根域制限をしているお陰だと感じています。
 今回、収穫できた晩白柚は、全部で12玉。その重量は、平均して1玉2キロ。一番大きなものでは、1玉が2・3キロで、直径25センチの晩白柚が収穫できました。

 

 

 これは硬式バレーボールよりも直径が大きく、2リットルのペットボトルよりも重いということを思うと、さすが、柑橘類の中で最大級の大きさを誇る晩白柚です。

 4月から5月にかけて、ジャスミンのような甘く爽やかな香りで、私たちに幸せを与えてくれる晩白柚の花。晩白柚は生理落下のある果樹のため、摘花・摘果は控えめに行うようにしているのですが、1本の樹で数千という数の花を咲かせる晩白柚は、本当に力強く、逞しく、晩白柚の花が咲くと、毎日、晩白柚の元へ通ってしまうほど、晩白柚の花が咲く初夏が私は大好きです。

 

 

 春から秋にかけては、週に2回、1000リットルの水を晩白柚にエンジンポンプで与えました。

 水を与えるたびに、晩白柚の葉が艶々と輝き、手のひらよりも小さかった果実が日に日に膨らんでいく光景はとても綺麗で、見ている私も伸び伸びとした気持ちになりました。
 そしてあっという間に迎えた、収穫。収穫した実はずっしりと重く、持ったそばから晩白柚の甘くて爽やかで上品な香りが身体を包み込んでくれました。

「この苗は幸せ者だね。みんなに可愛がってもらえるからね」
 晩白柚を見ていると、盛男おじいちゃんの優しく大きな笑顔とともに、この言葉を思い出します。
「ななほちゃん、晩白柚って知っているかな? こんなに大きな蜜柑のようなものでね。これがすっごく、美味しいんだ。僕は大好きでね」
 盛男おじいちゃんがそう言って、微笑みかけてくれる姿を思い出します。

 太陽のように明るく輝く晩白柚。盛男おじいちゃんと繋がっている晩白柚の光。

 これからも確実に収量を増やし、なのはなのみんなに喜んでもらえるように晩白柚を育てていきたいし、盛男おじいちゃんの小さな夢を叶え続けられるよう、晩白柚を手入れしていきたいと思います。