【7月号⑭】「ウィンターコンサートへ向け、楽器体験ツアーの1日」 ほのか

 

 二〇二四年ウィンターコンサートでの、ビッグバンド演奏曲は、まだちょっと内緒ですが、とにかく、みんな大好きなあの曲になったようです!
 その日は梅雨の始まりの大雨の日で、コンサートのビッグバンド演奏に向けたそれぞれの楽器のパート練習が行われました。私を始め、初めて多人数での楽器演奏に入る子たちの担当楽器を決めるため、一~二人ずつ、それぞれの部屋を回って楽器を体験しました。

 

 

■楽器の世界へ

 まずみんなでトロンボーンの見学に行きました。トロンボーンは今、楽器の数分、演奏者がいるため、新しく誰かが入ることはないのですが、見学だけさせてもらいました。トロンボーン担当のえつこちゃんは本当にトロンボーンが大好きで、この日をずっと楽しみにしすぎて、夜、ちゃんと眠れるか心配していたそうです。しかし、私たちが見学に行ったときは、まだ準備中で、やよいちゃんとまちちゃんがトロンボーンの音を聞かせてくれました。えつこちゃんが到着したのはその後で、みんなと吹けなかったのは少し残念そうでしたが、いつものあの笑顔で、次の楽器の部屋に送ってくれました。

 その次からは、各楽器の練習場所を回ります。私が次に体験したのは大正琴でした。なのはなの大正琴は電子式で、アンプをつなぐためのジャックがありました。

「練習の時は一番目立たないけれど、アンプをつないだら一番目立つ楽器」
 とまりのちゃんが教えてくれて、一緒に構え方、指のフォームを確認しました。大正琴の弦は行って返ってくるような動きで右手を動かします。左手は鍵盤の指使いと同じで、左手はピアノを弾いているのに、右手ではギターを弾いているようで、和風な音色が魅力的でした。一緒にテキストの中の曲や、前回のウィンターコンサートで弾いたフレーズを一緒に弾かせてもらいました。去年の合奏の中では大正琴は伴奏のような役割で、みんなの主旋律をリードしていて、低めの音色がかっこよかったです。

 

 

 そうしているうちに次の楽器に移動する時間に。次はサックスとクラリネットの部屋へ行きました。パートリーダーのさとみちゃんが優しく出迎えてくれて、サックスの持ち方も何も知らない私に、手取り足取り教えてくれました。首にベルトをかけてサックスを持つとまず、ずしっ!! とした重量感に驚きました。まずマウスピースだけで音を出す練習をしたとき、「下唇で下の歯を隠すような感じで」と言われて、最初間違えて逆に歯をむき出してしまってちょっと恥ずかしかったのですが、こつをつかんだら音を出すことができて、ちょっと音が鳴っただけで、その場にいたみんなが、「わあ~!! すごい!!」と少し恥ずかしくなるほど喜んでくれました。クラリネットはサックスよりも軽いのですが、その指使い、押さえ方の難しさに驚きました。クラリネットもサックスも、鍵盤のように目視でどの音かを確認することができないのがもどかしくなったほどです。どちらも艶やかな音色で、音の重さと伸びのバランスの調和がとれていて吹奏楽の王道という印象でした。

 次の部屋で、小曲を演奏して迎えてくれたのは元気いっぱいのトランペットパートでした。トランペットは構造こそ比較的簡素なものの、音の出し方は一番難しかったです。
「上手な人は唇だけでドレミファソラシドができるんだよ」
 となつみちゃんが教えてくれて、一緒にまず唇の形から練習しました。口を、にいっと横に閉じて、その僅かな隙間から摩擦するように息を吹き出します。それでも、なかなか音が出なかったとき、「この音をイメージしてみて!」と教えられて、みんなと同じ音を出そうと意識した瞬間きれいな音が出ました。「すごーい! 張りのある音だね!」とみんなほめてくれて一緒にロングトーンを練習したり、『ハッピー・バースデー』を演奏した時間が暖かくて嬉しかったです。

 

■ドラムとフルート

 次に向かった先は個人的に一番興味があって楽しみにしていた打楽器の部屋です。かにちゃんが音楽室にある打楽器を一通り紹介してくれた後、憧れのドラムを叩かせてもらうことに。「なのはなで演奏している曲で何が好き?」と聞かれて、私はなんとなく『バッド・ハビット』と答えると、不思議なことに、来た新しい子みんな『バッド・ハビット』と答えたそうです。そのくらい、『バッド・ハビット』のドラムはかっこう良いのです。この曲ではエイト・ビートを刻みます。頭ではわかっていても、いざ叩く、バスドラムやハイハットを踏むとなると身体がおいて行かれて、それを整然とやってのけるかにちゃんのすごさが身に染みました。基本が形になった後は、強弱をつける練習をしました。数字の中で何が好きかをそれぞれ回して、私が八、いよちゃんは三、かにちゃんは一でした。八分音符を連打する中で、一と三と八のカウントの時にアクセントをつけて、最初は数えながら「今、アクセントだ!」と考えていたのですが、ちょっと混乱したので、もう「こういうリズムなんだな」と思って、感覚で挑むことにしました。そうすると不思議と躓くことなく叩くことができました。

 

 

 さらに発展で、今度はエイト・ビートに「フィル・イン(おかず)」をつけることに。フィル・インはドラム用語で、リズムに味わいをつけるようなものです。一気に面白みがでて、飽きの来ない豊かなリズムに変化しました。音階のない打楽器には強弱や叩き方の工夫が必須で、それをつけるからこそ存在感と土台をつくり他のパートを引っ張っていくことができるのだなと思いました。

 

 

 最後に向かったのはフルートの部屋です。フルートはなんと言っても見た目が美しくて、音色こそ美の化身といわんばかりの上品で高貴な質感でした。フルートは吹く穴を塞ぐのではなくて、穴を唇の三分の一で隠して、その僅かな隙間から息を吹き込んで音が出ます。
「一度、唇で全部隠してから、くるっと回転させるといいよ」
 と、ちさとちゃんに教えてもらうと、すごくわかりやすくて、すぐに音が出ました。私の唇はフルートに向いているタイプの形のようで、音がきれいだ、とみんなほめてくれました。なぜか一オクターブ高い音しか出なくて、高い方が難しいらしいのですが、息の出し方を鋭く細くすると高くなることを教えてもらって、逆に息を緩やかに太く出してみると低い音もちゃんと出て感動しました。いつかちさとちゃんの『ウリリ』くらい、きれいな音が出たらいいなと思います。

 

 

■これから始まる

 まるで体験入部のような、お祭りのような体験ツアーもお開きの時間となり、リビングに一度集まったとき、見学をまわったみんなの顔がすごく生き生きとしていて、担当楽器の希望をどれにするか迷っていて、決められずにいる様子でした。私は希望は一応すぐに出しましたが、どの楽器を担当することになっても嬉しくて、楽しみです。これから始まる楽器のパート練習に自分も参加できることが、すごく楽しみで、どの楽器でも一生懸命、楽しみながら冬のウィンターコンサートに向けて精一杯練習していきたいと思います!