【4月号⑰】「古吉野百景 ―― そこから見える版画の世界 ――」 ほし

 藤井先生に教えていただいている、木版画教室では、新しいテーマを決めて作品作りに取り組んでいます。今期は、「古吉野百景」として、古吉野近辺の風景を版画にします。
 木版画のメリハリの利いた迫力のある表現で、普段過ごしている思い入れある風景を表現し、残していけることが、ありがたくて嬉しいなあ、と思います。

 その風景となるのは、すぐ近くの滝川に掛かっている橋であったり、木が水面に映る池の風景であったり、栗山にいる牛であったりします。
 お父さんが、写真を撮ってくれて、それを私たちが木版画にします。
 今回は、多数の色を用いる「多色刷り」ではなく、黒単色だけを使い、制作を行います。

 版画教室のメンバーで集まって、参考となる写真を見ていると、普段何気なく見ている風景でも、じっくり見るとこんなに魅力があったんだ、と心が弾んだのと、作品作りをするにあたって、これからその場を通るたびに、新しい発見がありそうだ、と思いました。
 また、普段歩いているときから、ここを版画にしたらいいんじゃないか、と、周りの風景から、魅力を見つけ出せそうだと感じて、ワクワクとしました。

 

 

 私は、栗山の牛を題材に選びました。
 写真を見せてもらったとき、一目見て、「これだ!」と語り掛けてくるように思ったのと、それに魅力を感じました。

 その写真を下絵にする際に、牛の重厚な感じが出るように、版画特有のメリハリの利いた迫力を活かして、牛の身体の影になる部分を大いに出すことや、牛の毛並みを小さく彫っていくことで、表現していこうと思いました。
 牛の醍醐味が出てくるように、と意識しながら、取り組むことが出来ました。

 藤井先生から、「白黒にする場合には、白と黒の割合を7:3、6:4と言った具合にするといい」と教えていただきました。 そのことを意識すると、絵の画面全体がバランスが取れて、視覚的にも見やすくて、魅力的なものになります。

 今回の題材は、今まで制作した木版画の中でも、細かく彫っていく部分が多く、少し根気がいるけれど、それを突き詰めて、板に全神経を集中して向かい、美しものを作っていくぞ、という気持ちが湧いてきて、楽しさや喜びになっていきます。
 もっと、美しいものや魅力的なものにしていきたいという気持ちが生まれていきます。

 

 

 なのはなで版画教室に参加させてもらうまで、版画に取り組んだことは小学校の図工の授業で二回くらいしかなく、最初は、クエスチョンマークだらけだったけれど、制作に取り組ませてもらうたびに、版画の魅力や楽しさ、作る喜びに出会います。

 休憩時間には、かにちゃんがお茶を入れてくれて、藤井先生が持ってきてくださった木版画集を見せてもらったりしました。
 そこには、多色刷りでメロンなどの果物が彫られたもの、黒だけで船場の風景を刷ったもの、大胆な彫りが見えたり、繊細で細い彫りが見えたりして、あらゆる作品の世界を見られます。
 見るたびに、「こんな表現をしたらいいんだ」と学ぶことができて、版画の世界に引き込まれます。
 これからも、毎週、そんなふうに心のときめきに出会えると思うと、凄くやる気と楽しみが湧いてきます。
 良い作品にできるように、尽力していきたいです。

 

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【コラム】牡蠣殻と焼き牡蠣

 

 虫明の漁師さんから、牡蠣殻をいただきました。
 永禮さんがダンプを使って運搬し、古吉野まで届けてくださいました。
 畑の大切なカルシウム分などの肥料として使います。
 また、漁師さんが今年も一斗缶いっぱいの生牡蠣をくださいました。その日の夕食では、みんなで焼きたての大きな牡蠣を味わうことができました。