【4月号①】「ワンアクションで駆け抜ける! ―― なのはな史上最速 ジャガイモの植え付け ――」 ちさ

1枚目の畑は、10分で植え付け完了! 春ジャガイモの植え付けは大規模な作業ですが、リズムを作り、手早く進める作業の面白さをみんなで思い切り感じられた日になりました。

 

 なのはなジャガイモ植え付けチャンピオンシップ、その名もNJC、いざ開幕!
 競技は簡単。一チーム三人で一畝を担当し、いかに早く美しくジャガイモを植え付けることができるか、その勝負。

 もっと詳しく言うなら、クワで穴を掘り、ジャガイモを置き、籾殻を一掴みかけて、指三本分の厚みの土をかぶせ、最後に元気付けの牛肥を株間に与える、という流れです。
 誰が何を担当するか、三人でどう役割分担するか、すべてはチームの作戦。

 ということで、作戦会議開始!
 私は、あけみちゃん、つきちゃんとのトリオ。
 決まった作戦は、まずは三人で穴を掘り、終盤に先行してつきちゃんがジャガイモ置きをスタート。そして、私は穴が埋まる前に牛肥を次々に置いていき、追いかけてあけみちゃんが籾殻&土かぶせの仕上げ担当。あと必要なことは負けん気。どうなるか、分担が適切かはわからないけれど、とにかく最善を尽くそう、そう三人でスタート準備をしました。

 

■新種の競技

 各チームの作戦を発表し合ってみたところ、一人で穴を掘るチーム、二人で掘るチーム、と、色々で、その後の工程の役割分担も色々でした。果たしてどのやり方が最も速いのか。
「よーいスタート!」
 春の初めだというのに、外にいるだけで暑くなるくらい天気が良い空の下、お父さんの威勢のいい号令が響きました。

 穴を掘っているときは、目の前の穴のことしか考えていない。穴が終われば、いかに早く入り口付近の、牛肥が載っているエルフ(一・五トントラック)にダッシュするか。そして、いかに少ないアクションで牛肥を株間に置くことができるか。

 

 

 頭も心も身体もフル回転でした。
 そんなこの新種の競技は、シャトルランに似ていました。反復横跳びの要素も入っていました。他のチームの道具をよけ、人をよけて走り、必死に目の前の作業をこなしていく過程は、障害物競走にも似ているような気がしました。まさに運動会でした。
 普段の畑作業よりずっとせわしく上がる息。ぽたぽたと粒となって流れてくる汗。牛肥が飛んできたってかまわない。本当に、体中で燃えていました。だけれど、そんなことさえ感じないくらいに、私たちは必死、夢中でした。

 開始から六分。ついに、約七十五メートルの一畝分の植え付けが終わりました。
「終わったー!!」と三人で叫んだときの喜びはとても大きくて、世界中の人に叫びたいくらいに嬉しかったです。
 一枚目、約八・五アールの畑が十分も経たずにすべて終わり、信じられない驚異的なスピードに、みんなと笑ってしまいました。

 

 

■もっと速くするには

 優勝インタビューでは、全チームで作戦の共有を行いました。
 つまり、同じやり方では、次の試合での勝ち目はない。
 もっと速くするにはどうするか、改善できる点はあったのか、さらに三人で話し合いを行いました。

 畝の途中で種イモがなくなってしまい、その分の往復が無駄だったこと。
 牛肥はテミを置いて、手でやっていましたが、量の感覚を掴んできたならテミからそのままやれるのではないかということ。

 勝負にかこつけて、よりよく進化するための手段であることが嬉しかったです。みんなで高めあっていけることが嬉しかったです。みんなで気持ちを同じにすると、力が十倍にも百倍にも広がっていくように感じました。

 

お父さんから表彰を受ける1位チーム。作戦についてのインタビューもありました

 

 こんなに速いジャガイモの植え付けは経験したことがなかったけれど、私たちの空気感を感じたジャガイモたちは勢いよく出てくる気がするし、お互いに早く大きくなるぞと競うようにして成長してくれるような気がしました。速いからこそシステム化された身体の動きを使えて、どのイモにも同じリズム感で、同じ質の作業に繋がったように感じ、芽が出揃ってくれそうな気がしました。

 

 

 休憩がてら、ジャガイモ博士のお父さんが、植え付けから収穫までのジャガイモ知識をたくさん教えてくれました。
 ジャガイモは最も足の短い作物で、最大の魅力は植え付けから二か月でとれるということ。
 種イモは、芽を上向きにするやり方、下向きにするやり方とがあり、上向きだと芽が出やすいというメリットがあり、下向きだと強い株になるというメリットがあるということ。今回は間をとって、横から芽が這い上がっていく形をとりました。

 覆土の厚さを指三本ぶんにしたのはジャガイモは光が嫌いなため、少なすぎては芽が出にくく、多すぎてもまた芽が出にくくなってしまうからだということ。
 芽が出てきたら、芽かきを行い、芽を絞ること。
 ジャガイモは種から上の土に埋まっている茎の部分に芋が付くため、こんもりとした畝を作りたいこと。

 収穫のときに傷芋をなくすためには、富士山型に裾野を広げるのではなく、かまぼこ型に土寄せを行い、まとまって芋をつけさせるよう意識すること。
 みんなでこれからの手入れのコツやポイント、流れを共通認識することができて、みんなでジャガイモのお母さんになれたなと思いました。

 

 

■ワンアクション

 三枚目の山畑下では、これまでの、〝スピード感を持って、最善の植え付けを行ない、慣れること〟からテーマを変えて、〝植え付けを楽しむこと〟に焦点を置きました。
 その時にお父さんが、「ワンアクションを意識すること」を教えてくれました。

 穴を掘るときもクワで何度も何度もやるのではなくて、できれば一回、土が硬いところは二回、などと、できるだけ少ない回数で。
 牛肥やもみ殻を置くときも、ワンアクション。
 無駄のない動きで、美しく、素早く行う作業を意識して取り掛かりました。

 さらにスピードが上がり、メリハリがついたように感じました。自分の身体の動きを美しく心がけることで、作業も美しくなるように感じ、とても気持ち良かったです。これから他のどの作業においてもワンアクションを大事にしたいと思いました。
 なのはなカレーに、肉じゃがに、私の好きなものにはジャガイモがたくさん使われています。
 たくさん穫れますように。