「霜対策へ」 ななほ

4月9日

 今、霜対策から帰ってきて朝の7時です。どうしても、霜対策のことを日記に書きたくて、書いてしまいます。

・桃の霜対策へ

 午前2時。
 外へ出ると、満月から2日分かけたお月様が空で輝いていて、私の想像を超えて、辺りは明るく照らされていました。

 そんな中、出動した私たち、桃の霜対策メンバー。
 今回は14人ほどのメンバーが集まり、あんなちゃんチームとあゆちゃんチームで分かれて霜対策を回りました。

 私はあんなちゃんチームで、開墾26アールから始まり、17アール、新桃畑、池上の桃畑、奥桃畑、古畑の6枚を回らせてもらい、今朝のうちに桃畑を7周しました。

 2時の時点で、あんなちゃんが、
「今、外気温がマイナス3度になっています」
 と教えてくれて、よく見ると、辺りの雑草がキラキラとしていて、霜が降りているのを実感しました。

 それから、大急ぎで資材の入った一斗缶に点火をして回ることができて嬉しかったです。あんなちゃんが配合を考えてくれて、米ぬかや籾殻、かんなくず、油などが調合された霜対策の資材は、かんなくずに火をつけると、パッと火がついて、静かに燃えていきました。

 最初の26アールと17アールは全員で点火をしたのですが、真っ暗だった畑に、灯がともると、桃の陰がハッキリとしてきて、とても綺麗でした。

 畑を移動するとき、開墾26アールを上から見上げると、畑の中に転々とオレンジ色の光がともっていて、私たちにとってこれは『夜の太陽』のようだったし、1つひとつの光の中に、命が宿っているような、桃を守る精霊が宿っているような、温かい気持ちになりました。

 1巡目は点火だったこともあり、古畑を点火し終えた時はまだ、時計の針が2時30分を回る前でした。でもすぐに、開墾26アールへ戻り、今度は火の番をします。

 月明かりはあっても、やっぱり、深夜のうちは辺りが暗かったのですが、ちさとちゃんが渡してくれた光るペンダント(懐中電灯)を首に提げていると、自分たちの周りだけ、明るく照らされているような特別な気持ちになりました。

 2巡目からは竹の棒を使って、資材を攪拌していったのですが、それもみんなでやるとあっという間で、私たちの担当する6枚の畑は、30分ほどで回ることができました。

 やっぱり、人数がいて2チームができると、1巡してもまだ一斗缶の中の火は燃え続けてくれているので安心したり、精神的にも安心感があり、心強く感じました。

 また、4巡目をしたときは全ての缶に油を足していき、長くしっかり資材が燃えるようにと、あんなちゃんが考えてくれました。

 あんなちゃんやあけみちゃんが油を入れてくれると、弱くなっていた火がパッと燃えて、輝いているのが何かの魔法のようだったし、油が資材にしみこんで、資材がちゃんと燃えるよう、攪拌していくのも大切な任務を任されているような気持ちでした。

 あんなちゃんの油を入れるタイミングの読み方とか、これまであんなちゃんを中心にみんなが積み上げてきてくれた霜対策の流れや、資材の配合がすごいなと改めて感じたし、今回も今回で、2チーム体勢の新しいやり方が、なのはな桃マニュアルに蓄積されていくのだと思うと、私もこれからも頑張りたいなと思いました。

 5巡目はまだ、どの畑を回っても、ちょうどいいくらいに火が残っていて、攪拌するだけですぐにパッと火がつきました。

 桃の霜対策では火をたくことで空気を動かすことが大切だと言うことですが、畑の中にいても桃が何か大きな物に守られているような安心感や温かい空気を感じたし、私たちも、寒さを全く感じないくらい、動いていたら身体がポカポカしていました。
 
 6巡目で開墾17アールの一斗缶を攪拌した後、ふと東の空を見上げると、空が明るくなってきていました。

 車の中であけみちゃんやちさとちゃんたちと、何時に朝日が昇るかを予測していて、あけみちゃんが「5時42分」、ちさとちゃんが「5時37分」、私が「5時55分」などと話している時間も楽しかったです。

 段々と空が明るくなっていくと、ものすごい嬉しくて、守られているような気持ちがしたし、それと同時にもうこの朝は終わってしまう、この物語は終わってしまうと言う寂しさも感じたのですが、それでもやっぱり、こうしてみんなと桃畑を回る喜びは一瞬の幸せの中にあるんだなとも感じたし、太陽の存在がありがたいなと思いました。

 最後、7巡目で池上の桃畑に行ったとき、あんなちゃんが「今、スモモの畑がマイナス5.5度です」と教えてくれました。

 以前、あんなちゃんから「気温は夜間よりも朝方の方が冷え込みがきついから気をつけなければいけない」と教えてもらったのですが、やっぱり朝の5時過ぎが一番寒いんだなと思いました。

 空はほんのりと明るくなっているので、油断できないなと心の中で厳しい気持ちを持って、最後の1巡もスピード感を持って回りました。

 段々と空が明るくなると、上の方から青、黄色、ピンクと菱餅のようなグラデーションになっていて、あんなちゃんたちと「空が綺麗だね」といいながら、畑を回りました。

 そして、一番最後は、あゆちゃんチームのいる石生の桃畑で合流です。
 畑に着いたとき、あゆちゃんたちが手を振って迎えてくれたとき、ものすごく嬉しくて、同じ夜に場所は違うけれど、同じ気持ちで桃を守ってくれていたみんながこんなにもたくさんいるのだと思うと心強かったし、やっぱり、なのはなファミリーだなと思いました。

 なのはなに来るまで朝日も夕日もちゃんと見たことがなかったし、外で遊んだり、夜に外に出てみたり、まず、学校の体育の授業以外で動く、外に出るということをあまりしてこなかったけれど、こんなにも自然は美しくて、外の世界は幻想的なのだと、今、強く感じます。

 なのはなでたくさんの遊びを教えて貰っているし、桃の霜対策を通しても桃を守るという力強い気持ちや達成感と共に、仲間と協力して何かを成し遂げる喜びや、仲間を思いやる気持ち、自然の美しさや強さを感じることなど、色々な気持ちや景色を経験させてもらって、こんな経験ができて幸せだなと思いました。

 みんなで見た日の出はとても綺麗でした。太陽が燃えながら、グングン空に昇っていき、こんなにも太陽が昇るのは早いんだなと驚いていたら、あゆちゃんが「太陽が昇っているように見えるけれど、地球が回っているんだよね」と話してくれて、そう思うと、不思議でした。

 普段、地球が回っているなんて地球儀を回したときくらいしか感じていなかったけれど、確かに朝日が登るのも夕日が沈むのも地球が回っているからで、太陽はそのまま、太陽なんだなと思いました。

 でも、地球が回ることで、私たちは毎朝、太陽に出会えて、その太陽が人間も植物も生かしてくれていて、だから桃も究極の所、太陽の光に助けられ、私たちも太陽がなければ生きていけなくて、その自然界の仕組みは、本当に人智を超えた何者かによって仕組まれていることなんだなと感じました。

 無事に、桃を霜から守り切ることができて嬉しかったです。
 私は夜の間、桃の霜対策カメラマンとしても写真を撮っていたのですが、夜の桃畑も、朝の桃畑もとても綺麗でした。

 また、最後にあゆちゃんが朝日とみんなを写真に撮ってくれて、みんなで太陽の方を見て、手をつないでばんざいをした時間が嬉しくて、写真を見なくても、その光景が私の心の中にびしっと焼き付いたのを感じました。