4月9日
-5.5度。
暗闇から青白く、そしてあたたかな光を遠くに感じ始めた5時30分前後ごろの池上桃畑横のスモモ畑での気温です。
「今夜は霜が降ります」昼食の席でお父さんが言いました。午後からは、野菜や桃の霜対策の準備に皆で取り掛かりました。
私は、桃の霜対策の準備と実際の霜対策をあんなちゃん、あゆちゃんはじめ何人かのメンバーとさせてもらいました。
出発は2時。緊張で何度か目が覚めました。外に出ると冷たい空気を感じます。出発の時点での気温は-3度とあんなちゃんが教えてくれました。
玄関下に集合して出発。あゆちゃんチームとあんなちゃんチームに分かれて、霜対策のため畑に設置した燃料資材をいれた一斗缶を点火したり巡回して、火を絶やさないように見守ります。
最初の畑は開墾26aと17a。ここは2チーム合同で行います。
一つひとつの一斗缶に火がつけられると、畑全体があたたかな光で照らされていきます。夜空には満月がすこし欠けたような月が白い光で輝いていました。美しかったです。
私はあんなちゃんチームでした。開墾の2つの畑を終えると、新桃畑、池上桃畑、奥桃畑、古畑という順番でまわっていきます。
古吉野に帰省していたおとちゃんも同じチームで行いました。初めての霜対策だったみたいで、一緒に出来てとても嬉しかったです。
私はドライバーで車の運転でも緊張をしていたのですが、隣にはさくらちゃんがいてくれました。先に皆を車から降ろして、駐車するときも猛ダッシュで、先にバックに備えててくれたり、私の火をかき混ぜるための竹の棒の管理も一緒に気にかけてくれました。とても心強かったし、いつも軽やかに笑顔のさくらちゃんと一緒に出来てとても嬉しかったです。
車から降りると走って一斗缶の火の巡回に向かいます。コースを一周するのにだいたい30分かかりました。
4時ごろになると、あんなちゃんが火の様子などを見て灯油を追加すると教えてくれました。このとき、畑につくと一斗缶の火も小さくなっていることが多くて、ドキドキしました。スピード感が必要です。
その場その場で、適切な判断と空気感、スピード感になるようにあんなちゃんが色々と考え、段取りをしたり、リードしてくれていました。本当にすごいなと思いました。
5時を過ぎると、空が青白く明るくなってきました。青白くなったそらをバックのスクリーンに、桃の樹や枝のシルエットが黒く浮かび上がるように見えるその景色がとても美しかったです。
明るくなると同時に、地面の草に霜が降りているのが良く見えるようになります。小さな氷の粒でコーティングされたような野花や草が静かにキラキラと光ります。
走っていることが多いので、身体は温かいけれど吐く息は白く、手先や足先は霜を下ろす冷たい空気の気配を感じていました。
5時45分過ぎ。最後の一巡を終え、石生の畑に向かいます。あゆちゃんチームの皆と合流です。石生の畑に向かうとあゆちゃんとあゆちゃんチームの皆がいました。空は明るくなり、山の向こうの太陽の存在が近く、もうすぐ太陽の頭が見えそうなときでした。みんなの姿が見えたとき、ものすごく嬉しかったです。
約4時間、場所は違うけれど同じように桃のために走り続けた仲間と、日の出の前に出会えた瞬間でした。
朝日が昇ります。太陽の輪郭が見え始めてから、太陽が顔を見せ昇っていくのは思ったよりも早く、驚きました。
太陽の光が届くとほんのりと温かく、安心しました。太陽の存在って本当に大きくて、ありがたいのだと感じました。
霜対策をしていて、あんなちゃんや一緒に動く皆も美しいと感じました。そして、私達が生かされている、この地球という環境や自然が美しく、大きな存在なのだと強く感じました。
車の中でおとちゃんが、
「霜対策をしているみんなも、システムも本当にすごくて、頑張っている。でも、やっぱり自然って強くて、すごいね」
少し言葉が違うかもしれないけれど、そういっていたのがとても印象的でした。
おとちゃんの言葉を聞いて、私一人の人間の力は本当にちっぽけで、この大きな自然や地球、人や植物、動物、たくさんの力の中で“生かされている”存在なのだと強く感じました。
自分のことや地球のことも、周りのことも、自分がコントロールするなんて、まったく可笑しくなるぐらい的外れのことだったのだと、改めてだけれど気づきました。
その地球や自然、流れのなかで、生かされている存在として、その流れや大きな存在に添わして、協力しながら生きていくべきなのだと感じました。
その中で、私は今どうベストを尽くすべきなのか、どんな役割、使命があるのか、改めて考えさせられました。
霜対策の4時間は、とても美しく、大きな存在を近くに感じる濃密な時間でした。
あんなちゃん、あゆちゃん、皆と一緒にさせてもらえて本当に、本当に嬉しかったです。
いい桃の実に繋がっていてほしいです。