「照明 それが私の使命 ー仲間の存在は調光室にいてもー」 どれみ


◆とうこと私の気持ち

 ウィンターコンサートは大成功だったよ、とお父さんが言ってくださって嬉しかったです。

 『損得勘定の化身、ギブソンととうこ』
 とうこの気持ちは私の気持ちでもあると感じました。

 損得勘定の化身、ギブソンは私の中にもいました。自分の中にいることを感じると、自分自身への全否定になっていました。苦しくなりました。外に出ると損得勘定の空気に苦しくなったり、悲しくなったりしました。

 そんな空気の中で、自分を守るためにその空気に流されてしまったり、こんな弱い自分はもういらない、どうなったっていいやと思っていました。
 まわりで楽しそうに笑っていたり、人との関係がとれている人を見ると自分の欠落を感じて、被害感情や妬みの気持ちが出てきて、自分も得をしたいとギブソンになっていたと感じました。

 とうこがギブソンの子分に、利他心になれないことへの苦しさを話したときにギブソンの子分が言った台詞。
「そうか、それなら、俺たちの仲間になって思いっきり悪人になり通したら、とっても楽になる。善人のふりをして、偽善者になることもない。思い切り堕落して、贅沢して、悪さの限りを尽くしたらいい」
「ダメダメ弱気になっちゃ。ギブソン、ギブしたら損するよを極めるんだったら強気でいこうよ」
 外にいるとそんな言葉が自分の中に出てきていて、そうすることが勝者で、勝者になりたいと思う気持ち、ギブソンが私にもいました。
 でも、どんどん何もやる気がなくなってきたり、頭が痛くなってきたり、気持ち悪くなって働いているところから逃げたくなったり、目の前に誰かいても無視して感情も出すことも疲れると感じて、人の気持ちもどうでも良くなっていました。
 自分の中でずっと会話していて、ひとりでいたくなって、人から逃げるように生活していたと感じます。それは損得勘定のギブソンの仕業だったと感じます。


◆あなたの使命

 私の中にギブソンがいると感じるとき、私には私の使命があると思えませんでした。

 損か得かが自分の判断基準になっていて、何かしたあと考えるのは、いまのは得だったか損だったかということでした。そして得をしたと感じると奢ったようにいい気になり、損をしたと感じると自己否定や被害感情が湧き、何かを取り戻そうと必死になっていました。まわりから劣っている自分はダメな人間だとしか思えませんでした。
 人の評価が気になって、これでよかったと思えることもなくていつも不安で、なにをやっても自分に積み上がるものはなかったです。

 今回、コンサートに向かう過程で『あなたの使命』という脚本の言葉が自分にあって、このコンサートをみんなの一部になってつくるための自分の使命、いま自分ができることを感じながらできたことが嬉しかったです。

 コンサートに向かう過程が楽しかったです。コンサートの練習をしているときの、お父さんお母さんやあゆちゃんの言葉をみんなに共有させてもらい、私も同じ気持ちを作っていきたいと感じたし、照明、台所、喫茶、仕事も義務感や悲観的な気持ちや、どう思われるかと評価の気持ちではなく、役割があることの喜びや有り難さ、楽しさを感じたし、これまでより誰かと言葉を交わし、共有し、関係をとることの恐さが減り、動きやすくなっていたと感じました。
 この時間は、損得ではなく幸せのその日暮らしだったと感じます。

『あなたの使命、そうか、私には私の使命があったんだ! もう迷わない!』

 なのはなにくることができたから、私にも使命があると気付かせてもらいました。とうこと同じ気持ちで、私も私の使命を果たしたいと感じました。


◆照明部

 今回のコンサートに向かう過程で嬉しかったことのひとつに、部活動がありました。
 各係での準備期間を、金曜日と日曜日の夜の時間、部活動として集まり、私は照明部で、かにちゃん、ゆかこちゃん、まりのちゃん、りんねちゃんと部活の時間に話せる時間が嬉しかったです。

 かにちゃんが、今回のコンサートの照明は明るめにして、なのはなのコンサートの舞台をつくりたいんだと部活のはじめに話してくれました。メンバーと仕込み図を見て、どこにどの灯体をつけたらいいかな、とかにちゃんと一緒につくれたことが嬉しかったです。
 照明についての知識も共有し、今回は照明台本の土台となるものを各担当の曲に分かれてつくっていきました。かにちゃんはこうやって台本をつくっていたんだということを共有させてもらい、つくれるところ(ダンスの動きや照明切り替えのタイミングはここがいいのではないかなど)を、ゆかこちゃんと話してつくっていく時間が楽しく感じました。

 かにちゃんが、「ここは何色がいいな、こんな効果がここほしいね」と話してくれたときがありました。かにちゃんにはもうステージが見えてるんだなと感じました。なのはなのステージをこういう風に見せたいと思う気持ちや意志があるのを、かにちゃんから感じ、自分がこれからつくっていくべき姿をかにちゃんから感じさせてもらいました。

 ピンスポットでは、白井さんとあやかちゃんとさせてもらうことになり、ホール入り後、ピンスポ班の3人が揃う日がゲネプロになると、かにちゃんからの突然の報告に撃沈した日もあったけど、だからこそ話せる時間、揃う時間を大切にしたいと思いました。

 ピンスポ班の初日、水曜日はふたりが実際に流れを追いながらスポットを当ててくれて、木曜日はあやかちゃんと私でやり、金曜日は白井さんと私でやり、その日その日でお父さんに教えてもらったことや確認したいことを夜の時間に通しのビデオを見て確認したり、次の日に調光室で確認してできたことが嬉しかったです。

 今回、調光卓には大竹さんとゆかこちゃんがいてくれて、ふたりが全体の照明とピンスポットで入るところ、切るところを、揃えたいですねと言ってくれて、一緒に考えてくれたことが嬉しかったです。ふたりが調光室にいてくれる空気が温かくて嬉しかったです。

 いつも調光卓をしながらピンスポットのことも気遣って下さる大竹さんの言葉があって、通し練習のとき、自分がいっぱいいっぱいになっていると、ゆかこちゃんが自然と後ろにいてくれて、スポットを切る前の台詞を教えてくれて、そのあとすぐにダンスの着替えに下に降りていて、その自然な心遣いとゆかこちゃんの空気に安心できました。

 カットのタイミングや合図の出し方は、何がわかりやすくて合いやすくていいか、と悩んでいたとき、大竹さんと白井さんが話してくれていて、大竹さんが、白井さんは「スパン」という合図で切ったら必ずタイミング良く切ってくれると教えてくれて、大竹さんが「やってみましょう」と言ってくれて、私が「まもなく~スパン」と何回言ってもタイミングよく切れ、今回の合図はこれでいきましょうと決まって嬉しかったです。


◆調光室から見える景色

 本番、調光室にはお父さんの版画Tシャツを着た大竹さんと、ダンスに出る曲が終わると、ゆかこちゃんが調光室に駆けつけてくれました。

 私はインカムで2人と確認している時間も嬉しかったし、お父さんがピンスポ班にくれる言葉も嬉しかったです。

 やっている中で、自分の意志の弱さ、決断力がなく、これがいいと決めてキュー出しできていなくて、2人が困るようなキュー出しになってしまいました。もっとやさしいキュー出しをしたいと感じました。

 大竹さんやゆかこちゃんと入りや切るタイミングを話している中で、調光卓のふたりが何を見て照明の切り替えを考えているのかを教えてもらい、自分にも判断基準ができてやりやすくなりました。自分のことだけで必死になっていたけれど、知っていくと楽しさを感じたし、もっといいものにできると思えて嬉しかったです。

 本番、とうこさんが剣を高くかざしイルミネーションがついたとき、とても安心した気持ちになりました。リカバリーがはじまったとき、インカムからきこえる舞台袖で歌っているみんなのコーラスがすぐそばにようにきこえてきたとき、涙がでてきました。いま、私はこの仲間たちといるんだ、そんな共感の喜びを感じました。

『いよいよ私たち、力を合わせて、愛の世界をつくっていく!』つくっていきたい、つくっていける。強い気持ちが私にもわいてきました。

 終わったあと、調光室から見える2階席のお客さんが両手を上にあげて、拍手してくれていました。ずっと拍手が続いていました。お父さん、お母さん、みんなからもお客さんの拍手や反応を感じたことを教えてもらい嬉しかったです。

 コンサート中は、たくさんの方々に支えてもらっていることを感じ、そのことが有り難く、幸せなことだと感じました。


◆大切にしたいこと

 小腸さんが教えてくれました。
「美味しいものを食べて小腸がいつも喜んでいたなら、視床下部の愛情の中枢にその喜びを伝えてくれます。幸せを先送りしないこと。いつも幸せであること。それが、損得勘定の大王ギブソンに打ち克つたったひとつの方法です」

「小腸が感じた愛しい人と一緒に食べる美味しい食事、その幸せの信号は、小腸の神経細胞から視床下部、そして海馬へと送られ、その信号は、大脳辺縁系という小宇宙をぐるりと弓のようにとりまいている脳弓をめぐっていき、さらにその外周をとりまいている帯状回をまわっていく。その様は、この宇宙の天体の動きと何一つ、変わることはないのです」

 博士が言ってくれました。
「幸せの信号が扁桃体へと伝えられると、『利他心』の心持ちがぶれることもなくなり、本能の暴走を防ぎ、依存症になることもない。そうだよ、みんな。愛の世界は、実現できるんだ」
 小腸が喜ぶ毎日を過ごしたいと思いました。今回の脚本からはっきりと答えをいただきました。私が回復する道、傷ついた世の中を変えることのできる答えを教えてもらいました。

 スカスカの思い出ファイルを、いまなのはなで、愛情の思い出ファイルにしているのだと感じました。その毎日を大切にしたいと感じました。本能の暴走をとめれば、回復に繋がるのだと教えてもらいました。
 『もう迷わない!』とうこさんやみんなと一緒に私も前を向いて進んでいきたいと感じました。
 お父さん、お母さんがいてくださって、たくさんの方々の支えを感じ、たくさんの家族がいることを感じ、そのことがありがたく、私は幸せだと感じました。
 2022年、ウィンターコンサートの大成功が嬉しかったです。