「生きやすくなっていること」 りんね

5月11日

〇播種

 今日は、播種をみんなで行いました。田んぼが今年から6枚増えたため、播種をする量も多いと聞いていましたが、あゆちゃんが播種機のギアを高速に変更したことや、各工程でスタッフさんやお仕事組さん中心に、今までの積み重ねで滞りなく進められていたため、予想していたよりもずっと早く、播種を終えられた、ということでした。

 私は播種機から、グラウンドで並べてくださっている永禮さんへ、播種されたトレイを運ぶ係を、みんなとしました。播種機のスピードが上がるということで、大丈夫かなと思っていたけれど、意外と落ち着いていて、人数にも余裕がありました。
 誰が言うでもなく、気づけば三角ホーやてみなど、草取りグッズが中庭に揃っていて、待っている間、草取りを行いました。中庭、花壇、グラウンドと中庭の間、ネット際……、トレイ運びの合間合間に、黙々と、みんなで協力しながら中庭の周辺を綺麗にしていくことができました。特に指示はなかったけれど、一人ひとりが自分に出来ることを、自分たちの意志でやって、お互いに協力し合える空気が、嬉しかったです。

 空は曇りから晴れてきて暑かったけれど、カンカン照りというほどではありませんでした。ずっとグラウンドの真ん中で作業してくれている人たちも、そこまで大変じゃなかったようで、よかったなと思います。
 山盛りになった草を、猫車で吉畑手前ハウスの隣の広い場所へ捨てに行く途中、すごく綺麗な蝶々が、ひらひらと前を横切りました。羽が黒地に、浅葱色の模様をしていて、アサギマダラかな、と思ったけれど、ちょっと違う種類のような気もしました。今になって、盛男おじいちゃんだったかもしれない、と思いました。

 稲作は、本当に繊細だと思いました。
 前回、焼土をトレイに詰める作業をさせてもらいました。均一な焼土を、さらに真っ平らにして、上からてん圧して、指の後さえ、残さない。そうして水分量を均一に保てるようにすることが、均一な苗を育てることに必須であり、稲作に欠かせない。
 また、播種機で播種された後も、トレイをグラウンドにまっすぐ並べて、空気が入らないように左官屋さんのように土を横に塗って、防除、不織布、ミラシートかけ……そうやって細やかな苗作りをしていくことが、実りある稲作に繋がっていくのだと思いました。
 グラウンドで播種を行うのは、なのはなならではだと思います。そこまでの技術を積み重ねてきたみんなが、本当にすごいと思いました。それをこうして繋げていけることが、ありがたいです。

〇生きやすくなっていくこと
 午後は、桃の摘果に入りました。あんなちゃんたちと、おかやま夢白桃の摘果を急いで、それでも大きくて綺麗な実を確実に残せるようにと進めました。
 夕方になってくると、心地よい風が吹いてきました。摘果をしながら、そのときの自分の心が、すごく軽いことを感じました。

 今年の春過ぎから特に、自分で自分を苦しくさせていた思い込みが抜けていくことを、感じています。
 今日、私が苦しくなってしまっていた原因は、全部「行き過ぎた思い込み」だった、ということにふと気づいて、はっとしました。

 はじめは、小説家になりたかった。自分にしか書けない超大作があると思いこんでいて、ずっと気持ちを物語に逃避させていて、苦しかった。ギタリストになりたい、という思い込みも強くて、今年のミーティングでその思い込みが壊れるまで、ギターに気持ちを逃がし続けていて、苦しかった。
 ウィンターコンサートでも、体力の限界を超えて練習に向かっていた。異常なくらいに練習し続けなければ許せなくて、苦しかった。自分が認められたい、特別な存在にならなければいけないという思いがずっとあって、苦しかった。

 まだまだ抜けきっていないところも大きい中、最近、今まではそう思えなかった心の変化を感じます。
 一つは、ありのままの自分でいい、と思えるようになりました。素晴らしいダンスが踊れなくてもいい、ギターが弾けなくてもいい。行き過ぎず、できる限りで練習に向かって、今できる精一杯の自分を、受け入れられるようになりました。

 お父さんにサツマイモのマルチ張りを見てもらっていたとき、「この畝の左の人、ちゃんとできていないよ」と個人的に注意をされました。今までだったら、とっさに言い訳が自分の中に湧いてきて、新しい子もたくさんいる中で注意されたことに、心の中で激しく動揺していたと思います。でも、そのときは少しショックだったけれど、そのまま「自分はできていないんだな」と受け入れることができました。原因は、向かいのペアの子に私が気持ちを添わせていなくて、一人でやっていたからでした。その後、軌道修正して、ペアで一緒に引っ張り合ったら、確実にマルチを留められるようになりました。
 自分のできていないことを認めて、捻くれずに修正できたことが、今までに無かったことだと思いました。

 また、版画教室でも。彫りの工程で、3枚目の一番細かい板を彫ることに、苦戦していました。展覧会も近づいてきていたので、藤井先生が、「僕が彫ろうか?」と声をかけてくださいました。
 今までだったら、自分の作品は絶対に自分で彫らなければならない、と思って辞退していたと思うけれど、そのとき、ありがたく藤井先生の厚意を受け取らせてもらいました。藤井先生との合作だと思って、とてもありがたくて嬉しいと思いました。
 自分の作品に対する拘りが、今までよりかなり無くなって、気持ちが楽になったと思いました。

 自分に拘るゆえに、自分しか見えなくなって、周りが見えない、ということも苦しかったけれど、今、周りを感じようとする気持ちを、持てるようになってきたように思います。
 これから夏へ向かって、忙しくなる全体の流れの中で、イチジクや担当野菜を責任を持って育てていけるか、作業が入れられるか、すごく不安でした。でも、全体の流れを見て、ここぞという隙間に作業を入れてもらうようにできるはず、と思いました。できる準備は、早め早めにやっていこうと思います。どうしても間に合わない、となってしまったら、そのとき、全体の中でどう折り合いをつけるか、お父さんやスタッフさんと話し合えばいいのだ、と思えました。

 イチジクが全てではない、と思えて、完璧に思い通りに出来なかったとしても、きっといい風にできるんじゃないかな、と思えました。
 何事も、考え方次第でどうとでもなる、と最近思えるようになりました。それで、すごく気持ちが楽になりました。

 行き過ぎた思い込みや、苦しさが抜けてきたのは、前回のミーティングで、過去に対する気持ちにはっきりと整理をつけられたからだと思います。
 まだまだ、拘りを持ってしまっているところはあります。課題はたくさんあるけれど、楽観的な糸口が見えてきたように思います。
 きっと、生きる喜びを心から感じられるようになっていける日が、来ると思えます。それまで諦めずに頑張りたいです。