5月11日のなのはな
「エイエイ、オー」のかけ声と共に、今年も、家族全員での播種がスタートしました。
2024年5月11日、土曜日、午前9時。
今年は、23枚、4町6反の田んぼを作ることになり、約900枚のトレーに、みんなが焼土を詰めて、播種の準備をしてくれていました。
昨晩、あゆちゃんが役割分担を発表してくれて、それぞれのチームで、今日の播種がスムーズに進められるよう、準備を進めていました。
私は、播種機についてくれるあゆちゃんに育苗トレーを渡したり、種籾を運んで準備をする担当を、なるちゃんと一緒にさせてもらうことになりました。
今年は、ミルキークイーン、コシヒカリ、もち米、紫黒米の4品種の播種を行います。
品種毎に、必要なトレーの枚数と種籾の総量を一致させながら進められるよう、事前に、大体の見当をつけておきました。
例えばミルキークイーンだと、全体を9分割した種籾の量を、それぞれ75~80枚のトレーに撒く、といった具合です。
田んぼの数が増え、種籾の量も、例年より余裕がないので、トレーの数が足りないということが起こらないように、数の把握や、播種機についているあゆちゃんに進捗を伝えることも、私たちの大切な役割だと思って、前日から、とても緊張していました。
播種が始まると、ノンストップで作業が進んでいきます。
なるちゃんと一緒に、焼土が入ったトレーをあゆちゃんに渡していくのですが、焼土がよれたりすると、稲の苗がうまく均等に育たないため、慎重に、丁寧に運ぶことを意識しました。
以前、お母さんが、赤ちゃんを抱っこするように、トレーを運んだら良いよ、と教えてくれたことを思い出し、優しく、そーっとトレーを運びました。
播種機の周りでは、あゆちゃんが、播種機の水の量、種籾の量、覆土の量を調整してくれていて、さやねちゃんが、覆土用の焼土の補充をしてくれていました。
1枚1枚、慎重に、丁寧に、集中して作業をしている、あゆちゃんのそばにいさせてもらって、自分もその真剣な空気でずっといられたし、さやねちゃんが、静かに周りを見て動いてくれる優しさに、安心して進めることが出来ました。
作業を進めている最中も、あゆちゃんの頭の中はずっと、トレーの数と種籾の量の計算がされていたのではないかと思います。
同じ姿勢で播種機についている、あゆちゃんの集中力が凄いと思いました。
そして、なるちゃんが、トレーの数を一緒に数えてくれていて、播種の進みを確認できたりしたことも、とても心強かったです。
今年は、トレーの量が多いので、あゆちゃんが播種機のギアを上げてくれて、例年の1.6倍のスピードで、播種が進んでいきます。機械が種籾を撒く音の間隔も、例年よりも速かったです。
播種機から出てきたトレーを、みんながグラウンドに、慎重に運んでくれています。
この日のために、まえちゃんたちと一緒に、比重選をし、芽出しをした種籾が、みんなが焼土を入れて準備してくれたトレーに撒かれて、一人ひとりの手によって、グラウンドに運ばれていく。
役割分担があっても、その全てが繋がって初めて、なのはなの播種が成立するということを改めて感じたし、みんながいるから、この大きなスケールの播種も、スムーズに進めることが出来るんだな、ということを感じました。
自分たちで芽出しをして、自分たちで苗を作って、お米を作る。
盛男おじいちゃんが教えてくれて、1からお米作りが出来ること、そのことが、本当に財産で有り難いことだと感じました。
ほんの少しだけ芽を出した種籾が、焼土のベッドに撒かれていきます。
そのトレーを、慎重に、丁寧に、グラウンドに運ぶみんなの笑顔に、優しい気持ちになれるのでした。
(よしえ)
慎重に、絶対につまずかないように、落とさないように、慎重に、とにかく慎重に、一枚一枚大切に、皆が、育苗トレーをグラウンドへ運んで来てくれます。
播種機につく人、トレーを運ぶ人の元を通って、トレーたちは、グラウンドへ到着します。
そして、運ばれたトレーは、苗床に並べられ、消毒液を噴霧され、不織布とミラシートをかけられ、乾燥からも病気からも厳重に守られるのです。
私は今回まえちゃん、まことちゃん、ひろこちゃんと、播種の最後の工程である、不織布とミラーシートがけの役割をさせてもらうことになったのですが、そのことを知った前日の夜から、播種への楽しみ度が倍増すると同時に、緊張も倍増していました。けれども、「とにかくピンと、一切のシワなく、張る!」これが不織布をかけるポイントだと言うことを、ずばりとまえちゃんが伝えてくれて、とにかく何があっても、ピンと真っすぐ美しく張ろう。そう心に決めて、向かいました。
まず、ある程度の量の育苗トレーが運ばれて防除が終わるまで、体育館で、今回使う不織布とミラシートを、必要なメートル数で何枚かカットしていきました。
防除は、エンジン噴霧器が1回分の10リットルを噴霧し終えるまで、約10分! 10分のタイムリミットの中でいかに手早く、資材のカットを行えるか。スピード勝負で、カットをして、外で広げやすいように巻いて……それができた頃には、ちょうど防除が一段落しているので、トレーの土が乾いてしまう前に、急いでグラウンドへ戻り、いよいよ不織布をかけ始めます。
まえちゃんと私で不織布をどんどん広げていき、ピンと張った所で、まことちゃんとひろこちゃんが向かい合わせて、端と端を股釘で止めて行ってくれました。「とにかくピンと、一切のシワなく張る!」これをものすごく意識して、4人でピンと不織布をトレーの上にかけます。
1回目にして、とっても美しく張れています。ここまで綺麗に張れると凄く気持ちがよくて、嬉しかったです。やり方を理解できたら、ここからは、質は勿論、効率もアップできるように考えていきます。
回数を重ねるごと慣れていき、先読みをした動きでお互いをサポートしながら、質高く、スピード感も持って、不織布をかけていくことができるようになりました。
不織布をかけている時も、育苗トレーは運ばれてきます。再び不織布を伸ばして、かけて……。
播種の開始から丁度1時間ほどで、一列分のトレーが置き終わりました。不織布もかけられたら、最後の工程でもあり、私たちの課題でもある、ミラシートかけです。
既に、一方向に引っ張るだけで奇麗に広がるように、じゃばら折りに畳んで置いていたので、いかに中心を合わせて、真っすぐにかけることができるか。ブロックで裾を留めるときに、いかに、空気が入らないようにピンと押さえることが出来るか。これが、ものすごく重要になってきます。
しかし、不織布よりもうんと扱いが難しく、そしてそれぞれが列の両端にいるので、噴霧機のエンジン音により、声も届きにくい。なので、一人ひとりの意識やジェスチャ―でお互いに意思疎通し、真っすぐと中心を意識して、広げます。
そして、ブロックで押さえるときには、空気が入らないように。地面にぴったりとシートが沿うように、2人組で向かい合わせになって、同じスピードで、声をかけあいながら置いて行きます。
初めは、ブロックを置きなおしたり、張りなおしたりと手直しをしていたのですが、半日、1日、一緒に作業をさせてもらって、流れも掴んできて、4人で意思疎通ができ、一発でとても綺麗にかけることができるようになっていきました。
シートを広げていると、太陽の光の反射で目を開きづらいくらい眩しいけれど、かかった後の光景を見ると、目を見開くくらい、感動的な美しさで、嬉しかったし、一列かけるごとに達成感がありました。
最後までスムーズに、そして後半に行くにつれどんどん進化していったのは、私たちだけではありません。
みんなの手によって運ばれて、育苗トレーは永禮さんやまなかちゃん、ふみちゃんたちが、満面の笑顔で受け取ってくれて、慎重に並べて行ってくれています。
それを追いかけて、次にお母さんたち「左官屋さん」は、育苗の強敵であるカビを防ぐために、トレーの両脇に、コテを使って、がっちりと壁のように土を寄せ固めてくれました。
その手つきは職人さん! この土寄せのやり方も、進化していました。一人で完璧にやるのではなくて、1人目がざっと土を寄せ、2人目が、少し綺麗にし、3人目が最終仕上げ、という方法で進められ、トレーが置かれた直後から、美しく固められていっていました。
続いて、どれみちゃんとまりのちゃんが、1枚1枚を隅々まで、均一に防除してくれました。一切、偏りのないよう、どこまでもきっちりと、噴霧してくれていました。
一人ひとりに役割があり、みんなの力によって、トラブルなく、最後までスムーズに進んでいく播種。ミルキークイーン、コシヒカリ、もち米、紫黒米と進み、気が付けばラストのトレーとなり。予想よりも早い、14時30分に播種が完了しました!!
「ラスト!」という言葉に耳を疑ってしまうほど、後半が特にあっという間だったのですが、それだけ皆の作業がスムーズにできたのだなと思いました。
ここからが田んぼの始まりです!
播種を終えたら、お父さんとみんなとピーマンの畝立ても行いました。左官屋さんのように、私たちも3段階で追いかけるように畝を立てて行きます。耕したて、土とは思えない位ふかふかで、畝を作っていてとても気持ちが良かったです。
広い畑ではありましたが、播種に続いて、みんなのパワーはすさまじいです。ものすごい勢いで、どんどん畝ができていきます。そして、1時間ちょっとで、かまぼこ型の美しい高畝が完成。
これならピーマンも安心して、植えられるし、伸び伸びと成長してくれそうです。
丁度、畝立てを終える……というところに、あゆちゃんたちが来てくれて、その手には、「スイカスムージー」がありました! まことちゃんとかにちゃんたちが、みんなのために、と作ってくれたというスムージー。口に含むと、心も体も求めていた味です。とっても美味しくて、ビタミンが補給されるようなすっぱさも程よくあって、たまりませんでした。
その後も、水菜の草取りや白大豆の種まきを終えたチームも畑に来てくれて、播種だけでなく、本当にたくさんの作業を、皆と協力して終わらせることが出来て、達成感一杯の1日でした。
(ももか)