「欠けてはいけない存在」 みつき

4月15日

●欠けてはいけない存在

 昨日までの天気とはがらりと変わって、太陽は隠れて、風が強く吹いていました。
 夜から雨が降る予報だということで、雨に追いつかれる前に、みんなと作業を進めることができました。

 午後、栗林の元肥入れに行ってきました。
 栗林に行くのは、かなり久しぶりでした。栗の木にも、おとなりで暮らしている牛さんに会うのも久しぶりでした。牛さんは変わらずまったりとしていて、ふたばちゃんが牛を見て「可愛いね!」と喜んでくれていたのも、嬉しかったです。

 春の時期の栗林は、まだ新芽が出始めているだけで、がらんと広く見えました。日当たりが良くて、寝転びたいくらいに気持ちが良かったです。
 栗林は広大で、栗の木も多い印象があったのですが、鶏糞と草木灰を撒くのは1時間もかからずに、終わらせることができました。

 最後にまなかちゃんが「みんな、梨の花を見ていこう!」と声をかけてくれました。栗林の奥には、白い花を豊かに咲かせている、梨の木がありました。
 梨の木は、台風にやられてしまったのか、折れかかって、首をかしげたように伸びていました。けれど、それも気にも留めないのか、堂々と、誇らしげに花を咲かせていました。梨は、こんなに素敵な花を咲かせる果物だったんだなあ、と初めて知ることができて、すごく嬉しかったです。他にも、梅、びわ、柿の木などもあり、果樹の国が広がっている栗林が、魅力的で、わくわくしました。

 その後、大根を貯蔵してきました。
 まりのちゃんとまちちゃんと一緒に、グラウンドの端の土の山のところに、穴を掘りました。50センチほど掘ったところに、大根を真っ直ぐ立てて、並べていきました。
「大根はもともとこうやって育ってきたものね」と言いながら、なるべく真っ直ぐになるように並べていくと、余裕を持って、100本ほど貯蔵することができました。
 満員電車のようにぎゅうぎゅうと並んだ大根は、なんだか可愛らしかったです。その大きな穴に収まった大根を、何事もなかったように土をかけて埋めてしまうのも、なんだか可笑しく感じてしまいました。

「すごくいけないことをしているような気分だね」と3人で言いながら、土をかけていきました。大根はこうやって土に埋まっていて、育ってきたのだと分かっているけれど、ちょっぴりドキドキします。タイムカプセルを埋めたようです。
 どのくらい貯蔵できるのか、状態はどうなのか、またしばらくしたら確認しに行きたいし、大根が長くおいしく頂けることを思うと、楽しみです。

 この3日間が、ものすごくあっという間でした。
 3日前に、みんなが出発していったことが、ものすごく昔のことのように感じてしまうし、会っていない時間が、ものすごく長いように感じてしまいます。
 けれど、それでも寂しくありませんでした。こんなにも濃くて、充実した時間を過ごすことができたのは、みんな1人ひとりのおかげだなあと思います。

 普段からこのように、いつも誰かのことだけを思って、守れていたか?
 そのことを感じさせられました。
 本当は、少人数であろうと大人数であろうと、いつも同じ気持ちで居ないといけないです。みんなの中で、ただ過ごしているだけではいけない、こうやって気持ちを添わせながら、お互いを大切にして生活していかなくてはいけない。誰かにとっても自分にとっても大きな幸せはそこにあって、そうでないと生きている意味がないのだと、感じました。

 東京組のみんなに良い報告がし合えるように、新しい子たちが気持ちよく過ごせるように、誰かが笑顔になってくれるように、そうやって、自分以外の誰か、みんなのことで頭をいっぱいにして、心も身体もみんなのものになったとき、こんなにも楽しくて嬉しくて幸せなのだなあ、と感じました。

 夜、布団に入って、「明日も、東京組のみんなは居ない」、と翌日のことを考えたとき、「よし、やるぞ」とやる気が湧いていました。そして「明日も誰かを守れますように、優しくあれますように」と願えることだけで、自分が少しでも強くなれたようでした。

「ただこうして一緒に過ごせること、隣に居てくれることが嬉しい」
 その言葉が、あちこちで聞かれました。その言葉は、正直な本当の気持ちでした。自分もそう思われている1人なのだなあとも思えて、本当に受け入れてもらえる場所がある、守って守られる場所があることの心強さを、身に沁みて感じました。

 お母さんが話してくださる「全体の一部としてあること」「誰か1人でも、欠けてはいけないんだよ」その言葉がもう一度思い起こされて、本当の意味が、すうっと心に入ってくるようでした。病気でも能力でもなく、わたしの心だけを見てくれて、共感し合える、だから仲間でいられるのだということ。
 わたしは、もうなのはなに来たその日から、なのはなの子になっていた。だから、欠けてはいけない、大切な、なのはなの子の1人なのだということ。だから、その責任を果たさなくてはいけないし、自分の役割を全うしなくてはいけないです。

 この3日間で、なのはなの子で居られることが、本当に自分にとっての生きる道なのだと教えてもらったこと、なのはなのみんなが大好きな気持ちが増したこと。
 綺麗な梨の花のこと、楽しかったたこ焼きパーティーのこと、活気あふれる田んぼの肥料入れのこと……。たくさんの嬉しい気持ちを、早くお父さんお母さん、東京組のみんなに伝えたいです。