【4月号⑦】「桃の摘蕾2巡、完了 ―― 気分転換のときは、桃畑で思い切り遊ぶ! ――」 あんな 

 

 桃の摘蕾をしました。桃の花が咲き始める3月末頃までに2巡したいと考えていて、2月13日からはじめて、3月27日で、目標どおり開花前に2巡を終えることができました。
 この2月、3月は、気温が低い日や、雪や雨の日が多く、作業に出られない日も多かったのですが、作業ができる日には、8人〜多いときには24人くらいの大人数で入り、みんなで着々と進められたのがよかったです。日によってメンバーは入れ替わりがありますが、この期間、たくさんの人が摘蕾を気にかけている感じがあって、またそれぞれが作業を楽しみながら進めてこれた感じがして、そのことも嬉しかったです。
 桃の摘蕾の目的としては、樹に蓄えてある貯蔵養分の浪費を減らすことと、段階的に間引いていくことで作業労力を分散させることです。

 

■花が咲くまでに

  桃は、5月の半ば頃に光合成で養分を作るようになるまで、前年の収穫後から落葉するまでに蓄えた貯蔵養分を使って生育していきます。
 特に花が咲くときに、樹に蓄えているエネルギーを大量に使うので、そこで使ってしまうと、幼果や展葉の初期生育が悪くなります。そこで、花が咲くまでにある程度の数に絞っておくことで、桃の生育の良いスタートがきれるのです。
ちなみに摘蕾する前は、最終的に実をならせる数の20倍以上の蕾がついている状態です。これをすべて実にしたら、とても小さい実しかできないので、5月下旬の硬核期までに、段階的に間引いていきます。
 初日は、暖かくて風のない、摘蕾日和というような日に、開墾26アールからスタートしました。
 まず、私からメンバーのみんなに、摘蕾の方法を説明させてもらいました。

 

■花芽と葉芽

 1巡目は、枝の上側や枝先の花芽だけを、スピード重視で落としていきます。枝先や枝の上側には確実に実をつけないので、落としてしまっていいのです。
 このときの注意したいのは、花芽と葉芽の違いです。見分け方は、花芽はぷっくりしていますが、葉芽は細長くて少し硬くて取れにくいです。花芽は実になりますが、葉芽は今後、葉や枝になり、光合成をしてくれる大事な芽なので、すべて残します。
 初めて摘蕾をする人もいれば、経験者もいて、枝の高いところや低いところを分担したり、やり方を伝えあいながら、1本の樹に何人かずつ取りついて、進めていきました。
 初日のこの日は、動画の撮影や、お客様もみえて、少し緊張もしたのですが、穏やかに良いスタートがきれたように感じました。
 その後も順調に摘蕾を進めていき、全9か所の桃畑を巡りました。

 

 

 花芽のつき方や大きさ、生育度合、充実度が、品種によって、また樹齢や畑によって違うことを感じながら、桃畑の穏やかな空気の中で、みんなで作業を進める時間は、いつもあっという間に感じました。
 摘蕾と同時進行で、剪定のときに見落とした枯れ枝を落としたり、カイガラムシが出ている畑ではワイヤーブラシを1人1本ずつ持ち、カイガラムシを落とすという作業もしていきました。私は時々、剪定が甘かった枝を切り足したりもできました。
 みんなの手で、細やかに見ていくことができてよかったです。
 3月4日から2巡目に入りました。2月中に1巡目を終える目標にしていたので、良いペースで進められていると感じました。
摘蕾を2巡に分けたのは、手つかずのまま蕾が生育してしまう樹を作らないようにするためです。

 

■攻めの気持ちで

 2巡目は、1巡目よりも、少し慎重に、実がなることをイメージして、残す位置を考えながら、さらに蕾の数を絞っていきます。
例えば、30センチメートル以上の長果枝は先端のほうに実をつけると枝が垂れたり揺れたりして実が傷みやすいため、先端10センチメートルほどは落としてしまいます。結果枝の基のほうも、場所によって、別の枝に当たったり、実が大きくなったときに挟まったりする位置は落としてしまいます。

 前年は、晩霜や病害虫のリスクを恐れるあまり、摘蕾を甘くしすぎてしまって摘果以降の生育に響いたという反省があって、今年は厳しめに落とすという計画で臨みました。

 具体的にいうと、ざっくり言って、10センチメートルほどに1つ残すくらいまで絞ってしまうことにしました。実は、私がこれまでやってきた中で、ここまで絞ったことは無いのですが、枝数も本数も多いため、あえて攻め気味にいくことにしました。
 30センチメートル以上の枝に残す蕾は5〜6つ、20センチメートル前後の中果枝には3つ程度、5〜10センチメートル程度の枝には1〜2つ、というふうに、メンバーのみんなで基準を統一し、時々、確認しました。

 

 

 蕾は1巡目よりも丸く膨らみ、見えやすく、また落としやすくなりました。
 2巡目も、カイガラムシを取る作業を引き続き行いましたが、1巡目で取り切れなかったところを、みんなで寄ってたかってワイヤーブラシで擦り落とし、かなり綺麗にすることができて、とても嬉しかったです。
 摘蕾をしていると、少し集中しづらくなるときもあります。ちょっと疲れたなと思うときに、気分転換に、いろいろな遊びをしました。

 

■気分転換の遊び

 とても寒い日には、おしくらまんじゅうをしました。ルールがよくわからなかったので、ひたすらぎゅうぎゅう押し合いながら、「おしくらまんじゅう押されて泣くな」と5回やって終わったのですが、たったそれだけだけど、長く感じたし、びっくりするほど身体が熱くなって、暖かい気持ちが残りました。

 そのときは20人近い人数で巨大なおしくらまんじゅうを作ったのですが、まんじゅうの内側で揉みくちゃにされていた人もいれば、端のほうで弾かれながら参加している人もいて、それぞれに楽しめていたようでした。

 

 

 開墾26aでは、広い面積を利用して、ケイドロという鬼ごっこをしました。
 私は小学生の頃にやって楽しかった思い出があり、いつかみんなとやってみたいと思っていて、言ってみたら、みんな大賛成してくれました。ルールとしては、警察と泥棒で2:8くらいに分かれて、警察が泥棒をタッチして捕まえたら、泥棒は牢屋に入り、仲間がタッチして助けてくれたら逃げることができて、人数の多い少ないで勝敗を争います。
 軽トラを牢屋ということにしました。

 じゃんけんで鬼を決めると、足の速いりなちゃんほか数名が鬼となり、なかなか白熱しました。開墾26アールのアップダウンのある土地を、縦横無尽に悲鳴を上げながら走り回るのが、童心にかえったようで、爽快であり、楽しかったです。
 私は泥棒で、わりとすぐに捕まってしまったのですが、4人くらいで手を繋いで待っていたら、りんねちゃんが決死の覚悟で滑り込んできてタッチして逃げさせてくれて、それがとても嬉しかったし、りんねちゃんの勇気ある笑顔がとても綺麗でした。

 ケイドロをしていたのはほんの5分間くらいだけど、息が上がってへとへとになりました。
 みんな楽しんでいる様子で、あとから「頭の中がリフレッシュしてそのあとの摘蕾がすごくやりやすかった」「すごく楽しかった」といった感想を聞いたりして、ケイドロは好評だったので、26アール滞在中に、また別の日もやりました。

 走り回れないような畑の滞在中には、山手線ゲームをよくやりました。お題はそのときの思いつきで、作家の名前、花、動物、都道府県など。
 ただするだけでは物足りないので、罰ゲームに尻相撲対決とか、ウインターコンサートでまちちゃんが演じた悪徳商売人の横瀬さんや、りゅうさんの物真似とか、その日その時で、盛り上がりました。ちなみに私は横瀬さんの物真似をすることになってしまったのですが、みんな拍手して喜んでくれました。

 

 

 そんなふうに遊んで、みんなで楽しく笑って、摘蕾に戻ると、しばらく嬉しい、心弾むような気持ちが残りました。

 冒頭にも触れましたが、今年は3月の気温が低かったせいか、開花はそこまで早いような感じはなくて、4月に入ってから本格的に咲き出しそうです。
 花が開きはじめたら、人工授粉や、そのための花粉集め、晩霜対策が始まるので、遅れないように準備をしておきたいです。
 蕾の先にピンクが見えたり、葉芽が動き出すと、地面では草が伸びはじめていたり、空がくっきり綺麗な青だったりして、いよいよ春だと感じます。春めくと同時に、生命力を強く感じて、私自身の気持ちも後押しされるようで、高揚して、気合が入ります。
 みんなと引き続き、よい作業にしていきたいです。