4月7日のなのはな
今、桃の花が満開です。開墾桃畑の方面に行くと、見渡す限り広がる桃畑が、桃の花でピンク色に染まっていました。枝に、ぼんぼりのように、濃いピンク色の花が付いている様子が、本当に遠くから見ても可愛くて、華やかで、あっと息を飲むぐらい、奇麗だなあと思います。
前日も満開だ、と思っていたのに、この日は前日にも増して、花が咲き揃っているように見えました。地面に花びらは散っていなくて、今が桃の開花のピークなのかなと思います。誰も何も言っていないのに、全ての桃の木が、まるで言い合わせたように、一斉に咲き誇っているのが、見事だなあと思うし、この日はとても天気が良く、夏日で、お花見には絶好の日だと思いました。
この日は、桃の人工授粉の作業をしました。なのはなファミリーの桃畑には、全16品種の桃の樹があるのですが、そのほとんどが自家受粉です。でも、その中で、おかやま夢白桃、浅間白桃、川中島白桃だけ、自家受粉が出来なくて、人工授粉が必要です。
人工授粉は、桃の作業の中でも、一番、作業風景が優雅な手入れと言えます。桃の花に囲まれながらの作業でもあるので、周りの景色に癒やされます。4分咲き、8分咲きの時に2回、人工授粉を行うようなのですが、この日にまわった木は、8分咲きぐらいに、たくさん花が咲いていました。
これまで、早く開花する『はなよめ』の木から花を取って、花粉集めをしてきました。この花粉を、石松子という増量剤と混ぜて、ぼんてんを使って、一つひとつの花の雌しべに、花粉を付けていきます。
石松子も、植物の花粉のようなのですが、見やすいようにピンク色に着色されていて、とても可愛いです。ピンクの粉を、花にハンコを押すようにポンポンつけていくのが、とても楽しいし、魔法を使っているような気分になります。
自家受粉できる品種は、一つの花の中に、赤色の葯があって、その中に花粉が入っています。でも、人工授粉した品種の花を見ると、葯が透明で、花粉が入っていないことが分かりました。隣で違う品種の桃の木も育てているので天気が良ければ、花粉が風に運ばれて、自然に受粉することも出来るようなのですが、やっぱり確実には着果しにくいので、人工授粉が必須になります。
花粉はあまりにも細かく、肉眼では見えないので、人工授粉の作業は、見えないものを心の目で見る必要があります。どこまでできて、どこまで出来ていないのかも分かりにくく、辿るルートを決めて、あみだくじのように順番に進めていきます。とても集中しました。
¥ぼんてんを付けると、雌しべの粘着力を感じました。こうやって、受粉しやすいように花自身が機能を持っているんだなあと思いました。
池上桃畑、開墾26a畑、石生桃畑を回りました。タイムリミットまでに、目標の畑は、全箇所を回り切ることができて、達成感を感じました。実際に、結実したかどうかは、実が大きくなってからしか分からないけれど、人工授粉が上手くいって、十分に結実したらいいなあと思います。
(りな)
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今夜は『お花見セブンブリッジ』!
桃、菜の花、桜、モクレンにシデコブシ、レンギョウにユキヤナギ……。日々、春の花が古吉野なのはなの周りで鮮やかに咲いている様子を見ながら、「いつ、みんなとお花見ができるかな」と楽しみな気持ちを膨らませていました。
最高気温は24度と、暖かく花盛りの、お花見に絶好な日曜日。毎月7日に恒例のセブンブリッジと掛け合わせて、桃、菜の花が満開に咲いている古畑に茣蓙を敷いて、家族みんなでお花見セブンブリッジをすることができました。
いつもより少し早めに作業を終えて、まだ西日が差して空が明るいころ、古畑にみんなが集まってきました。今回のリーグのテーマは、昆虫。カブトムシ、テントウムシ、チョウチョ、カマキリなどのリーグごとの茣蓙に座りました。
見上げると、中心が濃いピンク色をした、上品で華やかな桃の花。真横を見ると、明るい黄色をして寄り添って咲く菜の花。どちらも満開の花盛りでした。
その場にいるだけで、心が穏やかになっていくような、優しい空気に包まれていました。
ゲーム中、お父さんが司会をしてくれて、その中で昆虫に関する豆知識も教えてもらいました。世界で一番大きな蝶は、アレクサンドラトリバネアゲハ、……というパプアニューギニアの蝶で、羽を広げると30センチにもなるそうです。
30センチ。すごい存在感がありそうです。どんな色形をしているのか、気になりました。
反対に世界で一番小さな蝶は、コビトシジミという北アメリカの蝶で、1.2センチほどということでした。
シジミチョウは日本でもよく飛んでいて、私もちょうど姿を見たばかりでした。小さくてとてもかわいらしいです。でも1.2センチは本当に極小サイズだと思いました。そんな蝶と、蛾を合わせると、十数万種、という種類が存在するそうです。
世界には、今までに見たことがないような、不思議な昆虫が数多くいるんだなと感じました。これからの、山小屋キャンプ、そしてウィンターコンサートのテーマになるかもしれない、“昆虫”。前回のテーマだった“恐竜”以上に、今も長い命の連鎖を繋げている昆虫は、広がりがあって奥深くて、知れば知るほど引き込まれることを感じました。セブンブリッジをしながら、昆虫に思いをはせることができて、嬉しかったです。
セブンブリッジでは、私は『テントウムシリーグ』でした。勝っても、数十点台の勝ち、多くて百点台、と、とても穏やかなゲームが続いていました。
そんな中でも、私は鳴けるタイミングを待っているうちに上がられてしまうことが多く、数十点ずつ、負けが込んでしまっていました。前半戦、ずっと負けっぱなしで、リーグ内で私以外全員プラス、私が約180点のマイナスを一人で背負っている、という状況になってしまいました。
けれど、不思議と気持ちは穏やかです。いつもセブンブリッジをするときは、心に欲が出てきて気持ちがざわめいてしまうのですが、桃畑にいると、大きく包み込まれているような安心感があって、負け続けていても落ち着いていることができました。
こんなに平らかな気持ちでいられるセブンブリッジは、初めてだったかもしれません。
そんな中、隣リーグのみつきちゃんから、「桃の木と会話したら、勝てました!」との嬉しそうな声が。桃の木と繋がって、お祈りをすると勝てる、という噂がささやかれていました。
私は、運気が向いているピンクチームのりなちゃん、あやちゃんと、風水ルールで座る位置を交換してもらいました。そして、桃の木を見上げて、少し「勝てますように」と願いました。
すると次のゲーム、今まで9試合連続で負け続けていたところ、初めて上がることができました。それも、300点以上の得点。今までの負けを挽回しました。
本当に、目には見えない桃の木の力が、流れを作ってくれたようだと感じました。
ゲームをしていると、1枚2枚、はらりはらりと桃の花弁が落ちてきました。透き通る薄く繊細な花弁。根元が濃いピンク色をしていて、よく見ると内から外へ葉脈のような模様が見られました。自然から生まれるものほど、美しい物ってないのだろうと感じました。
さて、穏やかなテントウムシリーグと対照的に、他のリーグでは荒れ模様だったようです。どこかのリーグから、オレンジチームが4000点以上の失点をした、ということを耳にしました。
テントウムシリーグでは、オレンジチームのまりのちゃんが、500点以上の得点で断トツの1位なのに……。オレンジチーム、このまま最下位になってしまうのでしょうか。
いつの間にか日が暮れて、肌寒くなってきたころ。ゆいちゃんがライトアップをしてくれて、桃の花が下からの明かりで照らされました。
最後のゲームを終えて、みんなで『桃の唄』を歌いました。なのはなのお父さんが作詞し、さとみちゃんが作曲してくれた『桃の唄』。
満開の桃の木の下で、みんなで歌っていると、しみじみとした幸せを胸に感じました。
気になるセブンブリッジの結果発表は、夕食後の集合の場で。1位は、赤、2位は白……と続き、最下位を争ったのは、オレンジとピンクでした。
結果は、オレンジが5位で、ピンクが最下位。あれだけ大きな失点があったにもかかわらず、オレンジチームのメンバーがそれぞれに健闘していて、最下位を免れたということでした。同じテントウムシリーグだった、まりのちゃんが思い浮かんで、良かった……、と思いました。
最下位のピンクチームが行った罰ゲームは、ジェスチャー伝言ゲーム。お題は、「木の蜜を吸いに来たカブトムシとクワガタが争って、カブトムシにクワガタが跳ね飛ばされ、カブトムシが木の蜜を吸っているところ、昆虫採集に来た少年に、カブトムシが捕まえられる」というロングだけれど、現実的なものでした。
一番手は、なのはな屈指の、みんなを楽しませる表現力のある、まちちゃん。カブトムシ、クワガタが木の蜜を見つけたとき、争って、勝利したとき……。気持ちがありありと伝わってくるような、色の濃いまちちゃんの表情に、思わず笑いが込み上げてきました。
順々にピンクチームのメンバーがジェスチャーで伝言をしていって、最後、お母さんにジェスチャーを当ててもらうときには、最初とは、かなり違うものになっていました。
お母さんの答えは、「盆踊りをしていたらホタルを捕まえた」になっていて、だんだんと変わっていってしまう様子も、見ていて面白かったです。
1年に1度きり。『お花見セブンブリッジ』の特別な時間をみんなと過ごせて、嬉しかったです。解散してからも、心が満たされた感覚がしています。
桃畑で感じた、包み込まれるような温かい力を、大切に心に入れて、明日からも頑張りたいと思いました。
(りんね)