【4月号②】「自分のこれからを全部、誰かのために」 まなか

 ロング・ミーティングが一区切りを迎えて、終了しました。
 約1か月、みんなで自分の過去や今の問題に真正面から向き合うことで、心の傷に解決を与えてきました。
 今回は9つのチームに分かれて向かいました。1つの課題に向かうごとに、自分で考え、それをチームのみんなと共有し話しながら、作文にまとめて答えを深めていきます。

 その中でも、自分がどんなふうにして生きにくさを抱えて摂食障害になってしまったのか、今の風潮や社会の仕組みと照らし合わせながら向かう中で、「本当の幸せ」とはどういうことなのかを何度も意識することになりました。

 

 

 私たちは、幼い時から競争社会の中で生きてきました。学校でも習い事でもどこへ行ってもそういう考え方で、世の中のため、人のためを本気で思っている人に出会ったことが無くて、そういう気持ちを知らずに育ってしまったと思います。

 私はなのはなに来る前、そういうことを見聞きしたら「綺麗事だ」と、本気でそう思ってしまっていました。
 損得勘定が自分の価値観で、人のためだけに自分の時間を割くことを、「人付き合いは、生きていくために仕方無くするもの」と、そう信じていました。
 そのくらいに自分の見てきた世の中は冷めていて、考え方が利己心に傾いていて、人を信じにくい世界だったと思います。

 最後のまとめの講義で、お父さんが、貧しい時代から世の中が豊かになった今、「人は何をもって幸せになれるのか」ということが時代のテーマになっていることを話して下さいました。

 

 

 誰もが自分の事でいっぱいいっぱいで、どうしたら楽に稼いで生きていけるのか、どうしたら人並みの幸せが手に入るのか、どうしたら何かしてもらう側に立てるのか……たしかにそんなふうに模索しながら生きている人が多かった気がします。
 私たちはそんな中で大きな生きづらさを感じて傷つき、耐えきれなくて摂食障害になりました。

「私たちは、もっと人間らしい温かさの中で育ちたかった。もう私たちのように傷つく人が居てほしくない……」
 そう思ったときに、自分たちの使命が見えてきた気がします。

 傷ついた意味が必ずある。ミーティングをしていて、そう確信しました。そうでなければ大きくて深すぎる傷。とても普通には生きていけないくらいの傷です。

 

■勇気を持って、未来を

 私はこのミーティングで、新しく持つことができた気持ちがあります。それは、自分の未来を勇気を持って歩こうと思える気持ちです。
 今まで「まだ見ぬ誰か」のために何か繋げることが私のできること、と頭では分かっていたのですが、それがどうしても自分の未来の姿と重なりませんでした。
 それは、まだ自分の中に解決できていない問題や、見ないようにしてきた気持ちがあったからでした。

 前に、それについてお母さんに相談させてもらったときに、「焦って決めることではないよ、大丈夫だよ」と言ってもらっていました。
 その時に保留にしていた気持ちが、1つのミーティングの講義を聞いたときに、ふっと目の前が明るくなるように自分の未来と繋がりました。
 自分が一番辛くて悲しかった時間を、捨てられた瞬間でした。

 捨てるということは、自分の人生から無くすことではなくて、
「自分の体験してきた時間を人のために全部使おう。自分のこれからを全部、誰かのために使おう」
 と思える気持ちだったのだと分かりました。

 

〈ミーティング期間中、客観性を持った考えや意見を持つ為に、チームに分かれて、ディベート大会を行いました〉

 

■生まれて初めて

 自分を守ろうとする時には持てない覚悟。
 少しでも自分を可愛く思う時には持てない勇気です。
 少しでも楽をしようと思う時には持てない希望です。
 これを、お父さんやお母さんが私たちに全力で向けてくれていたんだと思った時に、私はやっと未来を見ることが出来ました。
 私は自分の経験を全部使って、仲間を増やしながら、これから出会う、まだ見ぬ人、そして子どもたちのために生きていくのだと思いました。それは、あらかじめ用意されていた道のように感じました。
 そう思うと気持ちが本当に本当に軽くなりました。仲間のことを思うと怖いものがないような気持ちになりました。生まれて初めて目標が出来たことが、本当に幸せだと思いました。

 お父さんが、
「摂食障害になった人は普通には生きられない。傷ついた人だからこそできる最高の生き方をするか、どこまでも苦しいままになってしまうか、2つに1つだよ」
 と教えて下さいました。

 本当にその通りです。私たちは、一歩でも気持ちを間違ったら、たちまち症状の渦に飲み込まれてしまいます。今の世界で普通に生きる事は私たちにとって、とてもとても、本当に虚しい。小さな頃から何回虚しくて、今すぐ死んでもいいと思ったか……数えきれません。

 

■生きやすい世の中に

 だからこそ人のために最高の生き方をし続けなければ生きていけません。
 私はまだ見ぬ誰かのために、少しでも生きやすい世の中にしていく1人でありたいと思います。
 そう思ったときにだけ、私はやっと自分で自分の人生を生きていけるのです。そのことは、私たちにとって一番の誇りです。
 このミーティングを通して、本当に気持ちが大きく変わりました。この気持ちを持ちながら、みんなとの生活で、心を磨いていきます。
 そして、たくさんの仲間と出会い、協力し、喜び合い、幸せを共に味わいながら1人の人として生きていくのだと思いました。